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『博士の愛した数式』小川洋子著ー博士の記憶は80分しか持たない

著者は1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞し、2004年『博士の愛した数式』は読売文学賞、本屋大賞を受賞、その他多くの小説があります。

2020年に『密やかな結晶』の英語訳(英訳タイトル『The memory police』)がブッカー国際賞の最終候補にノミネートされたが受賞には至らなかったようですが、多くの賞を受賞し、選考委員などもしているようですが、現代作家の本をあまり読んでいなかった私は、小川洋子氏の著作は『博士の愛した数式』が初めてです。

古典と言われた本を主に読んできて、現在活躍している小説家の本を少しずつ読むようになっていますが、『博士の愛した数式』はケンブリッジ大学に留学していたときに学んでいたのは女王のように優しい整数について学び、その後日本の大学で教授をしていて17年前に交通事故に会い、脳の後遺症で8時間しか記憶を持たない数理専門の博士のところに通う家政婦と息子のルートの物語です。

『博士の愛した数式』のあらすじと感想

私は高校3年に進級したばかりに同じアルバイト先の電気工学を学ぶ教養豊かな青年のの子供を身ごもったが、彼は愚かな男になって私の前から姿を消しました。

母は父親になれない相手の子供、私を産んだがどのような方法を用いても怒りは収まらず、妊娠二十二週を過ぎてから家を出て、母とは音信不通になり、産院から母子生育住宅という公立アパートに赤ん坊を連れて帰リました。

乳幼児を預かる保育所に当たり、あけぼの家政婦紹介組合の面接試験を受けたのは、小さいときから家事をしていたので、家事が得意だからです。

息子が小学に入る前に母はランドセルを送ってきて和解をしたが、まもなく脳内出血でしんでしまったのです。

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『博士の愛した数式』のあらすじ

母と和解し、やっとつかんだ安らぎもあっという間に消えて、元通りの母子家庭となっていました。

あけぼの家政婦紹介組合から、数論専門の元大学教授の元に派遣されたのは1992年の3月でした。

雇い主は母屋に住んでいる足の不自由な老婦人で、義弟の世話をしてほしいと言うことで頼まれましたが、母屋とは違って離れの博士の家はとても粗末な家で、離れで起きたことはそちらで解決してほしいと言われて、家政婦の仕事に就くことになります。

博士は17年前の交通事故の後遺症により、事故前のことはすべて覚えているのにその後の記憶が8時間しか持たないので、背広にはクリップでいろいろと書いた紙が下がっており、家政婦だと告げると靴のサイズはいくつかと聞かれ24と答えると4の階乗だと言われる。階乗とは1から4までの自然数を掛け合わせると24になると言うことです。

電話番号はい1億までの間に存在する素数の個数だという。そのように毎朝、郵便番号、誕生日などを聞かれそれについて、完全数、友愛数と博士はどんな数字にも数字の持つ意味を教えてくれるのでした。

数日後何かの弾みに息子のことを話すと、一人でおいておくのはよくないから、学校が終わったらここに来るようにと言われ、息子をルートと名付け、宿題を見てくれ、数字の素晴らしさを語り合うようになります。

博士はどんなときでもせかすようなことはせず、数字の魅力を語るので息子のルートも数字の素晴らしさを感じ始めますが、家政婦である私の方が何かにつけて数字と向き合うようにまっていきます。

その辺の数字を見ては、素数であるとか完全数であるとかと考えたりするようになりとても豊かな気持ちになります。

博士によれば数字は人間が生まれる前からあり、それを探しているのが数の学問だと言います。

ゼロという数字さえ、古代ギリシャの数学者たちは何もないものを数える必要などないと考えていたが、名もないインドの数学者がゼロを発見したということです。このゼロがあることにより、物差しで測ることができるようになったといい、セロの素晴らしさを教えてくれるのです。

交通事故に会う前のことは覚えているので、何事も数字を元に話す学者の魅力を私と息子のルートはとても尊敬し仕事ながらも豊かな気持ちになレるのでした。

それに、博士は言葉を後ろからすらすらと言える特技も持っていて、私と息子を驚かせるのですが、数学の話をするときもそれで得意になると言うことがないように、どのような特技もできることに対して、何の感慨も持たないようでした。

