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『生きがいについて』神谷美恵子著|生きがいを失いかけている時に読む本

『生きがいについて』を読もうと思ったのは、『認知症になった私が伝えたいこと』を読んだことがきっかけでした。

51歳の時に若年性認知症と診断された佐藤雅彦さんが、絶望の中で『生きがいについて』を読み、何もできなくとも生きているだけでいいのだと書いたいたことから読んでみたいと思いました。

生きがいについてとか、生き方のような本は若いころにたくさん読んで食傷気味になっていましたが、読み始めてみて今まで読んだハウツーものとは一線を画するもので、どのように生きがい探しをすかという本ではなく、古今東西の偉人、詩人、文豪などの本や生き方を例に、どのように生きがいを見出したかを分析している本でした。

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『生きがいについて』神谷美恵子著-生きがいを失いかけている時に読む本

佐藤雅彦さんは、それまでの人生の中で生きがいを失いかけている時に読む本であり、生きがいについていつも考えているからヒントがつかめると書いています。

ハンセン病の国立療養所長島愛生園に精神病医として勤務していた時に経験したことを主に書いています。

今ではハンセン病は治る病気であり、極めて伝染力が低い病気であることがわかっていますが、アメリカで発見された特効薬プロミンが日本に薬が入ってきたのは戦後の1947(昭和22)年頃のことですがその後いろいろな治療薬が出て治療方針が確立されているようです。

神谷美恵子が『生きがいについて』を出版したのが今から50年も前の1966年なので、この本を書いていたころには、かなり悪化した患者が多い時代のことでした。

ハンセン病とわかった時点で、親兄弟、親族からも縁を切り名前を変えて療養所に入ることを余儀なくされる時代ですから、奈落に突き落とされたような思いで療養所に入ってくる方が多かったようです。

そのような状態からどのように生きがいを見つけていくかを、様々な偉大な哲学者、詩人、文学者、音楽家、死刑囚、癌患者、結核などの例を引いて書いていくのですが、生きがいの発見も一人一人の性格の違いから一様ではなく生きがいを見つけられない人も多いことを書いています。

しかし、どん底から何らかのきっかけで、生きがいを探し当てた人に対して「心の奥行きの変化」で次のように述べています。

生きがい喪失の苦悩を経たひとは、少なくとも一度は皆の住む平和な現実の世界から外にはじき出されたひとであった。

虚無と死の世界から人生および自分を眺めてみたことがあったひとである。いま、もしそのひとが新しい生きがいを発見することによって、新しい世界をみいだしたとするならば、そこにひとつの新しい視点がある。

それだけでも人生が、以前よりほりが深く見えるであろう。もはや彼は簡単にものの感覚的な表面だけを見ることはしないであろう。

新しい生きがいの発見より

私は少し短歌をかじったことがありますが、その時期に読んだハンセン病で長島愛生園に入所していた明石海人(本名でない)の歌集「白描」はベストセラーになり、感性のすばらしさは様々なところに書かれて引用されていたのを読んでいました。

自分の置かれた境遇を昇華させた短歌は、私が生まれる前の作品でありながら、長いこと短歌を詠む人の心を打ち指標となっていたのです。

私は網膜剥離になり、飛蚊症がひどかったのと左右の眼のバランスが悪く、文字の読みにくい時期がありましたが、それ前と同じという事はありませんが、慣れと時間の経過により改善したので、さほどの絶望感はありませんでした。

しかし長いこと眼科に通うことになり、そこでルーペを使いながら、文庫本を読んでいる方を見かけて感動したことがあります。

本を読む方が少なくなっていると言われる現代の若い方が、眼鏡では読めない本をルーペを動かしながら読んでいる姿から、知識欲の深さを感じました。

そこには、目が見えなくとも探求してやまない知識欲の大きさを見ることになりました。

生きがいは、自分でも気が付かないような些細なものであることもありうるし、より深いところに求める人もいて、ひとくちに生きがいという言葉で言い表すことのできないものかもしれません。

この本が50年を過ぎても、たくさんの人に読まれるゆえんは、生きがい探しはひとの永遠の課題であるゆえんだろうと思います。

古典と言われるような様々な作家や哲学の本を読みこんで書かれているので、私が読んだことのある本も忘れかけていますし、読んでいない本は読んでみたい思いにかられ興味の尽きない思いでした。

生きがいを求めにくいと言われている現代の人に読んでほしい一冊でした。


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