スポンサーリンク


広告 本・読書感想・映画

賛否両論で注目されているMMTの本「奇跡の経済教室」中野剛志著

山本太郎が「れいわ新撰組」を立ち上げ、消費税を上げないで経済政策をするという触れ込みをしているのを聞いてそれが「MMT」であることを知りそれがどのような経済政策であるのか知るために読んでみることにしました。

「MMT」に興味があるというわけでもなく、「れいわ新撰組」を支持しているわけでもなく、本を読んだからと言って支持者になることはないのでが、知らなければ何を言うこともできないという理由で読むことにしました。

ですから、「MMT」を批判的な立場から読んだことになります。

「奇跡の経済教室」の読後と感想

経済学を専門的に学んだわけでもなく、昔、ケインズ経済学やマルクスの資本論を理解できないままにかじった程度の私に、経済の専門的なことなどはわかりはしないのですが、そんな中で一般的な経済学とは違うと言われる、MMT理論「奇跡の経済教室」を読んだ私なりの感想を書いてみようと思います。

第1部 経済の知識をマスターしよう 第2部 経済学者たちはなぜ間違うのか? の2部構成で書かれています。

第1部 経済の知識をマスターしよう

経済学者によってデフレの定義も異なるようですが、著者は平成10年から現在までデフレが続いているという前提で書いています。

確かに外の国に比べて、名目GTP成長率はかなり低くなっています。

デフレとは需要が不足し、供給が過剰になることで、ものが売れなくなる状態ということは経済の基本なので私も知っています。

そして、デフレとは金の価値が上がり、人々は物よりも金を欲しがり貯め込むようになると書いています。

私はこの辺から、疑問が生じ始めました。現在は貧富の差が大きくなりすぎたために、ため込むよりは使うお金がないのが現状で、これは新自由主義を提唱してきた政治にこそ問題があるのではないかと思いました。

一部の金持ちは物を欲しがらないが、多くの国民は貯蓄どころではなく、生活するお金にも困っているのが現状だと思っています。

著者は、平成の日本はデフレに入ろうとしていたときに、デフレ対策してしまったこと、ますますデフレになりかねないインフレた対策である新自由主義を推し進めてきたためにデフレが続くことになったのだと書いています。

私は金持ちはより金持ちに、貧しい人はより貧しくなったのが、平成とという時代だったと思っています。私ものことに関しては著者と同じ考えです。

そして、デフレの時の対応として次のようにしなければならないと書いてあります。

  • 産業や労働者は保護して、競争を抑制します。
  • グローバル化には背を向けて、保護主義にします。
  • 政府を大きくして、公務員を増やし、給料も上げます。
  • 無駄な公共投資であっても、増やすことは削るよりもよい。

上の二つにおいてはうなずけますが、下の二つについては素人故か納得できませんでした。

もし、公務員を増やして、インフレになったら、急に公務員を減らすことなど可能なのでしょうか。そのことについてはインフレになり雇用がが増えれば、増やした公務員は民間に移っていくと説いています。

少子高齢化社会であることを考えれば、無駄な公共事業をするのだったら、福祉や教育、現在減らし続けている、研究費などにお金を回すべきだと思います。

まずは、介護職員、保育士の給料を上げて、保育所の拡充をしなければなりません。日本は教育費にお金がかかりすぎています。

この辺まで読んで、この経済論は絵に描いた餅のような気がしました。経済論からは悦脱するかもしれませんが、消費税を廃止してこのような経済政策を政府が行うことを考えただけで、納得できないのは「現代貨幣理論」が理解できないのでしょう。

信用貨幣論とは、「銀行は貨幣を創造することができる」、従って貨幣は第三者に譲渡することができる特殊な形式の「負債」だといい、現金通貨を創造するのは、日本銀行であるといいます。

そして、銀行は、人々から集めた預金を元手にして貸し出しを行っているのではなく、貸し出しによって預金という貨幣が創造されるといいます。

借り手が、債務を銀行に返済すると、預金通貨は消滅するということのようです。

ということは、銀行の貸し出しの制約となるのは、「借り手の返済能力」であり、「借り手の返済能力」があれば、いくらでも貸し出しを行うことが出来るということです。

著者は「通貨は、納税の手段となることで、その価値を担保している」という説で、この経済理論は「現代貨幣理論」と呼ばれているといいます。

その結果、通貨は「国家に課せられた納税義務を解消することが出来る」という価値を持つことになるといいます。

それ故、「現代化幣論」は、「通貨の価値を裏付けるものは、租税を徴収する国家権力である」と唱えるのだそうです。

しかし、そのような銀行による国債購入は、日銀が政府から直接国債を購入して当座預金を供給することは「財政ファイナンス」とほぼ同じになります。

そして、「財政ファイナンス」は法律により禁止されています。そのことからも著者が考える貨幣理論は法律を改正しなければ出来ないことになります。

デフレ脱却のためには、貨幣供給量を増やす必要があるが、その貨幣供給量の増大に必要なのは、財政赤字の拡大だというのです。

これを理解するには、「貨幣とは負債の一種である」という理論を芯から理解できなければこの理論は理解できないでしょう。私はその理論を理解できるに至っていません。

そこで、著者はデフレの時には、民間企業は負債を増やすことが難しいから、民間企業のために政府が赤字を増やせば、貨幣供給量は増え、財政赤字が拡大すれば、貨幣供給量増えるというのは「貨幣は負債」とする信用信用貨幣論から当たり前のことだというのです。

