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『海辺のカフカ』村上春樹著|入口の石とは?

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数冊の村上春樹の小説、エッセイを読んだ後に『海辺のカフカ』を読みました。そしてこの作品が今までに読んだ中で私が一番好きな小説になりましたが、なぞ解きをを強いられることにもなりました。

まだ読んでいない作品も多いのですが「フランツ・カフカ」賞が贈られたということで、ノーベル賞の候補になっているのもうなずけるような作品でした。

15歳の少年が成長していく過程を多角的にとらえた物語で、私はかなり昔に通ってきましたが、折に触れて子供が成長する危うさを考えさせられているので、少年の気持ちを興味深く読みました。

聖書、ギリシャ神話などなどの古典からの引用もも多く、それらからの示唆は古今東西を問わず今に引き継がれている親子の問題を考えないわけにはいきませんでした。

どんな子供時代を過ごしたにせよ、その後どのように生きてきたのであれこれで良かったと思えるような生き方はありえないのが現実で、ほとんどの人は誰にも打ち明けられないようなカオスを抱いて生きてきたのではないかと思っています。

『海辺のカフカ』の主人公の15歳の少年が父親に子供のころから、「お前はいつかその手で父親を殺し、母親と姉と交わることになる。」と言われるほどにはむごい子供時代を過ごした人は少ないと思いながらも、ある事件がきっかけで空っぽになってしまったナカタさんのような人生もあるのかもしれないとも思いました。

源氏物語、ギリシャ神話などを踏まえて書いてあるのではないかと思う物語はとても切なく、現在まで延々と続いている業を心の片隅において生きなければならないのだろうか感じさせられました。

村上春樹の作品は、美しい言葉とメロディーの中から心の深淵を覗かざるを得ない不思議な世界を味わうことになります。

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『海辺のカフカ』のあらすじと感想

15歳の誕生日に田村カフカは、それまで長いこと準備をしてきた「家を出ること」を決行することになり四国行きの夜行列車に乗るが、その時は父親に言われた予言のことは分からずに読み進むことになります。

その夜行列車に一緒に乗っていたさくらと知り合いになり、ある事件があった夜にアパートに泊めてもらうことになります。

奇数章と、偶数章で2つの接点のない物語が進んでいき、それらがどこかでつながっているというかたちで進んでいくのですが、奇数章は、15歳の少年田村カフカが主人公であり、偶数章は、戦争中に学童疎開をしていた時に気を失った後に文字を読むことも書くこともできなくなったナカタさんという50歳代の猫と話ができて「猫探しの名人」が主人公になって不思議な世界が書かれていきます。

ナカタさんは少年が中野の家を出た数日後、やはり中野で、頼まれた猫探しをしているところに黒い犬が現れ、ジョニー・ウォーカーの家に連れていかれました。

そこで、頼まれていた行方不明になった、ゴマを助けたかったらジョニー・ウォーカーも殺すようにと言われましたが、ナカタさんは人殺すことなどできません。

そんなナカタさんにジョニー・ウォーカーは次のように言うのです。

「君はこう考えなくちゃならない。これは戦争なんだとね。それで君は兵隊さんなんだ。今ここで君は決断を下さなくちゃならない。私が猫たちを殺すか、それとも君が私を殺すか、そのどちらかだ。」
海辺のカフカ 上巻 第16章より

そして、猫を殺し始めたジョニー・ウォーカーだが、知り合いの猫まで殺されていくのを見てナカダさんは気分が悪くなり、憑かれたようにナイフを取って、ジョニー・ウォーカーを刺してしまいます。

そこは血の海となり、ナカタさんも血だらけになって意識を失ってしまいましたが、気が付いた時にはミミとゴマが両脇にいて頬をなめていたが、もう猫の言葉は分からなくなっていました。

交番に行って人を殺してきたことを話しましたが、血で汚れたはずの洋服には血がついていない上に人殺しをしてきたように見えなかったこととナカタが言っていることが分からなかった警察官はそのまま帰してしまいますが、ナカタさんが帰り際に明日の夕方イワシとアジが降ってくると言って帰った次の日、本当にイワシとアジが降って来た時には青くなっていました。

