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『女のいない男たち』村上春樹著ー短篇集

2014年4月発売の村上春樹の短編集です。著者の作品には珍しく、6篇の作品が同時期に書かれたと言うことが前書きに書いてあります。

村上春樹の本を読むのは久しぶりになりますが、読んで見て村上春樹らしい作品集だと思いましたが、読みやすくすんなり分かる感じは長編集とは違って趣がありました。

前から読もうと思いながら、購入しないで8年近くも過ぎてしまいました。

『女のいない男たち』のあらすじと感想

表題の 『女のいない男たち』 は最期に掲載されているが、『ドライブ・マイカー』、『イエスタディー』、『独立器官』、『シェエラザード』、『木野』という順に掲載されているので、わたしは掲載順に読みました。

短編だが、いろいろと考えさせられる内容を楽しみながらあっという間に読み終えましたが、音楽を聞くような気持ちで読み進めました。

『ドライブ・マイカー』 のあらすじと感想

家福は49歳の時に美人で優秀な女優である妻を亡くした脇役の俳優です。

ある日接触事故を起こし、免許停止になり、目が緑内障と言うこともあり運転手をやとうことにして、修理工場の大場が紹介してくれた運転が上手だという若い女性の運転手に決めました。

車の中で、台詞の練習をするので、タクシーや電車は無理なので、美人ではないがその運転の確かさに満足しました。

彼女は、北海道の山の中で育ったといい、車がないと生活できないようなところなので運転が上達してようです。

家福は 癌で亡くなった妻が、生前浮気をしていた男の1人と会い、友人になり何故そのような男に惹かれたのかを探ろうとしますが、最期まで分かりません。

そのようなことを無口のドライバーの若い女性の運転手に話すことになりますが、彼女は「奥さんはその男に惹かれてなんかいなかった」と、そしてそれは病のようなもんだと言います。

そうなんですね。彼が言うように、演技をし、もとの自分に戻って生きていくのが人間のようです。

『イエスタディー』 のあらすじと感想

芦屋から出てきて早稲田大学の2年生の僕は、田園調布に住んでいて関西弁で、 イエスタディー を歌う早稲田の予備校に通う木樽と喫茶店でアルバイトをしていて友人になりました。

子供の頃から阪神タイガーズの熱狂的なファンだったという木樽は、完璧な関西弁を話し、関西出身の僕が標準語を話すという組み合わせでした。

木樽には、子供の頃から付き合っている彼女がいて、とても大切に思っているのだが、本当の恋人にはなれず、僕と彼女(栗谷えりか)と付き合って見ないかと木樽に言われ、会ってお茶を飲んで分かれ、木樽にあんな素敵な女性はいないから放さないようにと言った数日後、木樽はいなくなってしまいました。

そして僕が36歳の時に偶然に 栗谷えりか にあいました。

僕は27歳の時に結婚をして物を書いていると、彼女は僕と会ったときに付き合っていた人と6ヶ月くらい付き合い別れ、今も独身であること、木樽は時々手紙をくれるが、まだ独身だろうと思うと言った。

世界のあちこちで寿司職人をしているらしかった。

もしかしたら、人間が深いところで思うだろうことをさりげなく書いていて、私たちの心を揺さぶるのが村上春樹だといつも思っています。

わたしのあらすじでは、そのような心のひだを伝えることはできませんが。

『独立器官』 のあらすじと感想

内的な屈折や屈託があまりにも乏しいせいで、そのぶん驚くほど技巧的な人生を歩まずにはいられない種類の人々がいる。それほど多くはないが、ふとした折りに見かけることがある。渡会医師もそんな一人だった。

