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『白蓮れんれん』林真理子著|「心の花」の歌人柳原白蓮

私が柳原白蓮を知ったのは短歌を始めた数十年前で、その恋の歌の数々から白蓮事件を知ることになりました。

短歌を作り始めたばかりの私は、現代短歌の解説書のようなものを貪るように読み始めました。

そのような本の中には決まって「心の花の同人」であった柳原白蓮の歌が載っていました。

そのようなことから、今回読んだ「白蓮れんれん」のあらすじは大方知っていました。

その後の、NHKの朝の連ドラ「花子とアン」でも東洋英和女学校時代に、「赤毛のアン」の翻訳者で知られる村岡花子との友情が描かれているのを見て、さらに知識を深めることができました。

林真理子がこの小説を書くにあたって、柳原白蓮の娘夫婦の、宮崎智雄、蕗苳夫妻の協力を得て、龍介と燁子の手紙700通余りを見せていただき、伝右衛門の孫の伊藤伝之祐さんをはじめとする多くの方にお世話になったこと、また、多くの文献にもあたっていることから、現実とかなり近いのではないかと思いながら読みました。

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『白蓮れんれん』のあらすじ

九州の炭鉱王・伊藤伝右衛門の家の人たちが、東京で結婚式を挙げた伊藤伝右衛門と燁子を興味深く出向かえる場面から物語は始まります。

明治の末に東京から皇太子の従妹に当たる(のちの大正天皇)華族のお姫さんが嫁いでくるのですから、大変な騒ぎとなっています。

伊藤伝右衛門と燁子は2まわりも年が離れており、身分も育ちも違った二人の結婚生活は最初からうまくいくことはなかったようです。

燁子は伝右衛門の亡くなった妻との間には子供はいないと聞いていたが、よそで生まれた娘の静子がおり、甥の金次は養子になっており、後で知ることになるが金次の弟の八郎は金次の養子になっていて、伝右衛門は子供ができないということを知ることになりすべての夢が消えたように思います。

仲人に女学校の経営ができると言われたが、その学校は公立で寄付したものであることを知った燁子は娘の静子と伊藤伝右衛門の父親が晩年産ませた妹の初枝の教育をすることにします。

ふたりを燁子が出た東洋英和女学校に行かせることにしたため、静子と初枝はのちに美しい女性に成長します。

女中で妾のサキとは最初から対立したままで、離縁まで考えるが、燁子の兄や姉に説得されて戻り、一途に心の花に恋の歌を送り、別府の別荘で社交にふけるようになります。

白蓮と名前を変えていたが、歌集『踏絵」が出版され、賛否を呼びながらも評判となり、別府の別荘には新聞記者や文化人が集まるサロンとなっていきました。

大阪朝日新聞に「筑紫の女王燁子」というタイトルで連載記事が載ったことで、白蓮という名も全国的に知られるようになり、歌集『踏絵」も売れるようになりました。

また別府を訪れた菊池寛が、燁子がモデルと言われる「真珠夫人」を発表しベストセラーになっています。

戯曲『指鬘外道』(しまんげどう)を雑誌「解放」に発表したが、評判が良いので一冊の本にして戯曲にしたいということで、東京帝国大学法科の3年に在籍しながら新人会を結成して労働運動に打ち込んでいる宮崎龍介が別府に尋ねって来たのです。

それが白蓮事件を引き起こすきっかけになった運命的な出会いになりました。

その時から、お互いに当てた手紙は700通にもおよび、それらが大切に保存されているということです。

燁子が宮崎龍介のもとに走るまでにはかなりの時間がかかったが、2度目に身ごもった時にきっぱりと決心がつき、綿密な計画の後実行されました。

伊藤伝右衛門はあっさりと籍を抜いてくれましたが、兄の柳原義光の家に監禁されて、そこで長男を生むことになります。

その間、宮崎龍介は結核を病んでいて、連絡も取れない状態でしたが、新教宗教の丹波の大本教本部にかくまわれることができて龍介と会うことができたのです。

その後、裕福とは言えない生活ながらも、蕗苳が生まれて幸せな生活だったが、学徒出陣で入隊した、香織が終戦の4日前に戦死した時には立ち上がれなかったようです。

悲しみの果てにやがて「国債悲母の会」を結成して平和運動に半生をささげました。

心臓の病で床に就いた燁子を年下の龍介がかいがいしく世話をし、82歳の生涯を閉じた寂連を幸せだったと龍介は言ったと言います。

華族の子と産まれながらも正妻の子でなかった燁子は最初の結婚も不遇でずっと幸せとは言えない半生でしたが、理知と美貌を兼ね備えていた強い精神力で自ら幸せを勝ち取ることができた強い女性だったようです。

そんな燁子を林真理子は丹念に調べて血肉を加えたのがこの物語だと思いながら燁子の生き方を考えました。

その燁子が現皇后の美智子様が平民だったことを反対したことに、私は今でも理解できないでいます。


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