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『春琴抄』谷崎潤一郎著 |マゾヒズムな愛を描く

昭和8年に「中央公論」には発表されたようですが明治時代を背景にした春琴と春琴の身の回りの世話をしていた佐助の物語です。

谷崎潤一郎の小説の数編は若いころに読んだことがあり、春琴抄を読んだ記憶もありますが、目を針で刺して盲目になる場面ははっきりと覚えているものの詳細はおぼろになっていました。

この小説を読んで、長編「細雪」や「痴人の愛」など時がたった現在の心境で読んでみたいと思っています。小説は年齢やその時の心の状態などによって読後感が変わるので気にかかっている小説は何度も読んでみたいものです。

谷崎潤一郎の小説は耽美的であり、文体もかなり個性があります。

今回読んだ「春琴抄」はほとんど句読点がなく、どこで切れるともない文章を読み継ぐことになりますが、それを読ませることができるのですから文豪の名にふさわしい小説家なのでしょう。

何度かノーベル賞の候補にも挙がったようですが受賞することが無かったようです。

三島由紀夫などが推薦しているようですが、三島由紀夫もノーベル賞候補作家であったようです。

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春琴抄のあらすじと感想

薬種商鵙屋の次女春琴(琴)は、とても美しく、見る人たちが驚くようなな美しい舞を舞ったというが、9歳の時眼疾により見えなくなってしまったと言います。

そのことから、舞をあきらめ琴三弦を学ぶようになり、難しい音曲もこなし人に抜きんでいたということです。

春琴の稽古に付き添い、身の回りの世話をしていた丁稚の佐助はかなわないだろう思いに、お金を貯めて三味線を買い独流で習っていたのが知られて、春琴に教えてもらうことになります。

佐助が丁稚に上がった時には春琴が目が見えなくなった後で、春琴が目が見えた時の美しさを知らないと言い、目の見えない春琴しか知らなかったことが良かったと言いますが、春琴も佐助の顔は知らなかったことになります。

子供心に春琴に思いを寄せていただろう佐助は春琴の厳しい稽古にも泣きながら付いていったが、まわりや親たちが見かねて、春琴の師匠に師事することになり佐助は世話をしながらも兄弟弟子になります。

そんな折、親は春琴と佐助を結婚させようとするが、春琴は丁稚の佐助などとは結婚しないと言い張るが、妊娠していることが分かり問い詰めても、2人とも相手を言わぬままに生まれた子は佐助そっくりだったと言います。

それでも結婚を嫌がる春琴なので、生まれた子はどこかにもらわれていったということです。

その後、2人の中は誰が見ても明らかであったものの春琴は結婚することを阻みとおしたようです。

春琴が20歳になり、師匠が亡くなったのを機に三味線奏者として独立し、佐助が身の回りの世話をするためについていきます。

春琴は弟子を取るようになったが厳しすぎて、長続きしないものが多かったので収入はないに等しく、鵙屋からの援助で生活していたが、使用人も多く、小鳥を飼い贅沢な生活だったために生活は大変だったと言います。

芸のためよりも春琴の美貌を目当ての弟子もいたが、稽古はかなり厳しかったことから反感を買うこともおおかったのではないかといわれれ、その中に利太郎という名家の息子に、厳しく教えでけがをさせたしまったといいます。

その1か月後の夜に春琴は何者かに顔に熱湯をかけられて火傷を負わされてしまうが、包帯がとれるようになっても誰にも顔を見せるのを嫌がり佐助も近づけようとしません。

思い余った佐助は両目を針で刺し、目が見えなくなってその後の春琴に寄り添いかいがいしく面倒を見たと言います。

その頃は春琴の親も亡くなり本家の援助も途絶えがちになっていたので、師匠の春琴から温井(ぬくい)琴台と名乗ることを許されていた佐助は門弟を取り教えて生計を立てていたが、春琴が教えていたころより門弟は多かったという。

目が見えなくなってからの二人は寄り添い心が通うようになり、佐助は目が見えなくなってからの幸せを、内弟子に入りこの家のことを佐助から聞いてきた輝女に言ったようです。

その後も結婚はしなかったが、佐助が春琴に仕えたやさしさは比類なきものだったとのことで、火傷は災難でしたがそれによって得ることの方が多かったと谷崎は書いています。

春琴は37歳の時に災難にあって、佐吉も眼が見えなくなっているので、亡くなったのはそのようなことがあった20年も過ぎた58歳でした。

かいがいしく春琴のそば近くで世話をした佐吉は春琴が作曲したという楽曲を奏で、春琴を思いながら21年後83歳で亡くなったと言います。

美しい盲目の春季に思いをはせていた佐吉はしいたげられながらも片時も離れることもなく恋を貫いたことは外目はどうであれ本人が幸せと言うのだから幸せだったというべきなのでしょう。

災難を乗り越えた春琴の音曲は苦難を乗り越えたものの響きがあり、恋愛においても変化を見せたようですが、佐助は目が見えていた時の春琴を思うばかりだったようです。

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