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『JR上野駅公園口』柳美里著

2014年3月に発行され、全米図書賞を受賞した小説です。

柳美里の小説は2000年に発売された『命』以来ですので、『JR上野駅公園口』を読んで、柳美里という作家の成長を感じ、とても感動しました。

小説以外では『国家への道順』を読み、在日韓国人としていじめにあいながらも必死に生きている「柳美里」が国家について深く考えていることを知りました。

しかし、『JR上野駅公園口』は、それらの本と全く別の書き方をしていて、小説家としての大きな成長を感じました。

『JR上野駅公園口』のあらすじと感想

主人公は平成天皇と同じ1933年に福島県相馬郡八沢村で生まれ、21歳で亡くなる息子の浩一は令和天皇となる、浩宮徳仁親王と同じ日に生まれました。

そして、妻の名は貞明皇后の名と同じ漢字の節子、その男の人生に天皇は大きく関わっていたようです。

『JR上野駅公園口』のあらすじ

小説は上野公園でホームレスになって生活しているところから書き始められ、それ以前の生活は回想として書かれています。

ホームレスとしての生活は彼らが、家がある人には分からないというように、かなり自己嫌悪に陥った生活だったようです。

福島県相馬郡野沢村に生まれた主人公の男は、7人兄弟の長男で、一家を支える宿命持っていました。

兄弟のために働き、一家を支えるために働かなければなりませんでした。

節子と結婚して、洋子、浩一と二人の子供に恵まれましたが、その頃は貧乏のどん底でした。

二人の子供を育てるために、30歳の時に東京に出稼ぎに行き、翌年に控えた東京オリンピックで使う競技場の建設現場で土方として働き始めます。

残業もやると当時の公務員の給料と同じくらいの金額になり、それを家に送るような生活で、家に帰るのは盆暮れくらいだったので、子供たちもなつきませんでした。

例年より早く帰れた年に、洋子と浩一と出かけたとき、ヘリコプターに乗りたがった浩一にお金がなくて、乗せてあげられなかったことを、ずっと悔いることになります。

その浩一が21歳で亡くなり、その悲しみは言い表すことができないくらいでした。

洋子は嫁ぎ、60歳になったときに家に戻ったがそれを待っていたように老父母も亡くなり、やっと二人の生活が続くようになりました。

しかし、その7年後、妻の突然の死に男は耐えられませんでした。

娘の子供が、越してきてくれましたが、いつまでも面倒を見てもらう訳にもいかないと、「探さないでください」と書きおきして当てもなく上野について、ホームレスになった男の物語です。

天皇、皇后が外出することを行幸啓といい、行幸啓の度ににホームレスのテントなどを片づかなければなりませんでした。

その間、それぞれの方法で寝泊まりし、終わると元に戻すという生活をしていたようです。

そんな最後の日を、男は天皇陛下に手を振り、2番線の5年前に降り立った駅のホームに立っていたのです。2006年のことです。

そして2011年東日本大震災で津波が襲い、原発事故が起きるのです。

『JR上野駅公園口』まとめ

福島の海沿いの町は多くの男たちが出稼ぎで暮らすような貧しい人の多い土地でした。

その後、原発が出来、工業高校の優秀な人は、東京原発、東北原発に、その他関連会社に就職する人が多くなりました。

しかし、原発事故が起きて、現在は大変な事態になっています。

著者は、原発事故後、頻繁に福島を訪うようになって現在は住居を移しています。

著者が見た、光と影の部分を鮮明に描いた小説で、いろいろと考えさせられました。

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