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『憲法の涙』井上達夫著―リベラルのことは嫌いでもリベラリズムは嫌いにならないでください2

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『リベラルのことは嫌いでもリベラリズムは嫌いにならないでください2』として、毎日新聞出版志摩和生氏のインタビューアーにこたえる形で書かれているのが『憲法の涙』です。

前著を読めば、井上達夫氏は、自衛隊の存在、個別的自衛権や集団的自衛権は九条違反であるとする立場を貫き、憲法から9条削除論を唱え、憲法改正が必要だという立場をとっています。

しかし、安倍政権がやろうとしている憲法改正は、対米従属を深めることで、政治的ご都合主義であり、政治的欺瞞だといいます。

改憲派も護憲派も嘘ばかり

護憲派には、九条のもとで自衛隊と日米安保が存在するのは違憲だ、と言いながら、現実に合わせて憲法を変える努力をせず、その便益だけは享受しながら居直っているいることを、政治的な欺瞞で罪が重いと言います。

一方九条のもとで自衛隊と日米安保を認めるという修正主義的護憲派は、従来の内閣法制局見解と同じ解釈改憲をしながら安倍政権の解釈改憲を批判しているという意味で、政治的欺瞞を働いている。どちらにせよ護憲派の罪は、憲法を尊重するふりをして、九条を裏切る自衛隊と日米安保の存在に便乗しそれを容認することは罪深いといいます。

自衛隊があり、安保条約がある以上、九条改憲は必須であることを前提に筆者は、九条削除論を唱えるに至っています。

私は井上氏の論考にかなり動かされていますが、憲法は国会議員のの3分の2以上の賛成を得たうえで国民投票で半数の賛成を得なければなりません。与党が3分の2を占めている安倍政権の元で、憲法改正は通りやすくなっていますが、欺瞞が多い上に成立させることが前提の安倍政権での憲法改正を危ぶむ声は多いのではないでしょうか。

また、多くの国民は憲法を読んだこともなく、憲法知らないというのが現状だと思われます。国民がしっかりと憲法を学び、与野党が合意できるような憲法案が出来た時、国民投票にかけるのがベストだと私は思っています。

しかし、著者は特定秘密保護法や生活保護法改正あたりから、安倍政権は危険だという認識の上に立って、憲法改正の必要性を説いています。安倍政権打倒だけでは日本は変わらないという認識に立っています。

改憲とフェアプレー

著者は改憲論者で、憲法からの9条削除が持論で、憲法内にすべての人に徴兵制を書き、「もし戦力を持つならシビリアンコントロールに服さなければならない」「文民統制・議会統制」も憲法の中に書かなければならないと言っています。

しかし、それはあまりにも国民に正視されがたいかもしれないので、護憲的改憲案などにしても良いのではないかと提案しています。私も護憲派ですが、つい最近、自衛隊という存在が国際的に認められないし、国連法でも特殊な立場になっていることなどを知りました。

そのようなことから九条と自衛隊、安保条約の矛盾、安倍政権による改憲の怖さなども同時に感じながら改憲を考えることも多くなりました。何しろ自民党の改憲案というのは「国防軍」になっていますし、安倍政権の解釈改憲で憲法外の存在、自衛隊と安保がどんどん肥大化しているようなことも聞くことがあります。

憲法の立憲主義的な立場、アメリカから少し離れた、国際的な立場からの世界の現状にあった改憲は最小限必要なのではないかという思いになっていますが、話の通じない安倍政権に押し切られる形での憲法改正は一番怖いと私は思っています。

憲法学を占う

著者の九条削除論は、多くの憲法学者などに知られているようですが、九条に自衛隊、安保法制が違憲であることは認めている方は多いようですが、九条削除論はなかなか認められないようです。

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

憲法九条より

上記のような憲法に照らし合わせれば、世界有数の規模と武器を持つ自衛隊が違憲であることは間違いないと著者は言います。

1項の「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」というのはパリ不戦条約の精神で自衛目的を超えた戦力の行使はしない、というのが一般的解釈ですが、2項によって自衛目的の戦力の保有と行使も禁じられています。

内閣法制局や修正主義的護憲派も、自衛隊は2項が禁じる「戦力」ではないとしてきたようです。しかし安全保障の立場からは1項も憲法違反になるといいます。現に自衛隊は海外にまで派遣されるに至っていますが、立場がとても危ういようです。

九条のもとで、「戦力でないから自衛隊OK」だとか、世界最大の戦力である米軍と一緒に戦うのに「交戦権の行使ではない」だとかいうのであれば、それは「解釈改憲」というしかないと言われるでしょう。安倍政権は憲法に自衛隊を書きこもうと必死になっています。その改憲案はなんでもできるような法案だとあるところで聞いたことがあります。

著者はリベラルの立場から、解釈憲法を広げるのではなく、自衛隊をしっかり書き込むことが大切であるといいます。

そして、すべての人を徴兵制にすることは「他者に対する公平性」であり、戦力行使の歯止めになるのではないかという考えのようです。

そして、安保法制を残しつつも国連主導の集団的安全保障体制に移行する、ということのようです。

私のように憲法を本格的に学んでいないもので、戦争反対のリベラルを表明しているものにとっても、解釈憲法で世界の裏側にまで自衛隊が行き、紛争に巻き込まれている現状を知れば、何らかの方法で、国民の知ることが出来るような憲法改正をして、自衛隊の命を守らなければならないのだろうと思います。

そして、軍事大国のアメリカと100%ともにあるなどという安倍総理の考え方を危うく思うと日米地位協定を見直さない限り憲法改正は難しいと考えます。

愚行の権利・民主主義の冒険

最終章は集団的自衛権を推し進める安倍政権に言及しています。アメリカに追随している日本は、米国に追随しないと守ってもらえないからと、心配している人もいるようだが、日本が負っていることの方が多く、米国は日本を守ってあげるという保証だけだといいます。

海外における最大の戦略拠点を日本は米軍に提供しており、日本の方が与えていること多いのだから、日本はもっとアメリカに交渉すべきだといいます。集団的自衛権を行使をやらなければ日米安保を破棄するなどということは言わないし、米国は何がじぶんたちの地政学的権益に資するかぐらいはわきまえる国だと思っているといいます。

この見解を読んで、アメリカと100%ともにあるという安倍総理の言葉に疑問を抱いていた私は安心するとともに、もう少しアメリカに物を言っても良いのだと思いました。

安倍首相について、かなり疑問を抱いている私は、歴史的に名を残すことで、イデオロギー的な自己満足を、未熟さを指摘されるとムッとし、思春期の子供が反発しているみたい。というくだりを読んだ時かなり納得できました。

そして、改憲派が押し付け憲法だから改憲すべしというのも欺瞞だという言葉にも納得ですし、野党がバラバラであるために仕方なく安倍政権を支持しているというのもうなずけます。

現在の安倍政権下で、納得の出来ない気持ちで生活していましたが、エリートも間違うし、失敗から学べばよいという考え方に少しは救われた気がします。

この本を読んですべて納得できるかというとそうではありませんが、様々な考え方があり、正義を基準にしている法哲学者の井上達夫氏の本に出会ったことを嬉しく思いました。

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