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『ダンス・ダンス・ダンス』村上春樹著ー鼠4部作の完結編

この小説は、1988年10月発売で、村上春樹の6冊目の長編小説に当たります。

私は、村上春樹氏の小説との出会いが遅く、後期作品から読み始めているので、初期長編の3部作と言われる小説は後期の作品から読みましたが、どこかしらで前作からのつながりを持つ作品であることを知り、初期作品から読めばよかったと思いました。

その点、『ダンス・ダンス・ダンス』はそれまでの5冊の長編小説を読んだ後なので、最初から物語の世界に入っていくことが出来ました。

その間に『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、そして全世界的大ヒットとなった『ノルウェイの森』が入っているが、1982年10月に出版された『羊をめぐる冒険』の続編のような立ち位置になっていて、作者が後書きで、主人公の「僕」は『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』の「僕」と原則的には同一人物であると書いていることから、その小説を読んでいることは物語を読む上でかなり理解度が深まりました。

『ダンス・ダンス・ダンス』のあらすじと感想

『羊をめぐる冒険』で一緒に北海道に行き、いるかホテル(ドルフィン・ホテル)を選んだ高級コールガールのキキを探しにそのホテルに予約を入れて行ったのだが、あの寂れたいるかホテルは、26階建ての立派なホテルになっていて僕は驚きます。

その立派なドルフィン・ホテルで羊男に出会い、ユキとアメ母子、ユミヨシさんと出会い、それらの人と僕の物語が展開していきます。

あらすじーユミヨシさんとユキと僕をつなぐ羊男

ホテルのカウンターで応対してくれたユミヨシさんに好意を抱くようになりました。この近辺は地上げ屋が買い上げて、町がかなり変わったいました。いるかホテルは立ち退きを最後まで頑張りましたが、ドルフィン・ホテルという名前にすることで折れ、今はどこにいるのかさえ分からないようです。

このホテルには、いるかホテルの霊のように羊男が住んでいるようで、ユミヨシさんからそのホテル内の16階での奇妙な体験を聞いた僕は夜中に何度か確かめた結果、羊男に出会うことが出来ました。

羊男は言う。「ここがあんたのための場所だと」そしてあんたも、おいらもここに含まれている。みんなここに含まれている。そしてここはあんたの世界なんだ。

そしておいらの役目はつなげることだよ。配線板みたいにいろいろなものを繋げてておくんだ。ここは結び目なんだ。あんたが求め、手に入れたものを、おいらが繋げるのだ」と。

「音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ。おいらの言っていることはわかるかい?踊るんだ。踊り続けるんだ。何故踊るかなんて考えちゃいけない。意味なんてことは考えちゃいけない。意味なんてもともとないんだ。そんなこと考えだしたら足が停まる。一度足が停まったら、もうおいらには何ともしてあげられなくなってしまう。あんたの繋がりはもう何もなくなってしまう。」・・・・・・・・

でも踊るしかないんだよ」と羊男は続けた。「それもとびっきり上手く踊るんだ。みんなが感心するくらいに。そうすればおいらもあんたのことを、手伝ってあげられるかもしれない。だから踊るんだよ。音楽の続く限り」

村上作品の特徴はメタファーが多くそれが読者にも想像力をかき立て、いろいろな読み方が出来るのですが、この作品も例外ではありませんが、村上作品にしてはわかりやすいと思います。

冬の北海道、冬晴れの東京、ハワイと移り個性的でとても素敵な女性たちとの出会いの中で、不思議に多くの人の死に出会うことになります。それが入り口から出口に向かうように。

ホテルのバーで10時過ぎまでウォークマンをつけている美しい少女に出会うが、母親の写真家のアメはユキを忘れて帰ってしまったといい、僕が東京まで同行することになります。学校にも行っていないようでとても感受性の強い変わった女の子だが、友達になりドライブををするようになります。

ユキに誘われて、母親がいるハワイに行くことになり、そこでキキを見かけ、つけていった場所に誰もいなかったが五体の白骨の死体がありました。

ハワイでは泳いだり、サーフィンをしたりして楽しみ、ユキの母のところに訪ね、母と暮らしている片腕のデック・ノースに会います。彼はベトナムで地雷で片腕をなくしたと言います。

探していたキキはある日、友人で俳優になっていた五反田君が、キキと一緒に出ている映画を見て、五反田君に連絡を取るが五反田君もキキの行き先は知らないと言います。

ユキと一緒に五反田君とキキが出ている映画を見た後、キキは気分が悪くなり、五反田君がキキを殺したが、とっても穏やかな死に方だったと言うのです。

五反田君は様々な悩みを持っていてどうしようもない生き方をしていたが、僕は長いこと五反田君に会うことを避けていたが、五反田君が訪ねてきて飲みながらいろいろ話すと、キキを殺したかもしれないがはっきりと記憶にはないという。

ほとんど壊れていた五反田君はその店で僕がビールを買いに行っている隙にいなくなり、海に沈んだ五反田君が見つかります。

ユキの母の恋人が車に跳ねられ亡くなり、僕も取り調べを受けた五反田君が呼んだ高級コールガールのメイが絞め殺され、僕の周りでは次々と人が死んでいきます。

ハワイで見た腕のない白骨はデック・ノース、メイ、キキ、鼠、後一体は誰になるのだろうと僕は心配になります。

そして、ユミヨシさんに会うために北海道に行きますが、ユミヨシさんは休暇をとっていると言うことでした。

僕は戻ってきた、ユミヨシさんと意気投合することが出来、村上作品の中では珍しくハッピーエンドでこの物語は終わります。

ユミヨシさんが、壁を寝桁夢を見て、とても心配になりましたが、夢のでした。ユミヨシさんは「そんなに簡単に非地は消えないのよ」と言った。5人目は羊男だったのではないだろうかと僕は思います。

朝がきて、羊編の作品は終わり、村上春樹は次の物語へと旅立ちます。

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『ダンス・ダンス・ダンス』の感想

『羊をめぐる冒険』で大切な友人をなくし、キキが消えて生きる意味を失っていた僕が、『ダンス・ダンス・ダンス』で様々な試練に合いながらも羊男と会い、踊ることで生きる素晴らしさを見いだすことが出来た物語だと思いながら読みいました。

感性豊かで妖精のような12歳のユキとの出会い、自分のことに夢中で子供のユキを置き去りにして外国に飛んで行ってしまうような才能豊かな写真家のユキの母アメ、ユキの父、同級生で俳優になっている五反田君、コールガールのメイなどとの個性的な出会いの中で僕は踊り続けて生きる意味を見いだしていくのです。

その中でも、ユミヨシさんで出会ったことは、未来の生へと繋がっていきます。

村上作品はメタファーが多く、いろいろな読み方が出来るのが特徴ですが、文章はとても読みやすくかなり長編でも苦労なく読むことが出来ます。

生きることの意味を、深く問い直し、希望を与えてくれる名作だと思いました。

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