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『1973年のピンボール』 村上春樹著-僕と鼠の2部作目

1973年のピンボールは村上春樹の2冊目の長編小説で、前回読んだ『風の音を聴け』と前々回読んだ『羊をめぐる冒険の』の3部作の中の2冊目に当たります。

どれも村上春樹らしい小説ですが、私は1部作と3部作にとても感動したので、少し物足りない感じもしましたが、人間の寂しさの根源を書いていて心に残りました。

ドラマとして、起伏が少ないことでそのように感じたのかもしれませんが、読み込むことにより示唆深いのだろうと感じました。

そして、僕と鼠とジェイはどの作品でも同じような設定でありことから、3部作として楽しめますが、1冊でも完結していると思いながら読みました。

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『1973年のピンボール』 のあらすじと感想

村上春樹の作品はとても読みやすい文体でありながら、内容を理解するのはかなり難しく、『1973年のピンボール』はさらっと読み終わったのですが、理解できずに再度読むことになりました。

1969年から1973年の間を前後して書いていることから、それを理解しながら読まないと出来事が前後してしまうということと、鼠と僕が交互に出てきてそれぞれの個性を描いているのは、『風の音を聴け』から『1973年のピンボール』とつなぎ、『羊をめぐる冒険』へとつながっていくのだが、その中心的な位置づけを担っているように読みました。

『1973年のピンボール』 のあらすじ

僕は大学を出て友達と二人で会社を作り、翻訳の仕事をしています。この設定は『羊をめぐる冒険』へとつながるので、そこで働いている事務の女の子は僕と結婚してのちに別れることいなる女性のようです(羊をめぐる冒険による)。

僕は、コーヒーを上手に入れる見分けのつかない双子の女の子と暮らしています。

彼女たちは名前も名乗らず、どこから来たのかも告げずに、共同生活をしていて一緒に眠ります。村上作品にはこのような女の子が出てくることが多く、作品を華やかにしています。

1970年僕と鼠がジェイズ・バーでビールを飲み続けていたころ鼠はピンボールにくるっており、92500というベストスコアの記念に一緒に写真を撮らされたことがあります。

僕が本当にピンボールのの世界に入り込んだのはその年の冬で大学にもいかず、ほとんどのアルバイト代をつぎ込んで、165000というスコアを出していました。

それはジェイズ・バーにあったのと同じ、3フリッパーの「スペースシップ」と呼ばれるモデルでした。

ある日、僕はその時のピンボールに心を奪われてしまい、様々な手を尽くして、その当時のピンボールに会いに行くことになりました。偶然にスクラップされずに残っていたのです。

親友の鼠は大学を中退して、地元の町のジェイズ・バーに出入りし、ジェイを相手に飲むことが多くなっていました。ほとんど自分のことを話さないジェイとは心を通わせることができるようでした。

「ねえジェイ、人間はみんな腐っていく。そうだろ?」

・・・・・・・

それでも人は変わり続ける。変わることに何の意味があるのか俺にはずっとわからなかった。

・・・・・

「そしてこう思った。どんな進歩もどんな変化も結局は崩壊の過程に過ぎないじゃないかってね。違うかい?

「違わないだろう。」

そのように話していた鼠が迷った末に町を出ていくことになりました。

双子の女の子も元のところに帰っていき、僕は「ラバー・ソール」機器コーヒーを立てました。

『1973年のピンボール』の感想

僕と鼠、双子の女の子、ジェイズ・バーのジェイこれらの人物は村上春樹作品の核をなす位置づけを担っているのかもしれません。

僕の中に鼠がいるし、鼠を理解できるのは、20歳も離れているジェイであり、これらの人間の生き方に関わるテーマーはその後の村上作品の核をなす哲学になっているようです。

可憐な双子の女の子の存在は僕の心を包み込んでいるために、僕は深い悩みや葛藤を感じることなく普通に仕事をして生きている青年のイメージがあります。

アパートの流し台の下に鼠取りを仕掛けたことがあり、小さな鼠が入っていたがどうすることもできずそのままにしていたら数日後に死んでいた時、物事には入り口と出口がなければいけないと思ったことがあります。

出口を失った友人の鼠がそこに暗示されており、鼠はジェイに別れを告げていくはてもなく出て行ってしまうことと重なります。

この小説は書きたいことが書ききれなかったという思いが感じられ、次の作品へとつながっていったのではないかと思いました。

村上作品の面白さは、どこまでも続いていく心の迷路を求め続けていけることにあるような気がしています。

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