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本・読書感想

『コインロッカー・ベイビーズ』 村上 龍著|あらすじ

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コインロッカー・ベイビーズ

村上 龍の『コインロッカー・ベイビーズ』を読みました。「限りなく透明に近いブルー」が、芥川賞を受賞して、美しい題名に惹かれて購入、期待して読みましたが、麻薬と暴力と乱交の世界にはなじむことができずに読了しましたが、感動はありませんでした。

そのようなことから、1980年に発売になった小説は、1970年代にニュースになったコインロッカーに捨てられた嬰児にヒントを得たのかもしれない『コインロッカー・ベイビーズ』の人気を知りながらも、その後村上龍の小説は読みたいと思わないまま来てしまいました。

その時以来何度か芥川賞を受賞した小説は読んでいますが、それほど夢中になる作家もいなかったために、国内外の古典というか、評価が決まった小説やエッセイなどを読むようになり、新しい本は読む機会が無くなっていました。

数年前から、現代の作家の小説を読むようになり、村上春樹の小説を数冊読んで、ダブル村上と言われた村上龍の小説を読んでみようと思って読んだのが、『コインロッカー・ベイビーズ』でした。

前に読んだ良くない記憶から、しばらく積んでおいたのですが読み始めてみると、暴力的なシーンは多いものの(この小説の中では不可欠なのかもしれません)コインロッカーに捨てられて、乳児院で育つことになる、キクとハシの心理描写に引き込まれて一気に読んでしまいました。

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『コインロッカー・ベイビーズ』 のあらすじと感想

コインロッカーに捨てられた嬰児のうち生き残ったのはキクとハシの二人だけだということだが、そんな生い立ちがあってか二人は自閉症と言われて、治療を受けることになりました。

睡眠誘導剤を入れたジュースを飲んで半覚醒状態になった時に暗くして心音を聞かせるという治療だったが、それによってキクもハシもかなり良くなったが、そのことが二人の人生に大きくかかわることになります。キクは心臓の音に敏感になり、ハシはその音を探して歌手になり成功することになります。

二人は小学校に上がる前に西九州の炭鉱がつぶれた島で双子が欲しいという夫婦に育てられることになり、海沿いを探検したり、炭鉱後を探検したりして過ごすが、デパートに行き舞台で歌っている人からハシは催眠術をかけられて、治療で聞いた音を思い出して、一日中テレビの中からその音を探し始めて学校にも行けなくなりました。

そな時にキクは一人で廃墟に行き、そこに住んでいる青年から最後に東京を廃墟にする「ダチュラ」という言葉を教えられますが、そこに至るまでにはさまざまなドラマがあります。

キクは子犬が欲しくて子犬を連れてこようとした時に親犬にかまれ、廃墟に住んでいる青年に助けられたが、傷はなかなか治りませんでした。

その傷が治るころハシはその音はテレビの中にはないことに気づき、学校に行けるようになります。その頃キクは棒高跳びに熱中して中学の全国大会で注目される記録を出し、私立高校から誘いが来たがキクは断りました。ハシと離れたくなかったのだろうと自分で思います。

高校生になったキクは棒高跳びに熱中して、ハシはクラスのみんなと仲良くなっていますが、ある日テレビで、ブーゲンビレアで包んでコインロッカーに捨てたという人がいると老作家が話すのを聞いたことにより家出してしまいます。

その後何処にいるかも分からないまま半年が過ぎたころ、母の和代と一緒にキクは東京にハシを探しに行き、事故にあって和代は死んでしまいますが、キクはそのまま東京に残ることにします。

その和代が死んだ熱い部屋の中で、青年から聞いた東京を壊せという声が聞こえてきて忘れていた暴力がよみがえり、次の日から本屋さんでダチュラとはなんだろうかとしらべはじめ、生物兵器であることを突き止めます。

キクがダチュラを求めて棒高跳びで薬島に入ろうと思っていた日にこのドラマを彩る美しいアネモネと出会い、棒高跳びが見たかったら薬島に入る晩に見に来ればよいというが、失敗してしまう。助けてくれたのは薬島で暮らしていたハシでした。

ハシはレコード会社の社長のミスターDに見染められてレコードを出してヒットし、マネージャーのニヴァと結ばれ人気歌手として登りつめていきます。ミスターDは、ハシの出生を売り物にしてレコードの売り上げをもっと伸ばすためにハシの親を探し出し内緒で対面させようたくらみ、捨てた親を探していました。

キクはその頃鰐を買っているアネモネの部屋にいますが、テレビのなかのハシの異常さに気がつきますが、アネモネもキクにとってはハシのように大切な人になっていることを気づいているのです。

アネモネがクリスマスイブの料理の準備が終わろうとしていた時、ミスターDからハシが行っているかと電話があります。新聞を見るとハシが母親と対面するという記事を見つけたことからびっくりして隠していた拳銃をもって駆け付けたキクに、ハシはその女性はキクの母親だと告げます。