ただ、息子のルートに関してはとても大切に思ってくれて、けがをしたり、何かことが起きるととても心配しました。

どこにも出ない生活を送っているので、髪が伸び放題のため、桜の時期に散髪にいきましたが、とても緊張するようでした。ひらひらと背広中についている紙切れが人目を引きましたがなんとか散髪をすることができました。

ルートと話していて、阪神のファンであることがわかり、壊れたラジオを直し、野球中継を聞くようになります。

ある日書棚を整理していて、クッキー缶があるのを見つけ、中を見ると阪神の江夏時代のカードがびっしり入っているのを見つけました。本棚の奥にほこりだらけの大学ノートも見つけたが、そこには「14:00図書館前、Nと」と書いてありました。

それがその後もう一度開けたカードの下の段から出てきた29歳頃に義姉と一緒に写した写真を見ることになり、Nが義姉であることがわかります。

兄は、早くになくなっていたので、親しくなったのでしょうが、彼女との関係を私たちには想像以上のなにも与えてはいません。

博士もルートも阪神ファンですが時代が違っています。博士が知っているのは江夏が活躍した時代であり、ルートは江夏が移籍した後の阪神なのです。

私はタイガーズ戦の切符を3枚購入し、一度も野球観戦をしたことのない博士と息子と私のために、サンドイッチを作り球場にと向かいます。人混みの嫌いな博士はどのくらいうれしいのかはわかりませんが、美人の売り子さんからルートの飲み物を購入したりとまんざらでもないようでしたが、家に帰ると熱が出ていました。

かなりの熱だったので帰ることもできず、ルートと一緒に泊まることになりましたが、それが義姉の老婦人の逆鱗に触れやめさせられることになります。

次にいくことになったのは、経理事務所でとっても忙しく大変でしたが、冷蔵庫のの製造番号などどんな数字にも興味を抱いてしまいます。

そんな折、家政婦紹介組合から電話があり、息子のルートが学者の家にいているからすぐに行ってほしいと電話があります。

博士の家には、義姉がきており、息子をなぜここに来させたのかと強く言われますが、それを聞いていた博士が、黙ってオイラーの公式を書いたメモ用紙を差し出します。

それを見た義姉から今までのイライラとと怒りが静まり、疑いが消えていくのがわかりました。数式の美しさを理解している目だと思った。そしてまた博士の家に家政婦として通うことになりました。

私も息子のルートも穏やかな日が戻ってきて、ルートの11歳の誕生日をすることになり、手違いはあったもののとても楽しい夜を過ごすことができました。

ルートには軟式野球の素晴らしいグローブをプレゼントしてくれました。それを購入したのは、ということもわかりました。

私と息子のルートからは江夏のプレミアムカードをプレゼントしました。

それがそれが最後の夜となり、だんだん記憶が落ちてきた博士は施設に入ることになります。そのカードをいつも首から掛けて大切にしてくれていました。

施設には1から2ヶ月に1度くらい訪ね、ルートと博士はキャッチボールをして楽しんでいました。

その間も魔法のような数字を楽しみながら時は過ぎていきます。ルートと私にはかけがえのない時間が流れていき、ルートは大学生になり、中学校の数学採用試験に合格したことを博士に告げるまでに成長していました。

『博士の愛した数式』の感想

博士は電話番号、靴のサイズ、誕生日などどんな数字からもいろいろと導きだします。素数、双子素数、完全数、友愛数などそれらの数字は心が温かくなるものばかりで、靴のサイズ、電話番号、誕生日など自分が持っている数字により、とても幸せになれるのです。

ゼロという数字の素晴らしさやただそこらへんに転がっている数字は博士にかかると魔法のように幸せを運んでくるようです。

数字をテーマーに書いた小説がこれほど魅力的な物語になり、読むものの心を豊かにしてくれることにとても不思議に思いながら読み進みました。

数字の美しさと人間の楽しみをこれほどまでに美しく書かれた物語を私は初めて読みました。どこまでも深く、優しく、博士が一番星を見つけるような感動を私に与えてくれた小説でした。

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