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『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』田中信一郎著

著者、田中信一郎氏は千葉商科大学基盤教育機構准教授です。国会議員政策秘書、明治大学助手、内閣府、内閣官房、長野県自然エネルギー財団などを歴任し、現場を見てきた経験から、少子高齢化時代の現在の政策を政権交代してどのようにしたら良いかという提案をしています。

少子高齢化が進むのがわかっていながら、それ以前の政策を変えようとしない安倍政権が7年以上も続き、一向に良くならないばかりでなく、悪化の一途をたどったいることへの警鐘として私は読みました。

野党も乱立して、経済成長をMMTで、改善しようという「れいわ新選組」が台頭し注目を集める中、国民はどのような政策を支持するかの迷いもあります。

1強となった安倍政権は、長期政権故か、お友達優遇政治を改めない中、マスメディアも政権の顔色をうかがい、悪いことも報道しなくなってしまったために、国民は知る権利も失われ、政権支持率が下がらない中で、1部の国民は政権交代を願ってSNS などで訴えていますが、隠蔽、改ざんと悪いことは国民に知らせない状況の中で、少数野党はとても頑張っています。

そのような野党に政権交代したときに、人口減少、少子高齢化社会をいかに幸せを感じられる国にしたら良いかという、提案をしているのがこの本の主要な提言です。

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『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』のあらすじと読後感

    • この本は次の五章からなっています。
    • 第一章 何故人口減少しているのか?
    • 第二章 何故人口減少をもたらす経済になってしまったのか?
    • 第三章 何故過った経済政策を続けてきたのか?
    • 第四章 政治を変えれば経済は良くなるのか?
    • 第五章 どのようにして低成長と人口減少に適応するのか?

第一章 何故人口減少しているのか?

人口が増え始めたのは明治以降の近代化により急激に増え始めたようですが、今では考えられないように人口増加は貧困や失業問題なども人口増加に起因すると思っていて、海外への領土拡張や移民送り出しへとつながっていました。

それが戦争へと向かうことになり、戦後はベビーブームで人口が増え続けたために家族計画で人口を抑制することになります。

その後、池田勇人の所得倍増論により人口増加は、経済と社会を発展させてきました。

そして、現在の経済と社会のシステムは人口増加を前提として構築されているため、人口減少により生活水準が低下し、国家の存続すら危うくなっていますが、現政権の政策からは口先だけの政策だけしか見えてきません。

人口減少の直接的な原因は出生数と出生率の低下にあり、1970年代半ばから始まっていたのですが、政府の対応が遅れたのは一時的な現象という楽観論のためだと言います。

現在も、希望出生率はそれほど変わっていないようですが、出生率との乖離は年々高くなっています。それらは結婚年齢が高くなったことと、未婚率が高くなったことによるようです。

近年の未婚率の高さは非正規雇用が多くなり、雇用の不安定と定収入が関係しているのではないかとみていますが、私も同感です。

また、出産に対するハードルは個人の意識でなく、社会にあり、教育にお金がかかり過ぎるという問題があります。

政府は少子化対策を取り組んでいますが、的を外れた対策が多く、解決されそうな見通しも見えません。

また、大都市集中も少子化を助長することになっています。

それらは依然として、既存の経済構造とそれを重視する経済政策が、少子化、人口減少の主因になっているからのようです。

今後の問題としては、既存の経済政策をを守って永遠の人口減少を受け入れるのか、将来的な人口の定常化を目指して経済構造を変革するのか、二者択一の状況だと結論づけています。

最後に、その上での子供の社会保障をどうするかという論考を書いています。

第二章 何故人口減少をもたらす経済になってしまったのか?

戦後の経済は圧倒的な供給不足から始まりましたが、大蔵省を中心とする経済官僚が影響を増し、占領期の大半で首相を務めた吉田茂は、池田勇人ら経済官僚を政治家に転身させて、経済運営をになわせました。

軍需から民需への産業転換を主導したため、1950年代に入ると経済と国民生活は安定し始めました。

その経済路線が1960年に発足した池田政権の「国民所得倍増計画」により高度経済成長の呼び水となり、軍事を重視した岸信介が倒れた後の、高度成長の成功体験は日本の経済構造と人々の経済観の原型になりました。

その後、ドルショック、オイルショックによりインフレを加速させ日本の経済は、成長路線か、分配路線かという大きな岐路に立ち、1973年は福祉予算の大幅拡大で「福祉元年」と呼ばれ、分配の時代に入ったと思われました。

しかし、第一次ベビーブームの人たちが成長して子供が生まれた頃は消費需要も大きくなり結婚、出産、住宅や自動車の購入、子供の教育など家計から最も支出する時期になり、政府は単なる好景気と誤認しバブル発生を認識するのが遅れていまいました。

そしてバブル崩壊の現実は株安から始まり、土地の価格が下がり、巨額の不良債権をほとんどの金融機関が抱えるようになりました。

バブル崩壊後の経済政策はアベノミクスの前哨戦だった経済政策となり、所得税の減税(最高税率が70%)から徐々に下がり、消費税増税の根拠になりました。

金融機関から国債を購入して市中の資金量を増加させようとする量的緩和策を実施することになりました。この時期はゼロ金利政策で金利を下げる余地がなかったためです。

次の政策は規制緩和と民営化で、非正規雇用が増え、現在に至っています。

政官財の総力であるアベノミクスは大成功を収めているように見えますが、デフレ目標の2%も道半ばであり、非正規雇用が増えたことで、貧富の差が大きくなり、低所得者が増え経済は冷え込んでいます。

実質賃金の低下は人々の生活を苦しくし、個人消費を低迷させています。これは人口構造の変化ががもたらしたもので、少子高齢化による個人消費が減った事による生産活動の縮小により、地方から人口流出を増やし、地方の空洞化を招いています。

