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『夏物語』川上未映子著

『夏物語』は川上未映子の作品『ヘヴン』に次いで2冊目に読んだ作品です。

わたしの好きな作家はそれぞれに個性的であり、それに惹かれて何冊もの作品を読むことになるのだが、作家の力量作家について作家についてある程度書いている人の文章を読んでいましたが、これだけ読みいやすい文章で読者を引きつける才能はすごいと思いました。

所々に出てくる大阪弁が功を奏して、読者に親しみを感じさせ嫌みの無い物語を醸し出します。

冷静に自分を見つめ、切れ目のない長編を読ませる才能は冷静に物を見ることが出来るからだと思いました。

俗に陥りやすい内容を消化させることが出来るのも才能なのでしょう。

『夏物語』のあらすじと感想

人間は自分の意思でで産まれると言うことはあり得ず、気が付いたときに徐々に性という物を感じながら成長することになります。

そのような成長過程を素直に受け入れて過ぎることの出来る人もいれば、その中で多くの迷いや悲しみを受けることになる人も多いのが現状だと思います。

裕福な家に生まれても幸せを感じない子供もいるのでしょうが、選んで生まれたわけでもないのに、様々な悲しみを感じながら生きて行かざるを得ない人も沢山います。

人工授精により父親が誰かも分からないままに成長する子供たちもいます。

誰一人として同じようには成長できない子供という存在は子供の意思とは関係なく、親を選ぶことも出来ずに生きる他はないと言うことはとても不思議なことだと思います。

そのような子供に出会いたいと悩んだ末に出会うことになるものがたりだと読みいながら思いました。

『夏物語』のあらすじ

2008年の夏の前編は芥川賞作品の『乳と卵』と同じような内容と言うことだが、わたしは読んでいないので、後で読んで見たいと思いました。

それから歳月が過ぎて2016年夏~2019年夏にと飛ぶのだが、姉の巻子もその頃小学生で筆談でだけで何も話さなかった姉の子の緑子も大学生になっています。

わたしは担当の編集者の仙川さんが何も言わないのをいいことに、小説もはかどらないなか、結婚する相手もなく、性交も出来ない自分ではあるが、年齢的な物も考えると新しい命である子供に会いたいという気持ちを抑えることが出来なくなっていました。

ネットを利用して、いろいろ調べているうちに逢沢さんという、本当の父親を捜している方や、そのような人たちの会合があるのを知り出てみたりしていました。

一昔前の男社会であれば、女性が子供を産むのは当り前であり、生まない自由など有りませんでしたが、現在は男性であれ女性であれ、生むことや生まないことを選択していますし、それらを含めて自由に生きる権利が一応あると言うことにはなっています。

貧困や介護などその選択さえできない人が多くいることも現実ではあり、それらも含めて思うような生き方を出来る人の方が少ないと感じますが。

その中で、夏子は困難を打ち破りながら、結婚と言う道と自然な妊娠を選ばず、心から愛する逢沢さんの子供を産むと言う偶然にしては幸せな選択をすることが出来ます。

何年くらい前になるだろうか。わたしも逢沢さんのように自分のルーツを捜している人の苦しみの言葉をどこかで聞いたことがあったことを思いでしていました。

それは根無し草のような物なのかもしれませんが、その人の立場に立って見ないことにはその痛みは分かりません。

しかし、夏子と知り合ったことで、逢沢さんは育ての父親が生きている間に本当の父はあなたですと言わなかったことを後悔するのです。

そのような様々な人生の選択肢の中を迷いながら夏子が選ぶ、女性としての生き方は今後の社会の中で増えていくのだろうと思うと、この物語は多くの方に目をとめて戴き、思考の一助となれば良いと思いました。

わたしも、このような道を選んだ夏子を自分に重ね合わせているような思いで読みました。

『夏物語』感想

深く考えないで、結婚し子供を産むことが普通に考えられていた時代は女性が活躍するようになったことと、社会の格差の中で難しくなったのだろうと思っています。

出会いもないままに結婚したくても出来ない人、結婚したくない人、子供を持ちたくない人、晩婚化など様々な事情が絡み合い、避妊治療をする人たちも増えてはいるが、少子化は年々増えているようです。

わたしは主人公の夏子のように結婚しないで普通に子供を産むことが出来る社会をずっと前から、今でも願っています。

それには、女性の経済力が必要だし、社会的に認められることが何より大切なのだろうとは思います。

その反面、子供を持たない決心をした夫婦が、パートナーとして生きられる社会も素晴らしいと思えるし、そんな自由な社会が普通になることがこの社会にやってくるのだろうかと期待しながら生きています。

そのような問題提起をしている小説だと思いながら読みました。

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