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本・読書感想・映画

『日蝕』平野啓一郎著|芥川賞受賞作

2019年1月20日

日蝕

平野啓一郎の文壇デビューは華々しく、芥川賞を受賞した時はかなり話題になりました。最近作『ある男』を読んだことから、20年ほど前の『日蝕』も我が家にあるのではないかと本棚をさがしたところ見いだすことが出来ました。

ほとんど内容を覚えていなかったのですが、読み始めるにしたがって、読んだ記憶がよみがえってきました。

以前から、読み始めた本を途中から止めないで読む方でしたが、あまり覚えていないこと、その後の作品を読んでいないことからその当時はさほど感動しなかったのかもしれません。

今回も古語を連ねた文章を読み始めて、このような文書がどこまで続くのだろうと読み進めたのですが、途中からかなり興味ぶかく、面白くなって一気に読み進めることが出来ました。

やはり読んだことがあることは感じましたが、今回はとても興味深く読み進むことが出来ました。三島由紀夫の再来と言われたようですが、三島由紀夫の本は読みこんでいないので何とも言えませんが、20歳前後で、これだけの作品を書ける頭脳を素晴らしいと思いました。

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『日蝕』のあらすじ

15世紀のフランスのパリ大学で神学を学ぶ主人公ニコラが、「ヘルメス選集」の写本の1部を持っていたことからその全体に出会うべくリヨンにと旅に出ることになりました。

リヨンの修道院の司祭は「アルプス以南には、こちら側と全く違う世界が広がっているのでそれを見てきて欲しいと言います。

司教はその村には、自然哲学、異教徒の哲学にも精通している錬金術師がいるので、そのものを訪うてはいかがとかいうのを聞いて、興味を抱きその村を問うことにしました。

その村にはいると教区司祭を訪ね、村人に説教をしているドミニコ会の修道士を見かけました。この方がのちに会うことになるジャック・ミカエリスです。

司祭に会うためリヨンで司教が書いてくれた手紙を渡したが、あて名の司祭はかなり前に亡くなっていて、会った司祭は贅を尽くし酒に酔っていて、リヨンで聞いていた司祭とは似ても似つかない自堕落な司祭でした。

宿の主はジャック・ミカエリスを尊敬する者で、そこに居を構えて、主の反対も顧みず、ニコラは錬金術師のピエェル・デュファイのところを訪うようになっていました。

彼は無口で、毎日錬金の作業を続けているが、彼を拒む様子もなく書棚の膨大な本を貸してくれるようになりました。その本はすべて写本でした。

ピエェル・デュファイを良く思わないジャック・ミカエリスは『異端審問の実務』という本を持っており異端審問官であることも知ることになります。キリスト教も様々に分岐しているようです。

神学に疎い私には分かりにくいところが多いのですが、神学を収めた主人公ニコラは、その中の様々な矛盾を抱えながら生きているようです。

自堕落をしている司祭は、人間の誰でもなりうるような姿であるのだろうが、ピエェルは、リヨン司教の言う通り信仰を持っていたが、その偉大さと錬金を日常とする彼そのものに異端を感じることもありました。

彼の生活は意識して律せられているものであり、食事は鍛冶屋の足の不自由なギョオムが、買い求めて調理した粗末な食事を日に2度摂り、ごまかされた費用も不問にしているようでした。

ある夕刻、ピエェルの元を訪れたニコラは、ピエェルが森の中に入って行くのを見て声をかけようと思ったが、悪いこととは知りながら、彼の後をつけることにしました。蝋燭を持ったピエェルの後を付けて行くと洞窟の入り口に付き、そこで蝋燭に火をつけなおして巌の割れ目から洞窟に入って行ったが、そこは鍾乳洞のようで長い年月をかけてできた石筍を支える台は石筍の付け根より水面に至るまでをバラによって覆いつくされています。

洞窟は下にと向かい、ピエェルが持つ蝋燭の灯りをたよりに降りていくと偉大な両性具有の像に出会います。歳月によって老いるのではなく、若々しさを増していくその像はいかなるものなのでしょうか。

ここに神の力の偉大さと錬金術とが重なりこの小説のクライマックスのような気がします。神の創造したようなその巨大な像と、見てはいけなかったことを見てしまったと思う神学僧は、ピエェルの錬金術が異端なのか考えるようになります。

この日を境に、村では奇妙な間歇熱が流行し始め、むらを襲った奇病は瞬く間に広がり始め、村のいたるところでつまらぬ争いが起きジャックや神学僧のニコラを村人が訪ねてくるようになっていました。

