三島由紀夫の最後の長編小説「豊穣の海は、「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「天人五衰」の全4巻で構成される、輪廻転生をテーマにした物語です。
「暁の寺」は感応的美女の生まれ変わったジン・ジャンの物語です。
『豊饒の海(3)』「暁の寺」のあらすじと感想
「暁の寺」は2部からなり、47歳の本多が弁護士としてバンコクで仕事をした時から始まります。
そこで、学習院時代に清彰の家で知り合ったシャム王子の一番下の7歳になる姫君ジン・ジャンが、自分は日本人の生まれ代わりだと言っているということを知り、出会うことになります。
『豊饒の海(3)』「暁の寺」第1部のあらすじ
バンコクの宮殿で生まれ代わりの7歳の姫君ジン・ジャンに会い、その後インドを巡り輪廻転生について学び、思考して戻った日本でも、輪廻転生切にの研究に没頭します。
まもなく太平洋戦争が勃発、大空襲後に焼け跡ばかりになった東京は大きく変わりました。
松枝家も養嗣子となった放蕩息子が土地を売却してしまったという、残った焼け跡を訪ねると95歳になった蓼科が焼け跡にいるのに出会ったのです。
『豊饒の海(3)』「暁の寺」第2部のあらすじ
58歳となっている本多は、弁護士としての仕事で大きな収入を得て、御殿場に別荘を建て、日本に留学してきたジン・ジャンを迎えようとしていました。
広大な土地に建てた別荘の隣人となったのが、米軍と暮らしている久松慶子です。
幼い姫だったジン・ジャンにほくろを見つけることができなかったことから、プールを作りそこでほくろを見つけようとしたのですが、見つけることができませんでした。
ほくろを確認したいと思った本多は書斎の隣の客室にジン・ジャンと慶子を泊め、覗いていると同性愛者である慶子とジン・ジャンが抱き合っているのを見て驚くが、ジン・ジャンに脇腹には、3つのほくろが浮かび上がっていたのです。
その早朝、別荘は火事になり泊まり客の今西と鬼頭槙子の弟子椿原夫人がが死亡してしまいます。
その後、ジン・ジャンは帰国して消息を絶ってしまいます。
昭和42年本多は米国大使館に招かれて、ジン・ジャンにそっくりなアメリカ大使館婦人にあい、確かめるとジン・ジャンの双子の兄弟で、妹のジン・ジャンは蛇にかまれて20歳になった春に亡くなったということでした。
『豊饒の海(3)』「暁の寺」の感想
2巻の「奔馬」が青年勲の日本を思う純粋な精神を描いているのに比べ、「暁の寺」はインド、タイにおもむきその歴史と宗教を学び、輪廻転生についての考察しています。
本多の思いも若いときの理知ばかりが勝る思考から自由になってきているのを感じます。
そんな本多が官能的な18歳の美少女ジン・ジャンに恋心を抱くようになり、慶子とジン・ジャンの同性愛者の行為をのぞき見るような行為を描いているのが「暁の寺」です。
これら対比するような物語を読んで、三島由紀夫という人間の奥深さを思い見ないではいられません。