また、高齢化に伴い、社会的な課題の増加が年々社会保障費を増やしています。生産年齢人口の減少と高齢人口の増加によって、現行の社会保障では、年金支給額の減額などは避けられない状況になっています。

今後の政策は人口増加を前提としたすべての政策を、人口減少を前提とする政策に転換する必要西なければなりません。

これまで、経済成長に必要なのは、高度な科学技術と豊富な資源、少数のエリートと多数の安い労働力、均質性の高い社会と考えられてきましたが、40年以上も景気対策を打ち続け、少子化で人口すら犠牲にしてきたものの、自律的な経済成長を実現できていないのです。

そうであれば、人々の想像力と協力を最大限に引き出せる社会を作ることが有効な経済政策となると作者は書いています。人口、国際、技術という経済の前提条件はこれまでと真逆に変わることにあります。

アメリカの研究で経済成長を目指さない事で、結果的に経済が成長するという逆説が示唆していると言うことです。

筆者はMMTには懐疑的であり、現状においては10%にあげた消費税は8%に戻すべきとの考えのようです。

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第三章 何故過った経済政策を続けてきたのか?

経済成長と人口増加を前提とする部分最適の行政のため、機動的、一元的に対応できますが、経済の低成長と人口減少のように組織と政策の論理が前提から覆る状況では的確に対応できないと言います。

いわゆる現在の部分最適を前提にした内閣システム集合体である事から自民党は抜け出すことが出来ていません。

安倍政権の前に野党は二度政権を取ったが、準備不足のままだったことにより短期政権に終わりました。

そして、安倍政権と引き継がれ、様々な問題を起こしながらも支持率の下がらない不思議な政権になりました。これについては、いろいろ推測出来るように、幾重にも支持されるような日本の構造が見えてきます。

そして、少子高齢化社会の現在においては、既存の経済と当時のまま経済成長することを目指している政権ではもはや無理で、個人の幸福追求を目指している、野党と政権交代をして経済政策をしなければならという考えにたっています。

しかし、安倍政権が経済成長のために個人を犠牲にすると国家方針を明確にしているのに対して、野党はまだまだ方針を明確に出来ていないと言います。

そのような中においても、野党は対話を重ね、選挙制度などを通じて、どのような政策が必要かなどの方法論を提案しています。

第四章 政治を変えれば経済は良くなるのか?

政治を変えても、エリート主義・パターナリズムを乗り越えなければ経済成熟と人口減少に適応した社会には転換できません。

子供の数が少ないのに、待機児童が多いのは、大都市への子供の移動と低所得化や男女平等により、専業主婦モデルが崩れて保育園需要が増加するところへ、局所的にマンションが急増し、待機児童問題を社会問題化と考えています。

それは、都市計画が緩いことから起きている問題であり、コントロール出来るのではないかと言います。

大都市集中化によるリスクを減らし、地方の活性化とエネルギー問題を考えて住宅を効率的に建てるような住環境を整えることを提案しています。

これらはそれを実行する政権が出来ることを前提としての作者の渇望のようなものですが、将来的な日本のモデルとして好意を持って読むことが出来ます。

日本列島改造論により、日本は地方への交通網は出来ているのですから、それらを生かせば地方の豊かさを再現できるのではないかと思いました。

そして、それらを実現する政治家は野党しかいないと書いています。野党に頑張っていただきたいと願ってやみません。

第五章 どのようにして低成長と人口減少に適応するのか?

戦後の日本は、強力に「富国」路線一辺倒を進めてきたために、あらゆる社会問題が経済と強固に結びついています。その結果の少子化であり、社会が少子高齢化となってしまった現在、政治を変えることに加え、国民一人一人が行動を変え、自らの属する組織を変革する必要があると言います。

それが出来るのは政権を担ってこなかった野党であり、保守、革新、リベラルなどの政治思想は関係ないと言います。

この新路線は、人類史的な転換点にあるとの認識に立つため、前例のない社会の創造を意味します。

石化エネルギーのから、インターネットや再生可能エネルギーなど、分散型技術を基盤とする水平分散のネットワーク型社会の転換です。

新しい経済政策は、分散型技術がカギになるため、個人の力を引き出し、あらゆる場面での意思決定に参画することが重要になります。

活力ある経済を持続させる源泉は、社会の改良であり、憲法を具現化する政策なのだと言います。

それらを具現化するために、野党はあらゆる準備をする必要があります。国会改革から、選挙制度の見直し、税制、最低賃金の全国一律化など、あらゆる見直しが必要だと書いています。

政策プロセスの透明化、構成化による効果的な資源配分、エネルギーを突破口にするイノベーションと産業転換などあらゆる分野についての見直しを説いています。

現在の政権から、ここまで行くにはどれほどの道のりが必要かとも思いますが、せめて現状の政治からは抜け出してもらいたいと思いながら読みました。

『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』の読後感

私が生きてきて、政治と関わってから数十年、現政権ほどひどい政権は見たことがありません。

憲法違反と思われるようなことを平気でする政権、隠蔽と嘘で固められて、文書改ざんまでしてしまう政権の元で、国民の良識も徐々に崩れていく現状をとても悲しく思いながら暮らしています。

一日も早く政権交代を願いながらもマスメディアは、本当のことを書くことも報道することもないため、多くの国民は現状を知らないまま、嘘にまみれた政権を支持しているために戦後最長の総理となっています。

予算委員会、国会討論を見ない限り、隠蔽して法律を通してしまうことから、国民に深く伝わらない事がとても不思議です。

少しでもわかっている人は、日々不安な気持ちをSNSで拡散して共有していますが、1日も早い現状打破を願っています。

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