この間歇熱の流行と時を同じくして、村には日ごと落霞に染まる夕方の西の空に男女2体の巨人が現れるという風説が流布され始めていました。腰から上は雲の隠れて、丘壟のかなたで獣のように激しく交わり合うとのことです。

そしてこの巨人の出現には必ず豪雨が続き、夜明け前には止み、東雲の空には虹が耀くのです。巨人の姿はますます多くの人に目撃され、豪雨は川を氾濫させました。神学僧である私は幾度もその姿に慄然としました。

異端審問官であるジャックはこれは魔女の妖術によるものであると人びとに説いていると司祭のユスタスから聞き、ピエェルの身を案じピエェルを訪ねたが、ニコラは何も言うことが出来ないまま帰ろうとする私に、「私の身に何か起これば、ここにある書はの類はお前の好きなようにするが良い。」と言われた。

そののち、魔女が捕らえられたという。それはピエェルについていって洞窟で見た両性具有者でした。洞窟を見に行ったが、洞窟は閉じられており中に入ることもかないませんでした。

ジャック・ミカエリスはとらえて拷問をしたら、白状したということで処刑を行うことになり、処刑場に津rて来られた両性具有者に村人は石を投げ始めました。石を投げられた両性具有者はなげられた石によって、割られた額から、右の瞳は翠玉のごとき緑色で、左の瞳は紅玉のごとく緋色でした。

その瞳は何物も映さず、何物も容れず、認識せられることのみ欲していました。それは村人たちの瞳を射貫き深奥に達して、飲み込まれた矢じりのように肉の下から痛み始めました。それは原罪に似ていました。そして両性具有者お身からは芳香が立ち上っていました。

火刑の刑が始まっても両性具有者は、苦しむことも、ありませんでしたが、燃え盛る火の中激しく身をよじり始めた時、西の空に2体の巨人が現れ背後から交わって浮かび上がっていたのです。

太陽が月に入るとしていたころ、両性具有者は燦爛と輝き、陽の物を空に向けて液体を放知ました。液体は流れ落ち陰に流れ落ち、太陽と月は結ばれたのです。

ニコラは、自分が、処刑されている錯覚になりました。男であり、女であり、両性具有者は自身であると感じていました。

刑が終わり灰の中を確かめたが、何もなかったと言っているところに、ピエェルが現れ、金塊を掴んだのです。しかし、ジャックに握りつぶされてしまいました。

そして、ピエェルは捕らえられ、私を一顧だにせずに連れ去られてしまいました。

その日の夕刻、雨は降りませんでした。

翌日、ジャックの忠言に従ってこの村を後にしました。ピエェルの冤罪を解くことはできるかもしれないが、錬金術という異端については説明が出来ないと思ってのことでした。

ニコラは仏稜に行き「ヘルメス選集」「プラトン全集」の1部や「カルデァ人の信託」などを手に入れてパリに戻り、パリでの研究生活を送りました。

その後、地方の主任司祭についているが、ある時異端審問の劣悪さを問う人々の間から、ジャック・ミカエリスの名を聞き会いに行ったが、彼のこともピエェル・デュファイのことも覚えのないことだというので仕方なく帰りました。

その時、呼び止める声に振り向くと、鍛冶屋のギョオムであり、ピエェルはジャックの取り調べ中に獄の中で死亡したと言います。ピエェルを魔女として訴え出たのはギョオムであり、そのおかげで鍛冶屋としてこの町で暮らしているというのです。

あれほど、村でピエェルをたたえていたギョオムも自分を利するだけの人間なのでしょう。

その後、ニコラはピエェルの本を読み解き、錬金術の作業を始めたのです。ピエェルが錬金術は作業がすべてであり、万巻の書を読みつくしたとしても実際に物質に向かうことをしないのであれば得るところは無であると繰り返していたことを思い出していました。

作者は最後に両性具有者こそがキリストであるかもしれないし、自分自信であるかもしれないということを導き出しているのです。

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『日蝕』の読後感

20年前い芥川賞を受賞した『日蝕』はその当時かなり話題になったのを覚えています。選考委員からはいろいろな意見が出たようですが、最終的に『日蝕』は満票に近い支持を得多様です。

私は今回も最初の読みにくさから、理解できなかったことも多かったので、2度読むことになりました。

その結果により、人間の分かりにくさ、所詮人間は人を裁消えることなど出来ないことを書いているのではないかという思いになりました。

誰もが陥りやすい正義感はかなり危ういものであることから『異端審問』などい疑義を抱いているのではないかと感じ、それそれが、相手の立場を思いやることが、キリストの教えであるのだろうと感じました。

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