田村カフカが高松に着いてからの甲村記念図書館での生活

田村カフカは高松に着いて、予約してあったビジネスホテルに落ち着き、甲村記念図書館に毎日通って本を読むことになり、11時の開館前までは体育館で運動をすることを日課にしていたのですが、8日目にナカタさんがジョニー・ウォーカーを刺した日の夕方食堂で夕食を取った後までは覚えていたのですが、気が付いた時には神社の奥の草むらの中で血だらけになって倒れていたのです。

ナカタさんがあびた血を息子の田村カフカが背負うことになるのですが、この後ナカタさんが探すことになる入口の石はこのへんで見つかることになるのも、何かの符合なのでしょう。

何も知らない僕はびっくりして、ホテルに帰ることもできず、さくらさん(夜行列車で知り合った)に電話をして泊めてもらうことになりますが、朝起きた時はさくらさんは仕事に出ていて、事件はなかったという書置きがありますが、電話でホテルを引き払い図書館に行きます。

泊まるところの亡くなった田村カフカは図書館の司書の大島に相談すると、図書館に泊まればよいが責任者の佐伯さんに許可をもらうまで高知の深い山奥にある山小屋で、2~3日待っていてほしいと言われて山小屋で生活することになります。


迎えにきてくれた大島さんが図書館に帰ってから見せてくれたのは、田村カフカの父の彫刻家田村浩一が殺されたという新聞記事であり、その時刻は田村カフカが気を失っている間に胸に血がべったりついていたその時でした。

それを知った時を前後して、ナカタさんは星野さんのトラックで神戸に着き、そこから橋を渡って高松にきて、入口の石を探していたのです。

ナカタさんは四国に向かい入口の石を探す

ナカタさんはその頃中野を後にして西に向かっていて、富士川サービスエリアで西に行くトラックに載せてもらおうと見つけていましたが、若い男たちが一人の人を殴っているのを見つけて助けようとした時にヒルが降ってきました。

そのあと、神戸まで行くというトラックに載せてもらうことができましたが、これが自衛隊に入りその後長距離運転手になった星野さんで、最後までナカタさんを助けてくれることになる人です。

ナカタさんは、見えない力で四国まで入口の石を探しに行かなくてはならないと思ったのは、ジョニー・ウォーカーが、ナカタさんの中に入ってきて田村カフカの代わりに殺してしまったり、イワシやアジが、そしてヒルまでもが降るようになって来た事で、もし降ってくるものが包丁であったり、大きな爆弾であったり、毒ガスだったら、とても困ることになると思うとどうしても元のナカタさんに戻らなければならなかったのです。

それが入口の石を見つけることであるようでしたが、そのあとのことはナカタさんにも分からないまま入口の石を捜し始めます。

入口の石を捜し歩いて疲れてナカタさんが寝てしまった後に、星野さんは神社の奥の祠の中から抽象的存在のカーネル・サンダースに導かれて入口の石をナカタさんのもとに持ってくることができました。

雷のなり響く中、星野さんは力の限りを出して石を開けることができたのできたのですが、疲れてナカタさんが深い眠りの中に入っていた頃、佐伯さんの心の中で何かが変わっていくような感じがして、田村カフカと昔の恋人とのように交わることになります。

彫刻家田村浩一を殺したことによりナカタさんが背負ったものと佐伯さんの謎の25年

佐伯さんは小学生のころから甲村家の長男といいなずけの関係にあり、完ぺきに幸せな円の中にいるような生活をしていましたが、少年は東京の大学に行ってしまい、佐伯さんは音楽学校に進むが、少年のようにすべて満たされるということはなく「海辺のカフカ」という曲を作り、レコーデングしてかなり売れました。

しかし、その時期に少年は学園紛争のさなか人違いで殺されてしまいます。

その時に20歳になっていた佐伯さんは家にこもったきりになり、その後行方不明になってしまいその間のことは誰も知りませんが、25年後母親が亡くなった時に高松に戻ってきてからは甲村記念図書館の責任者として過ごしていました。

田村カフカが過ごすことになったのは、甲村少年が使っていた部屋で毎晩15歳の少女の佐伯さんが訪れるようになってその少女と佐伯さんとが見分けがつかないくらいに恋に落ちてしまっていましたが、ある時佐伯さんが入ってきて交わってしまいます。

カフカ少年にとっては、佐伯さんは自分を置いて出て行った母親であるという思いが強くなっていくのですが、父の予言のように母と交わるということとどのようなつながりがあるのか分からないくらい佐伯さんが好きになってしまうようでした。

