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『生きるための経済学』安富歩著ー〈選択の自由〉からの脱却

『生きるための論語』『生きる技法』『原発危機と東大話法』に次いで『生きるための経済学』を読みました。

いずれの本も今までに沢山の学者が書いたものを読み、それを安富氏自身の独自性を加え、それを提示するという方法で書かれています。

私は「経済学」は素人ですが、社会を見据えて書いていることに好感を持って読むことが出来ました。

しかし、内容はかなり難しくまとめるのに苦労しました。何度も挫折しながらの読後感です。

『生きるための経済学』のあらすじと感想

2008年3月30日に第1刷を発行、2021年1月15日第8刷を発行したロングセラーです。

2008年にこの本が書かれた当時はほとんど経済学に興味を持っていなかったので、経済についてはずぶの素人ですが、主に日本経済の現状の危機的状況、「素人が紙幣を刷って配れ」とSNS出つぶやき、消費税廃止論を展開するのを見て経済にわずかばかりの興味を抱きました。

しかし『生きるための経済学』はそのようなことを想定して書いている本ではありません。

序章 市場の正体ーシジョウからイチバへ

経済学ではシジョウとイチバを分けて考えているようだが、著者はそれらをイチバという考え方に基づいて現在社会を生きる私たちの「生きづらさ」の正体に迫ろうと考えているようです。

第1章 イチバ経済学の錬金術

経済学を物理学から導き出そうとした先人たちの書物から著者は現在経済学の非科学性を確認します。

その上で、市場経済学が様々な課程の上に成り立っているが、それを解明することは難しく、それは人間のあり方そのものに関わるものであり、より深い普遍性を持つものであると考えるに至ったと書いています。

第2章 「選択の自由」という牢獄

「選択の自由についてアメリカの哲学者フィンガレットが述べていることを書いています。

人間の意思決定は、意識と無意識の双方によって実現されており、「こうしようと」という形で決断するのではなく、「そうなってしまう」という形で決断すると言います。

それ故、自分が無意識におこなったことを含めて反省し、自分のあり方を改めることが「責任をとる」ことの真の意味だと言います。

そして責任をとるべきは、過去についてではなく、今の自分自身についてだとしています。

エーリッヒ・フロムは、ヒトラーについて、人間という生きものの持つ自己欺瞞の能力は驚くべきもので、全世界を戦渦に巻き込み、何千人という人間を死に追いやるような深刻な欲に、本人がうっかり気づかないでいることができることについて「人間の自己欺瞞の巨大の能力」を正面に据えて考えることが、人間を考える上で重要であることを指摘したといいます。

また、ドイツの作家ミヒャエル・エンデが書いた『自由の牢獄を』から西洋的な「選択の自由」とは「神の御意に従う自由」であることを著者は書いています。

第3章 近代的自我の神学

西洋思想は人間の自由を「選択の自由」であると捉えられているようです。

それ故、人間の自由について語るとき、選択の概念なしで済ますことはほとんど不可能のようです。

西洋の思想を考えるに当たって、キリスト教なしには語ることが難しいという、その考え方を多くの知識人の意見を元に導き出していくのだが、その導き方を読んで理解しまとめるだけの力は私にはないと感じてしまいました。

その中でも、スミスが「国富論」において、「文明社会では、各人がいつでも無数の人の協力と助けを必要」としているがその助けを得るためには、「相手の利己心に訴える」のが最善であるとし、それは虚栄心のことであり、経済人はこの利己心に追い立てられて、果てしない努力を続けるとするところに納得がいきます。

選択の自由への希求は、「神の御意」を果たすための障とりとり除き、均衡点を実現しようと努力で、選択の自由とは、実はこのような自分を失った人間の「自由」であると書いています。

