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『教団X』 中村文則著ー人間の生き方を深く掘り下げた傑作

2015年9月6日

人間の誕生から宇宙の謎にまで及ぶ「教団X」は作者の中村文則が「現時点での僕のすべてです。」と書いているように人間を深く掘り下げていて人間のそして自分の事さえも見失ってしまうわけのわからなさを書いていると思います。

戦争で深く傷ついた松尾正太郎が教祖となっているが、宗教法人の届け出もなく、本人はアマチュア思索家と名乗ってまっとうな生き方をしている屋敷と「教団X」と呼ばれて沢渡(さわたり)を教祖とする公安や警察にマークされている謎の宗教団体と4人の男女が行き来しながら物語が展開していきます。

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人間誕生から現在につながる人間の生き難さが根底に流れている

人間の弱さがもたらす戦争、略奪、政治、宗教、貧富の差など現在の世に中にあるすべての事柄に触れながら、傷ついて生きなければならない人間の性が書かれていて考えさせられることが多くありました。

一人の人間は弱いものです。

それゆえに70年前にお国のためにと散っていった命の尊さを考えなければなりませんし、若い柔軟な心を巻き込んでしまう戦争に私たちは反対していかなければならないのだろうと思います。

この膨大な小説の中には、日本の現政権が進もうとしている愛国者教育や、安全保障政策の批判も含まれています。

内容を理解しないままに賛成を唱える人が多いこともこの安全保障政策から見え始めています。

安保改正案の詳細が少しずつ分かってくるにしたがって、この法案に反対する意見が増えてきているのは国家という波にのまれやすい人間の性のような気がします。

そのような人間の弱さが、宗教の名のもとに集まってきたのが「教団X」だと私には思えます。

宗教も国家も、生き難い思いを持った人を何らかの一時の快楽と信仰という名のもとに集めるのは容易なことかもしれないと思っています。

人は一人で生きるのは寂しすぎるのでいつの時代も群れをつくります。

人ばかりでなく、生きているもののほとんどは群れをつくっています。

そこが居心地の良いところであり、一度信じてしまえば、弱い人間は自分の心情を翻すことが難しいのが宗教団体のようなものなのでしょう。

神とか仏は紀元前の昔から存在していて、生きているものの心を縛ってきました。

世界にどのくらいの宗教団体が在るのかはわかりませんが、それにすがることで人間の心は平衡を保ってきたという歴史がありますし、今でも国家よりも宗教が強い国も存在しています。

日本は太平洋戦争の敗戦までは天皇が祭られてきましたし、今でも象徴としての天皇は日本の人々の心の支えになっている部分が多いと思います。

それが日本人の心に深く根差しているゆえに国民の平穏があるのかもしれません。

平穏そうに見えても、人間にはいつ何が起きるかわかりまん。

そのような時に宗教とかかわりを持つことも稀ではないことを私も身をもって感じることがあります。

何かのはずみに病気であることを口に出したとき、私は何の宗教かわかりませんでしたが、誘いを受けたことが何度かありました。

憲法にも宗教の自由は書かれていますし、テロや国民に不利益を与えないような宗教は私たちの心を救ってくれるでしょうが、それを見極めるのはどのようにしたらよいのか私には分かりません。

「教団X」のような宗教が日本にどのくらいあるのか、私には分かりませんが、そのような宗教に子供が入ってしまって悩み続けている親がいるという事も聞いたことがあります。

子供であっても、何かを信じてしまえば改心させることはできないように、「教団X」に入ってしまった人たちは教祖にすべてをささげてしまうという性を「教団X」は教えてくれます。

飢餓と病気で苦しむ世界のすべてを私たちの問題として、中村文則は私たち読者に投げかけています。

この小説や人間がどこからやってきて、どのような生き方をして、どのように死んでいくのかが主な内容ですが、膨大な資料を詰め込んであるためにわかりにくくしている点があるのも否めません。

生命体にとって性はなくてはならないものですが、あまりにも性描写が多すぎるために損をしている部分もあるのではないかと思いながら読みました。

「教団X」の沢渡(さわたり)と松尾正太郎を対比させながら、それぞれに悩みを抱えて、自分のことさえも見えなくなる弱い人間に生きるとはどのようなことかを問いているのがこの本の原点なのだろうと思って読みました。

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