という書き出しで始まります。

渡会は52歳になるがそれまで結婚したことがなく、麻生の瀟洒なマンションの6階にある2寝室のアパートメントで一人暮らしを続けています。

炊事も洗濯もアイロンがけも掃除も、家事は概ね一人でこなせるし、月に1度はプロフェッショナルのハウスクリーニングを依頼します。

家の中に女性がいなくても不自由を感じたことも一人で家にいて退屈を持て余したことも、独り身を寂しいと思ったこともなかったといいます。

職業は美容整形外科医で、父親から引き継いだクリニックを六本木で経営しています。

美男とはいえないが女性たちと知り合う機会は多く、クリニックの収入は極めて多く、上品で、教養もあり話題も豊富です。

渡会は何故か若いうちから、結婚をして家庭を持つということを全く望みませんでした。

結婚するつもりのない渡会は人妻かほかに恋人を持った人が多く、彼が求めるのは魅力的な女性たちとの親密な知的なふれあいでした。

そんな生活を送っているうちに本気で恋に落ちることになったのです。

16歳年下の結婚していて、子供もいる人に賢いキツネがうっかり落とし穴に落ちるように思いもかけずに深い恋に落ちてしまったのです。

好きになりすぎまいと決心して、努力をしても無駄だと言うことです。

そして自分とは一体何者なのだろうという疑問を持つことになります。普通だったらもっと若いときに考えるようなことが50歳も過ぎて彼の脳裏を占めることになったのです。

そしてその女性と深刻な付き合いが始まり、何かあったらしく、食事もとらなくなり、何をする気もおきなくなって枯れるように死んでしまったのです。

彼のアシスタントが調べたところ、彼女にはあまり芳しくない若い男がいて、夫も子供も捨ててその男と暮らしていると言うことです。

渡江医師があるときすべての女性には、嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき具わっていて、大事なところで嘘をつくことをためらわない。

それは彼女に具わった独立器官がかってに行っているからだと言ったという。これは女性であるわたしにはわからないことですが、これが表題になっているようです。

50数年間一度も味わったことのない痛切な恋に落ちた渡会医師がそれまでと同じように生きるのと恋に落ちて死んでしまったことと、どちらが幸せだったかは誰にとっても分からないと作者は書いています。

『シェエラザード』 のあらすじと感想

羽原は関東地方の小都市にあるハウスに送られ、その連絡係として羽原の世話をすることになった女性は日常に必要なものを週に2度届けてくれ、自明のこととして彼をベッドに誘いました。

その彼女はとても話が上手で、情事のあとに語る、世にも魅惑的な話に羽原は翻弄されますが、時間が来ると途中で話を止めて帰って行きます。

その女性を、羽原は シェエラザード と名付けました。

ヤツメウナギが水草のように揺れているところ、高校2年生の時同じクラスの男の子に恋をして、その家に誰もいないときに忍び込んだこと、洗濯前のシャツを盗んで、次に行ったとき鍵が取り替えられて、それで終わりになり安心したことなど興味を覚えるような話でした。

それを聞いている羽原はいつか、自由を取り上げられ、その結果、 シェエラザード まで失うことになると思うと悲しい気持ちにさせました。

性行為そのものよりもむしろ、彼女たちと親密な時間を共有することができなくなってしまうことかもしれない。女を失うというのは結局のところそういうことなのだ。現実の中に組み込まれていながら、それでいて現実を無効化してくれる特殊の時間、それが女たちの提供してくれる物だった。

『木野』 のあらすじと感想

木野はスポーツ用品を販売する会社に17年勤めていたが、営業から1日早く帰った日に、彼の同僚が妻と一緒に寝室に寝ていたのを目撃してしまいました。

そのまま家を出て、家には2度と戻らず、次の日会社に退職願いを出しました。

木野には伯母がいて立派な柳の木のある根津美術館の裏手の路地の奥にある客商売には向かない立地で喫茶店を経営していたがそこを引き継がないかと相談を受けていたので、家賃を払ってバーをしたいという話をしました。

内装を変えバーを始めたがそこの一番奥に分厚い本を持った男が来るようになっていました。

彼女と一緒に暮らしていたマンションを売り、半々に分けることにしましたが、何故か怒りは湧いてきませんでした。

客が全く来ない店で居心地の良い店でした。

居心地の良い店で、それを人間より先に発見したのは灰色の野良猫でした。

猫が去った後、蛇が柳の木の下に見えるようになり、常連となっていた神田にここを去って旅に出るように言われ、そこから伯母のところに何も書かないで、その場所の絵はがきを出すようにと言われたが、ある日衝動的に文字を書いて出していました。

その雨の夜ドアを叩く音が聞こえ、木野は布団に潜り込んでいたが、その音は木野の心の音だったのです。

そして、忘れたつもりでいたがかなり傷ついている己の心を見いだすのでした。

『女のいない男たち』 のあらすじと感想

真夜中に電話がかかってきて、彼女の夫は彼女が自殺をしたことを伝えてきました。

彼女と付き合っていたのはずいぶん昔のことで、分かれてから一度も会っていないし、電話もかけたことがないので、何故電話をかけてきたのか分からないためいろいろと思考を巡らします。

彼女を亡くして、一番悲しいのは夫で、2番目に悲しいのが僕だと書いています。

女のいない男たちになるのはとても簡単なことだ。一人の女性を深く愛し、それから彼女がどこかに去ってしまえばいいのだ。

作者にとっては珍しい前書きに『女のいない男たち』は単行本の「書き下ろし」と言うかたちで書いたとあります。

表題が先にあってほんのタイトルに対応する「表題作」がなかったことにより、ちょうどコース料理の締めのような感じで書いたとありますが、そのように思って読むとかなり収まりが良いと思いました。

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