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『日の名残り』カズオ・イシグロ著 土屋政雄訳|ノーベル賞受賞作家

著者のカズオ・イシグロは、長崎県出身ですが、父の仕事イギリスに幼少期に渡り、イギリスで成長し現在はイギリス国籍を持った作家であり、『日の名残り』は英語圏最高の文学賞とされるブッカー賞を35歳の若さで受賞し、2017年にノーベル文学賞を受賞しました。

日本語は両親が話していたのでわかるということですが、英語での生活だったために話すことはあまりできないということです。イギリス国籍を持っていることについては日本では2重国籍が許されないので、イギリス国籍を持っていると言うことです。

私は翻訳でイシグロ作品を初めて読みましたが、海外文学とは違った分かりやすさを感じることが出来ました。

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『日の名残り』あらすじと感想

第一次世界大戦後から第2次世界大戦前をイギリス外相、ダーリントン卿の大邸宅に仕えていた主人公スティーブンスがダーリントン卿亡き後、邸宅ごと譲り受けたアメリカ人のにファラディ氏に仕えることになったが、ファラディ氏がアメリカに行くことになった留守の間、旅に出るように促されます。

その話があった時に、最盛期のダーリントンホールで女中頭をしていたミス・ケントンからの手紙が幸せそうではないことから、人手が不足しているダーリントンホールに戻るかどうか確かめたいと思って西部地方への旅に出ることにしました。

その6日間の旅の間に、第一次世界大戦が終わってのちのヨーロッパの政治外交の中枢にいたダーリントン卿に執事として仕えたスティーブンスがダーリントンホールで見てきた1920年代から出来事と女中頭のミス・ケントンとの淡い恋ごころを旅の感想と織り交ぜて書いています。

いくつかの職を経た後にダーリントンホールで執事としてのやりがいを感じていた当時、副執事と女中頭が結婚をして辞めてしまった時に、父を副執事として、優秀なミス・ケントンが女中頭として入ってきました。

優秀な執事としての父しか知らないスティーブンスに、ミス・ケントンは70歳を過ぎた副執事の父の仕事の多さを忠告されますが、今まで執事として完璧に働いてきた父に仕事を減らすことを忠告しても、働くことに生きがいを感じていた父は仕事を減らすことが出来ず、倒れてしまいくなってしまいます。

それは3年も前から準備をしてきた1923年の国際会議の最中であり、思うような看病も出来ない状態の時でしたが、それをやり切った時は亡き父も認めてくれるのではないかと思うような満足感がありました。

それは執事として尊敬していた父を模範としての執事としてのやりがいを抱いた時であり、品格ある執事とは何かという思いを巡らしながらダーリントン卿に仕えてきた日々の満足でもあります。

そして品格ある執事とは尊敬して仕えるに足る名家においての会合やお客様に対して満足を最大限に与えるために影のように使えることでありそれを追求し続けてきたスティーブンスがイギリスの旅の風景とともに回顧し淡々と女中頭との思いなども織り交ぜてその時代の充実した日々を回顧しながらの旅を続けています。

そんな思い出の中で尊敬するダーリントン卿が国際会議を開き、苦悩しながらもユダヤ人の女中を解雇し、対独宥和主義となっていくありさまを戦後のスティーブンスの目を通して語られます。

ヨーロッパが再び第一次世界大戦のような惨禍を見ることがないようにと願っての政策でしたが、結果的にダーリントン卿は戦後、ナチス協力者としてその名誉を奪われることになってしまい、寂しい晩年を送ったようです。

しかし、この小説は歴史小説ではなく、主人公の執事スティーブンスは思想的なことは何も語らず、執事としての品格、人間性を語りながらミス・ケントンへの抑えた愛を語っているのみですし、のちにダーリントン卿が解雇したユダヤ人の女中のことを気にしていたこともスティーブンスは知り心温まる情景も織ませています。

そのような回顧を重ねたのちに、ミス・ケントンことミセス・ベンとの感動的な出会いをかなえることが出来ます。

そしてミス・ケントンからの手紙はスティーブンスを忘れられなかったことによる郷愁であることを知り、これからの人生は前を向いて生きていきたいという言葉を聞いて別れてきます。

ダーリントンホールに帰る前は同じホテルに2晩泊まり、桟橋から夕陽が落ちるのを大勢の方と一緒に眺めながら過ごしました。

ダーリントン卿は信じて選んだ道が過てる道であったが、勇気をもって選んだ道であったこと。そしてその道が誤った道だったと言うことができるひとであったことに勇気のある生き方を感じ、それに比べて自分は何も選んだことがないなどととなりに座った人に話すと、後を振り返って生きていてはいけないと諭されます。

戦後のイギリスでは大邸宅を持てる人などいなくなり、それまでのような生き方は出来ないことを思い知り、アメリカ人のファラディにジョークを覚えて仕えようと心を決めるのでした。

第二次世界大戦後の世の中しか知らない私には、イギリスにしかいなかった執事という職業は小説以外では読んだこともありませんが、イギリスという格調高い国がこのような大邸宅でイギリスのみならず、ヨーロッパの政治を行っていたということを初めて知りました。

まとめ

翻訳で読んだので、どのくらい原文と違っているかはわかりませんが、淡々とした文章の中にイギリスの素晴らしい風景のの中から回顧されるダーリントン卿に仕えたダーリントンホールの日々が溶け込んで、あたたかな内容になっています。

第二次世界大戦が終わった後の日本を思い出してしまうのですが、環境がかなり違うこともあり、日本の戦後の文学とはかなり違った視線を感じました。

カズオ・イシグロが舞台を日本にした作品も読んでみたいと思っています。

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