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『長い時間をかけた人間の経験』林京子著ー長崎被爆で被爆した魂の遍歴

1945年8月9日長崎で被爆した著者と同じ体験をした友人などのその後の心や体の異常を交えながら書いています。

長崎県立長崎高等女学校3年で、三菱兵器工場に学徒動員中に被爆しましたが、その当時は女学生はほとんどが学徒動員で兵器などをつくらされていたようです。

原爆体験をモチーフにした作品が多く、様々な賞を受賞しましたが、『長い時間をかけた人間の経験』は野間文学賞を受賞しています。

原爆を特化する姿勢があるとして、中上健次に「原爆ファシスト」と呼ばれたことがあるようですが、日本が犯した戦争時の事柄とは別に、唯一の戦争被爆国として、語り継がれていくべき物語だあることには変わりがないと思います。

2017年2月19日86歳で死去していますので、被曝経験者が少なくなって行く現在、忘れることのないように私たち戦争を経験していない世代が語り継ぐ役目があるように感じます。

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『長い時間をかけた人間の経験』のあらすじと感想

生死も分からなくなった、被曝者の友人のカナが行きたいといっていた遍路を思い立ち、カナの「江戸小唄」の名取の名が入った手ぬぐいに御朱印をいただく旅に出ました。

被爆者は他の人には分からないような、体の異常や心の異常を抱えているようです。カナも夏になると毎年うつ病になり家にこもり、秋には起きることが出来るようです。

新聞社の若者との1日目の札所巡りから話は始まりその後一人で32ヶ所を歩きながら、被曝の日をからの苦しみを生き抜いていた様々な人の生き方を語るというかたちで、被曝という現実と向き合うことになります。

私もかなり前になりますが、長崎の原爆記念館を訪ね、一瞬の間に焼け野原となり、死人が横たわった町の様子を写真などを通してみたことがありますが、まさに地獄絵のようだったのを忘れることが出来ません。

原爆を落としたアメリカを憎む気持ちばかりでなく、戦争のむごさと恐ろしさを感じることが多かったその時から70数年、世界は戦争のむごさを忘れようとしていますし、被爆国である日本政府も、核禁止条約に参加していません。

今まさに、被曝の恐ろしさも戦争のむごさも忘れ、戦争に参加しようという空気さえ感じるような日本で、私はこのような被爆者の現実を語り継がなければならないと感じています。

8月9日を生きながらえた人も、ガンの発病で亡くなる方、精神を病んで亡くなる方、結婚を反対される方、子供を持たない人生を選ぶ方、子孫にまで影響を与えかねない細胞の異常におびえたりと、その後遺症は限りなく深いものがあります。

その被曝が、どのような影響を受けるかは未知のものである分、心の傷は大きくなるようです。いまだに医学的に解明されないことが多い現状の中で、不安は大きくなるようです。

そのような心の傷ばかりでなく、火傷のケロイドを持ちつつ生きなければならない苦しみはあまりあります。

ある方は、家族を失い、生きるために体を売ってお米を買わなければならないといいます。疲れやすい体は、普通の仕事さえできないのです。

被爆者でなくとも、そのような苦しみは生きているものにはありうることでしょうが、被爆者はより多くの方を苦しめることになるのです。

32ヶ所の札所巡りをしても答えは何一つ出なかったというように被曝をして生きていることはもちろん、それはどのような状態であっても戦争を止めることのない人類の悲しみを私たちは負いながら生きなければならないのでしょう。

トリニティからトリニティへ

トリニティはアメリカ合衆国が原子爆弾の実験を初めて行った場所であり、その後、広島と長崎に立て続けに落とされることになるのです。

アメリカに嫁いでアメリカで暮らしている月子と一緒に原爆実験を行ったトリニティを訪ね詳細を書いています。

世界には核保有国もありますが、もし戦争で核が使われるようなことがあれば、人類の滅亡になるでしょう。抑止力としての保有なのでしょうが、そのようなことをしないでも暮らせる世界の平和を願ってやみません。

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