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『ヘヴン』川上未映子著

2009年9月に発行された小説なので十数年前に発行されたことになります。

2008年に『乳と卵』で138回芥川賞を受賞して、翌年にこれほど感動的な作品を書くのですから、才能のある作家なのでしょうが、わたしは著者の作品は初めて読みました。

あくまでも気分次第なのですが、芥川賞の作家の小説をいち早く読んだり、あまり読まなかったりとその時々の気分が大きいように思います。

芥川賞をとってもその後あまり小説を書かなくなる作家などもいるのですが、2作目に書いた小説がこれほど感動的なのはよほど才能のある作者なのだろうと思いました。

実は、昨年眠れない夜に「Kindle Unlimited」で朝まで聞いていて、本で読んでみたいと思いその後購入して読んだものです。

『ヘヴン』のあらすじと感想

調べてみたら、2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。など受賞していて、素晴らしい作品を残していることが分かりました。

村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』、『すべて真夜中の恋人たち』など読んで見たい作品が多いことを今になって知りました。

多分、しばらくは川上未映子の作品を読むことになるだろうと思いました。

『ヘヴン』のあらすじ

斜視の僕と風呂にも入らず不潔にしているコジマがクラスのいじめの対象になっていました。

ある日、僕の筆箱の中に〈私たちは仲間です〉と書かれた紙が入っており、それを書いたのがコジマであり、母が離婚後離婚後お金持ちと結婚して、母にかわいそうだと言われたドロドロの靴を履いていた父を忘れないために汚い格好をしているというコジマ。

コジマのそれがしるしであり、僕のしるしは斜視であることと言うのでした。

それで2人はクラスの中で壮絶ないじめにあうのだが、コジマはいじめられるのは辛いが、その先にはいじめている人たちのは分からない、いじめに耐えた後に待っている素晴らしい場所や出来事があるという。

わたしにはいじめのすさまじさを実際に見たこともされた経験も無いので、実感としてこれほどのいじめがあるのだろうという驚きを感じながら読んでいたので、これは作者の表現の問題として読み過ごしたのだが、この小説はそのような現実を超えたところに読んでほしい哲学とも言うべき問題が底辺に流れていて、読者ひとりひとりに問題提起をしているのだろうと感じながら読みました。

百瀬の言葉からも百瀬が抱えている問題があるのかもしれないし、流れやすい心を持った人間の集団と、悩みながら生きている人たち、それらの人たちの心の深さや闇を捉えていじめという問題を超えたところに私たちの生き方を問ういているのかもしれません。

あらすじを書き始めて、改めてあらすじを書くことの無意味さを感じました。

『ヘヴン』の感想

学校ばかりではない、いじめの問題を文学としてどのように扱うかはかなり難しいと感じました。

しかしこの作品はその難しさを平易な言葉でわかりやすく書きながらも文学として昇華させた技巧は素晴らしいと思いました。

痛みを感じながら、分断の多い社会を生きている方たちに生きる意味を感じさせてくれる作品だと感じました。

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