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『みみずくは黄昏に飛びたつ』川上未映子、村上春樹に訊く

本著『みみずくは黄昏に飛びたつ』は、川上未映子が訊き、村上春樹答えると言うかたちのロングインタビューです。

年齢は違うものの2人とも現代日本を代表するような作家なので、どのような話が聞けるかかなり期待して読み始めましたが、かなりの文章が収められていて、期待以上に面白く村上春樹という作家の精神性や日常を掘り下げて知ることができたことは、村上春樹文学への理解を深めることができました。

日本の現代作家の中で一番多くの本を読んでいるだろうと思っていましたが、その中で読んでいなかった本の話も出てきて、数冊注文しながら読むことになりました。

本を読みながら、その中に出てくる本を購入すると言うことを日常としている私には楽しみが増えて、嬉しいことでした。

小説は読んでいますが、そのほかのもので出版されているものも少しずつ読み込んでいきたいと考えています。

『みみずくは黄昏に飛びたつ』感想

2015年『職業としての小説家』の刊行を記念とし、川上未映子が柴田元幸さんを通して村上春樹さんへのインタビューの依頼を受け掲載されたもので、第1章に収められています。

2016年『騎士団長殺し』が出版された後のインタビューが日にちを跨いで2、3、4章と続きます。

そして2年後、文庫版のためのちょっと長い対談があります。

私が読んだのは文庫本なので、これらも収められていてちょっと得した気分になっています。

第一章 優れたパーカッショニストは、一番大事な音を叩かない

『職業としての小説家』の刊行の後におこなわれたインタビューです。

2015年発売当時私も購入して読んでいるので、適切なインタビューを読むことで、村上春樹という作家をより知ることができたように思いました。

かなり年齢は違うものの、村上春樹を15歳くらいから読み込んでいるという、川上未映子の適切でかなり鋭いインタビューに村上春樹が答えるのですが、初めてとは思えないようにやりとりに読者である私は引き込まれていくのを感じました。

この本を読んでいる段階で、私はかなり村上作品を読んでいるので、話しについて行くことができることが対談をより理解できたのだろうと思いました。

若い頃から小説が好きになった作家についてはわりと読み込んで来たように思うので、作家を知れば知るほど、作品の理解が深まるのではないかと感じています。

読めば読むほど好きになる作家と、途中から離れていく作家がいるように私自身は感じています。

村上作品はまだあまり読み返してはいませんが、数年後に読み返してより大きな感動を覚える作家もいるので、本というのは読者と作家の綱引きのような感じがあり、その時点で読者が作家をどの位理解しているかと言うこともあるのだろうと思います。

第二章 地下二階で起きていること

2017年『騎士団長殺し』が書き上げられそれを中心にインタビューが行われました。

村上春樹の作品は井戸だったり、壁抜けだったり地下だったり、比喩が多いことで有名であり、それがどの位理解できるか試されているように読むことになりますが、それについて地下二階で起きていることと話しています。

長編小説になればなるほど、地下二階に降りていくことが増えるのだが、私は『騎士団長殺し』までの長編小説はすべて読んでいるので、インタビューの内容は殆ど理解ができる庫とから、より理解が深まったと感じました。

今の時点では『騎士団長殺し』の題名について良く理解できますが、発売当時はこの題名から誘われるものはなく、しばらく読むことを控えていました。

私にとっては、『海辺のカフカ』という題名はすぐに寄ってくるが『騎士団長殺し』は遠かったようです。

しかし、村上春樹作品の他の作品と同じように、感動しながら読み進むことになった作品です。

このインタビューの中で、村上春樹が言っているように、文体がバージョンアップしていることも感じられました。

第三章 眠れない夜は太った郵便配達人と同じくらい珍しい

第三章は『騎士団長殺し』を書いたことについて、それまで訳した作品、書いた作品との関係性を巡って話していますが、それまでの作品とのとの関係性などから、読んできた村上作品をより深く理解できたように思いました。

私は、作家としての村上春樹も好きですが、翻訳者としての村上春樹も好きで、『グレート・ギャツビー』や『レイモンド・カーヴァー』の短編を読んだことがありますがとても気に入りました。

川上未映子が、それまでに書いた本や翻訳した本にまつわる話などを興味深く引き出して、その本についてどのような思いで書いたのかを知ることにより、より深く作品が理解できたように感じました。

そのような話の中から、読みたい本が沢山出てきたのも嬉しことでした。

第四章 たとえ紙がなくなっても、人は語り継ぐ

第四章も『騎士団長殺し』を中心に、どのように小説を書いていくかを訊いています。

その中に出てくる人達について、今まで書いた小説との関係性など興味深いことを村上春樹から引き出して、川上未映子の訊き方がするどくなっていき、本質に迫ってきます。

『ノルウェーの森』で100万部も売れるが、叩かれて日本から出て行って、その時書いた『眠り』『TVピープル』が海外で売れて、その後海外に沢山の読者をもつことになったことなど、ご自分のおっしゃっていますが、運だけとは言えない巡りあわせのようなもので、読まれるようになっていく話を聞きながら、自身が、うちに持っていた才能が花開いたとしか考えられませんでした。

付録 文庫本のためのちょっと長い対談

私は文庫本を読んだので、2年後のこの対談が載っていて、得した気分になりました。

村上春樹も70歳になっていて、父親について書いた『猫を棄てる』を書いたことで、両親のことなども話題に上がりました。

今までの書いてきたこと、今後どのようなことを書くかなど、興味深い内容となっています。

この本全体にも言えることですが、この本は後々の村上春樹文学を語る上での重要な文献になるのではないかと思いながら読んできました。

初期作品から、今まで書いた作品を網羅して答えている点で、素晴らしい1冊になっていると感じました。

いつものことですが、読んでいない本の話が出てくるとそれらの本を読みたくなり、読み終わった後に数冊購入していました。

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