懐疑主義の極限的状態に陥ったニヒリストは、不安定であり、そのことによりヨーロッパにおけるファシズムとマルキシズムが蔓延することになったと説きます。

第4章 創発とは何か

ポラニーは下記のように「創発」という言葉について考えています。

科学知識は、暗黙知の作動によって獲得される。

以上が、ポラニーの暗黙知論の骨子である。その上で、ポラニーは話を進化にまで拡張し、適応度を上昇させるようなたんなる探索過程と、これまでに存在しなかった機能を生命が見いだす過程を区別し、後者を「創発」と呼ぶ。

116ページ

その後に、ポラニーと正反対の思想を形成したチューリングという数学者について論じていきます。

チューリングはコンピュータを用いて、適切なプログラムをテープ上で実装すれば、いかなる機械の振る舞いをもシミュレーションできる「万能チューリング・マシン」が可能であることを示しました。

また、チューリングの業績は人工知能の基礎を築いたことにあるようです。

そして著者は、この方向の探求は創発の否定を目指して行うべきだと言っています。

その上で、何が協同現象に過ぎず、何がその残余として残るのか。そうすることで生命の持つ暗黙の能力の範疇が間接的に明らかになり、それが創発のようです。

第5章 生命のダイナミクスを生かす

コンピューターの人工知能はめざましいものがあるが、人間同士のコミュニケーションはとても複雑であり、計算では計れず、まさに創発的な計算の素晴らしさを感じさせてくれるのではないかと思わされます。

人間の感情は様々なものを学び、その上でそれぞれの人が間違った考え方になっていくこともあり、気づかないうちにハラスメントを受けたり、相手に対してハラスメント働いていることもある可能性もあるようです。

複雑な人間の感情によって、私たちは幸せになったり、不幸を背負ったりしているのかもしれません。

それを上手に生かすことが出切れは、幸せになれるのかもしれません。

第6章 「共同体/市場」を超える道

フィンガレット、フロムは論語の道という概念から人間存在の本質を、「必然的に存在を維持しようとする力」に求め、その必然的論理にしたがって存在することを「自由」と呼んだ。自由とは、生命の持つ本来のダイナミクスで自分自身のダイナミクスに生きることだと書いています。

そして筆者は次のように結んでいます。

現代の人類の直面する最大の問題は、際限のない消費の拡大による環境破壊と、想像された共同体をめぐる民族問題である、といっても間違いなかろう。前者は「選択の自由」と、後者は「共同体」の幻想と密接に関係している。

185ページ

第7章 自己欺瞞の経済的帰結

自己欺瞞という人間について書いているが、良い大学に入り、社会的に認められる地位について財産を築こうとすることは自分が求めていることもあるが、多くの子供は親から、あるいは大人たちから教え込まれたために信じきって頑張って大人になり、自我を失い、日々自己欺瞞のなかで多くの人が生きていると書いています。

自我を失った人間は執拗な不安に常時さいなまれ、その不安を紛らわすために財産・名声・権力をもつことで、それは利己心故に虚栄であり、その虚栄は激しい消費によって経済活動の中で上昇と下降を繰返すためバブルが産まれると言います。

また、その不安を紛らわすために、仕事依存症やアルコール依存症も生まれ、それらはパラスメントに繋がる可能性も述べています。

人間を自我の失った自動人形にし、世代から世代へと連鎖して再生産されることから、それを停止することが、人類が破滅から逃れるために必要だと書いています。

終章 生きるための経済学

終章は今まで読んできた、自愛を次のようにまとめています。

自愛→自分自身であること(忠恕)→安楽・喜び→自律・自立→積極的自由→創発

これは、『生きる技法』に取り上げられていたことで、著者の生き方に関わる問題だと思いました。

『生きるための経済学』感想

経済学を様々な分野と沢山の著書から問い直しています。

私には経済学の本を読んでいると言うよりは哲学書を読んでいるような気分で、興味はありながらもかなり難しく、どこまで理解できたのかさえ分からない有様です。

ここに書くことを何度も止めようと思いましたが、書くことにより理解しようと書いてみましたが、それでも理解不足の感は否めません。

ここに書いてあることはすべて私の感じたことであり、著者の意向とは異なっていることも多いと思います。

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