田村カフカは、佐伯さんに父のことや子供を産んだことがあるかなど、自分とのつながりを聞くのですがはっきりとした答えは得ることができませんでした。

ジョニー・ウォーカーこと、田村浩一が殺されたことで、手掛かりを求めて少年を追っていた警察は携帯電話の履歴から少年が四国にいることを突き止め追跡の手がおってきます。

しかし、ナカタさんが交番に自主したことも分かったために殺したのは少年ではないことは分かっているものの行方不明の少年を探さないわけにはいかないようですが、それとは別に佐伯さんに恋愛感情を持ってしまった田村カフカをそのままにしておくわけにもいかず、大島さんは高知の小屋に行くことを勧め、送っていきます。

ナカタさんは何かに導かれるように星野さんに車を借りてもらい町中を探してそこが甲村図書館であることが分かりましたが、その日は閉館日の月曜日だったのと近いことから車を返して次の日に来ることにしました。

甲村図書館では大島さんが丁寧に出迎えてくれて、午後から館内を佐伯さんが説明してくれるということから本を読んで待つことにして、説明を聞いた後のことです。

ナカタさんは誰が止めるのも聞かず、佐伯さんの部屋に入って行き、佐伯さんが昔入り口の石を開けたことを確かめ、自分も影が半分しかないのと同じように佐伯さんにも影が半部しかないことなどを話し、すべてのものを元に戻すためにここには留まれないないことを告げます。

ナカタさんは子供の時に意識を失っていた時に影を半分亡くしたのですが、佐伯さんは入口の石を開けた時に亡くしたのかもしれません。

そのような危うさを持った佐伯さんは、ナカタさんが彫刻家田村浩一に入り込まれたように、田村浩一との関係性を持っていたのではないかと思わせるものがあります。

佐伯さんもそれを知っていて、意思疎通ができて、今まで生きてきた足跡を書いたファイルをナカタさんに燃やしてくれと頼み、静かに亡くなります。

佐伯さんに生きてきた足跡を書いたファイルを頼まれて燃やし終えたナカタさんは、部屋に帰ると疲れて寝てしまいますが、次の日に死んでいました。

困っていた星野さんに黒猫が石を閉めるためにはあるものを殺して石の中に入れないようにすることができれば、そのまま帰ることができると教えてくれます。

星野さんは猫に教わったものを殺すために見張っていると、夜中に死んだナカタさんの口の中から白い細長いものが出てきて、部屋をはいずり回りますが星野さんはやっと殺すことができて石を閉めることができたのです。

これは、死んで、次の世界に行こうとしている田村カフカの父を死の世界にも行かせないようにとカラスと呼ばれる少年が襲うのだが、どんなに傷つけても殺すことができす、舌をひきずりだしたものの仕留めを刺すことのできなかったものがナカタさんの口から出てきたもののようです。

優れた彫刻家でありながら、悪の根源のような彫刻家田村浩一は佐伯さんの住むところにも行けなくなったことになり、ナカタさんも、佐伯さんもなにものかの力によって元の穏やかな形に戻ることができたのだろうと思いました。

そして、深い山をかき分けてあちら側に近づいた田村カフカは、佐伯さんに諭されて現実の世界に戻ってきました。海辺の絵をずっともっていてほしいと言われ、「あなたに私のことを覚えていてほしいの。あなたさえ私のことを覚えていてくれれば、ほかのすべての人に忘れられたってかまわない」と言われたことによって戻る決心をしたのです。

佐伯さんとナカタさんは何によって繋がっているのだろうか

私はこの難しい物語を読んで、かなり戸惑い考えこんでしまいました。それは彫刻家田村浩一を殺した後に変わってしまったと感じ元の自分に戻るには入口の石が必要であり、佐伯さんも入ったという入りぐちの石とは何を意味しているのでしょうか。

それは、雷に撃たれた彫刻家田村浩一であると思うのは私の深読みかもしれませんが、とりあえず今のところは分からないままにしておくほかはないようです。

15歳の田村カフカは父を殺すことは免れたようですが、佐伯さんが母かどうかはわかりませんが、佐伯さんの思い出の中の少年になって佐伯さんと交わり、母なるものの優しさを得たことになったのではないかと私なりに解釈しました。

また、深読みかもしれませんが、佐伯さんは田村カフカのお母さんだったのではないかと思いました。

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