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『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』村上春樹著ー夢読みで僕はこころを取り戻す

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は、村上春樹の4作目の書き下ろし長編小説で、谷崎潤一郎賞を受賞しています。

丸谷才一は選評で「優雅な抒情的世界を長編小説という形でほぼ破綻なく構築している」と言っているように現実離れをした世界を書いて、人間の細やかな感情を違和感を抱くことなく読ませる文章は類を見ないと思います。

私は1985年発行・1986年8月20日17刷の分厚い本を読みました。後に上下に分かれたようですが、あまりにも分厚い本を前にして戸惑いましたが、かなり村上作品を読んだ後だったためにスムーズに読み進むことが出来ました。

多くの方が、村上作品の中でも特に優れており、傑作と言う人が多い中、私は『ねじまき鳥クロニクル』あたりから、最新作品を読み、初期作品から4作目と読み進めてきたので、若さと力強さを感じさせる作品で村上春樹の凄さを再認識しました。

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『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』のあらすじと感想

『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』は、「ハードボイルド・ワンダーランド」と「世界の終わり」は交互に進行しながら読み進むような形に書かれています。「ハードボイルド・ワンダーランド」は主語が私であり、「世界の終わり」は僕になっています。

村上作品は読者に読み方を委ねる形で書かれることが多いのだが、この二人は同一人物だと思いながら私は読み進めましたが、途中から私と僕が交錯していくことになります。

『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』のあらすじ

ハードボイルド・ワンダーランドの私は、35歳で離婚していて、「計算士」として「組織」に所属しながら一人暮らしをしている料理のとても上手な男性です。

そんな私が対立する「記号士」の組織や東京の地下に巣くっている「やみくろ」という生き物に妨害を受けながら、音抜きなどの研究をしている老博士を訪ねるところから物語が始まります。

計算士としての仕事を依頼されますが「シャフリング」を3日後の午後までに持ってこないと世界が終わるかもしれないと言われます。脳の手術によりシャフリングの技術を覚えた僕は「世界の終わり」というパスワードを持っていました。

老博士は「組織の中で私の脳を手術で「計算士」という能力を埋め込んだ人間で、あらゆることを研究していると言います。帰りのお土産に老博士からもらった箱の中には一角獣と思われる頭骨が入っており、それを調べるために図書館に行ったのがきっかけで美しい女性の司書と友達になります。

想像以上に食欲のある彼女は物知りで、一角獣のことも調べてくれます。

その博士の下に組織を通さず訪ねたために、家に帰ると大男と小さな男がやってきて家の中のものをすべて壊されてしまいます。

ピンクのスーツを着ていた老博士の孫娘から電話を受け、博士の研究室も襲われてしまったと言うことで、博士を助けるために彼女と地下に潜ります。研究室を壊された老博士を助けるために、「ヒル」に血を吸われ「やみくろ」と戦いながら彼が隠れている岩陰にいくのですが、私は研究室が壊されたために老博士が仕組んだ脳を元に戻すことが出来ず、29時間35分後には不死の世界にいくことになっていると言われます。

最後となる日に洋服を買い、図書館の彼女とイタリア料理店に行き、胃拡張の彼女と同じくらいの量の料理を食べて、彼女の家で一夜を過ごし、最後の日を迎えます。

それから行く場所が、並行して読んできた、世界の終わり街で心のない世界だったのです。

自分お家に電話をかけると、17歳の孫娘が出て、老博士は身の危険で研究が出来なくなったために、フィンランドに行ってしまったと言い、彼女は私の部屋で暮らすことにしたといいます。

同時進行する「世界の終わり」は僕として語られ、一角獣のいる街に入り、影を引き剥がされて、図書館で司書が教えて食えたように一角獣の頭骨から夢読みをすることになります。

この町の人は心もなく、死もなく諍いもなく生きているようです。ただ、一角獣だけが、夕方に門から放されて外で眠り、朝になると高い壁が巡らされた門から入れられるのでした。

冬は雪が多く積もり寒さが厳しかったために、一角獣は毎日のように死んでいきました。しかし春になるとたくさん生まれてくるので、減ることはありません。その一角獣が心を失った人間の心を見てきていることから、一角獣の頭骨から人間の夢を読むことが出来ると言うことで、僕は夢読みになります。

影から引き剥がされた私は、だんだん心が薄くなってきます。冬になる前に街の地図をつくってほしいと影に頼まれて作りますが、寒さの中で熱を出してしまい地図は間に合わないまま冬になってしまいました。

影は徐々に弱っていきもう持たないだろうと聞いて、会いに行きますが、影は脱出の計画を立てていました。門番が、死んだ一角獣の死体を焼いている隙に僕と影は影が考えていた南のたまりから脱出しようとします。

影はかなり弱っていて、負ぶって雪の中をやっとたどり着いたとき、僕は影だけを逃がしました。

僕はこの町を作ったのが僕自身であることを、夢読みで見つけてしまったのです。影はそのことを知っていましたが、それを言うと逃げないだろうと思い僕には告げなかったと言います。

そして、図書館の彼女の心も読むことが出来たことから、心をよみがえらせた私は、平穏な生活を終わりにして、森の中で辛い暮らしを、受け入れなければならなくなるようです。

しかし、それが辛いことでも、自分が作った街から逃げることは出来なかったのです。僕は雪の中を図書館で待つ彼女と手風琴の元へと急ぐのでした。

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『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』感想

「ハードボイルド・ワンダーランド」は、「計算士」としての私の生活を描き、「世界の終わり」は死後の心をなくした僕の生活を描いていきます。

村上春樹の作品のでは、違った物語を平行しながら描いて、途中からそのつながりがわかるような作品があり、数冊読んでいますが、今までとは違った雰囲気の書き方で、最初は戸惑うこともありましたが、かなりの長編にもかかわらず、一気に読み進むことが出来ました。

だからといって、この小説をどのように理解すべきかはかなり戸惑うことも多く、読み終わってだただ呆然としていたというのが本音です。

「計算士」という秘密を扱う職業のため、暴力にあったり、都会の地下を泳いで逃げたりという冒険はこの作者が良く書くテーマであるが、読み慣れると何かの記号のようにも感じられます。

それ以外は、手早くおいしい料理を作る私は、音楽を聴きながら、アルコールを愛し一人暮らしを堪能しています。

そんな生活の中で、老博士の17歳のふとったピンクのスーツを着た孫娘、図書室の司書の女性(世界の終わりにもハードボイルド・ワンダーランドにも出てくる)が、小説に柔らかな優しさを添えています。

死の世界(世界の終わり)で夢読みをして彼女と僕の心を少しずつ取り戻した時、現実の世界がどんなにつまらないものでも、音楽に癒やされ、小鳥の鳴き声などに癒やされ、苦しみや喜びを持つ現実の世界への郷愁を感じとることが出来、それはかけがえのない世界であることを教えてくれているのではないかと感じました。


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