怒りを抑えられなかったキクに近づいた母はやめなさい、私を撃ちなさいと言って引き金を引いた拳銃の前に立ちはだかったために、キクは母親を撃ってしまいます。

裁判の間キクは何も言わずうなだれたまま、力なく判決を聞き、函館少年刑務所に送られるが、他人との接触や会話を嫌い何にも興味を示さないのは事故を起こしてから一貫していたのです。

その頃アネモネは鰐を載せて東北道を走っていましたが、車に接触され鰐が道路に落ちて死んでしまいます。車も壊れたので電車で函館に向かい、何とかキクと面会できます。

キクは運動会の対抗リレーでで疾走していた時に、子供のころに聞かされた音は母の胎内で聞いた心音だったことを確信します。

自分を生んだ女はなぜ、止めなさい、と言ったのか? すべて行為を中止し五秒前の自分に戻り続けるように言ったか?・・・・・自分を遡り、胎内に帰って、あの音を思い出せと教えたかったに違いない。・・・・・・俺が一人になっても生きていけるすべてを一瞬のうちに教えようとした。あの時周囲の視線に屈せず、俺だけのために立ち上がり、おれの傍に寄って、俺だけに呟いた、俺はあの女を尊敬する、立派な母親だ。

そんな思いで先の二人を追い抜きテープを巻き付けてゴールインした時、やっとなにかが吹っ切れたようでした。

その頃ハシのレコードは売れまくっていて、ニヴァと結婚式を挙げるが、新婚旅行にいかず全国ツアーで盛り上がっているが、ハシは少しずつくるっていき、ニヴァが妊娠しておなかが目立つようになったころ刺してしまうが、命に別状はなかったがハシは精神病院に強制収容されてしまいます。

一方少しずつ元気になったキクは船舶職員訓練科に入りました。出所した後の職業を覚えるために、いろいろな科がある中で好きな科を選ぶことができるようになっているのです。

函館に留まっていたアネモネは訓練に出た時に脱走を手伝うべく、訓練船を追い車をいつでも出せるようにしていましたが、ある日風雨に巻き込まれたときにほかの二人と脱走してダチュラが沈めてあるのではないかというカギラ島に向かいます。

ダチュラは猛烈な作用があり、それを飲んだ動物も、人間も狂暴になりあらゆるものを襲うということから、海底に沈められたと薬島で聞いていました。キクはダイバーの雑誌にカギラ島に行ったダイバーはサメに襲われたり、ダイバー同士で殺し合いをしたりするということが書いてある雑誌をアネモネの部屋で見つけていたので、ダチュラを手に入れ、東京を破壊するためにカラギ島に行くことにしていたのです。


ダチュラのボンベを抱えてキクは言う。

渋滞する高速道路をフルスロットルですり抜け疾走するバイクライダーのように生きたいのだ。俺は飛び続ける。ハシは歌い続けるだろう。夏の柔らかな箱で眠る赤ん坊、俺たちはすべてあの音を聞いた。空気に触れるまで聞き続けたのは母親の心臓の鼓動だ。一瞬も休みなく送られてきたその信号を忘れてはならない、信号の意味はただ一つだ。キクはダチュラを掴んだ。十三本の塔が目の前に迫る。銀色の塊が視界を被う。巨大なさなぎが孵化するだろう。夏の柔らかな箱で眠る赤ん坊達がが紡ぎ続けたガラスと鉄とコンクリートのさなぎが一斉に付加するだろう。

精神病院から東京が爆破された後の瓦礫の中に彷徨い出てきたハシは、その毒のために妊婦を殺そうとしても止めることができずにいたところ自分の一番冷えた部分が舌であることを突き止め、妊婦の口を覗いて、子供のころに聞いた音が心音だったことに気づくのです。

ハシは妊婦の顎から手を離した。赤ん坊と同じ声をあげながら女から遠ざかる。無人の街の中心へと歩き出した。ハシの叫び声は歌に変わっていく。聞こえるか? ハシは彼方の塔に向かって呟いた。

聞こえるか? 僕の、新しい歌だ。

この小説はここで終わっています。

『コインロッカー・ベイビーズ』を読み終わって

この本は若者に感動を与える本だと書いている人がいましたが、私は定年を過ぎた年金生活をするような年になっていますが、大きな感動を覚えました。

文学や芸術を理解するのには年齢は関係ないのだろうと思っています。

その人によるかもしれませんが、私の場合であれば、子供よりも若い者たちを題材にしている、この小説を若かった時には今ほど理解できたかどうかは疑わしく思っています。

その頃には読んでいないのですから比べようがありませんが、人生の最後に近くなっている今だからこそ、理解できることが多いことをこの頃気が付くことが多くなっています。

若い人にとっては、私が生きている年齢は未知の時間であるゆえにそのように感じるのかもしれませんが、人間の心はそれほど老いないのかもしれません。

SL小説のような人間の宇宙を描いた小説は一気に読み終えましたが、なぜか分からないイライラ感にさいなまされていました。

このイライラ感は私の実生活の中のイライラ感なのか、小説を読んでのイライラ感かは、分からないままでしたが、読み終わった時に心は収まっていました。

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