他方、第二章では、デフレは需要不足が原因だから、財政支出を拡大することで、需要を創出すべきだといっています。

ここ第六章では、「デフレは貨幣不足だから、貨幣供給量増やすため」、第二章では「デフレの原因は需要不足が原因だから、需要を増やすため」と言っているが、これは同じことを言っていると書いています。

「政府の財政赤字は、それと同額の民間部門の貯蓄を生み出す」のが「信用貨幣論」から導き出されたる結論だと言います。

そして、「信用貨幣論」は、貸し出しには資金量の制約はないけれど、「借り手の返済能力という制約はある」と言うことなので政府の借金も同じ話になるはずですが、日本政府について言えば、その返済能力には限界がないと言うことです。

政府は、通貨を発行する能力があるという点において、個人や民間企業とは決定的に異なると言うことのようです。しかし、外貨建て国債についてはこの限りではないと言うことのようです。

でも、財政赤字の限界はあると言うことです。それがインフレです。私はここまで読みながら、インフレになったときにそれを止める手立ての方が難しいと感じていました。

増やした公務員は人手不足になった民間企業に移れるというがそのようなことが巻単位出来るのか、公共事業は途中で辞めるのか、それをするには数年もかかるだろうし、容易にインフレが止まらなかったら物価が上昇し、お金の価値がなくなり、失業者は増えるのではないかという思いです。

インフレと言わないまでも、バブルがはじけたときに、多くの企業が人員整理をして失業者が増えた現実を私は見てきました。

また、税については政府に必要な財源を確保するためではなく、インフレを抑制するものだと説いています。要するに税金とは物価調整の手段と言うことのようです。しかし、インフレを止めるためとはいえそれほど簡単ではないのではないかと思わされます。

日本はデフレの中にあって所得税の累進度を弱め、消費税を上げてきたということは政府の経済政策がよくなかったと言うことは誰でもわかっていることと思います。

第1部ではこのような「信用貨幣論」について書いてあり、現在目指すべきはデフレ脱却という「国民経済の健全化」であると書いています。

「第2部 経済学者たちはなぜ間違うのか?」には、その理論を肯定できない経済学者のことが書いてありますが、現在の私にはどちらの意見にもそれなりの理論を肯定するものの、決定できるするだけの知識しかありませんでした。

反対の理論であっても、「MMT」でインプレになった時に、インフレを抑えられるかという危惧を抱いているだけのようでした。

その私の疑問に対する答えのようなことが、下記の人が書いています。

「MMT(現代貨幣理論)なんてあり得ない! 米山隆一 前新潟県知事。弁護士・医学博士」

MMTという妖怪が徘徊している 三輪晴治

「山本太郎の『MMT』理論はアベノミクスと本質は同じ」古賀茂明

第2部 経済学者たちはなぜ間違うのか?

日本が平成のデフレからなぜ抜けきることが出来ないかは、緊縮財政のためであり、日銀総裁や日銀副総裁の政策がどのように間違っていたかを論文を参照して説明しています。

新自由主義はインフレ政策であること、「MMT」の基本である「信用貨幣論」を理解していないことによると言うことを様々な経済学者、の論文により検証しています。

海外の有名な経済学者の論文や政策、歴史的なインフレ、デフレ時の対応などを網羅して書いています。しかし、反対論を読んだ限りではちょしゃがおもうほどの理解ではないと感じました。

ただ、経済学者の専門書をしっかり読んで勉強したことのない私には、書いてある内容はなんとなくわかるような気がしますが、経済とはあらゆることを分析しなければならないのだと思うと、単にこのような簡単な方法でデフレが脱却できるのか、少子高齢化社会での福祉はこれで解決できるのか、もしインフレになったときに、完全にインフレ対策が出来るのか、出来なかったら貯蓄していたお金の目減りはどうなるのかなどの疑問を抱きました。

日本はインフレになったことがないと書いていますが、戦後の一時期、ハイパーインフレになったことがあるとか、ハイパーインフレに近い状態になったとか書いてあるのを読んだことがあります。

「新円切り替え」もあったと読んだことがあります。もし、そのようになったら、国民全体が混乱するのではないかと思います。この論理が正しいかとしても、今の日本で実行することは慎重にしてほしいと感じました。

しかし、そのときは戦争という異常な時代のことであるので、現在では心配することはないのかもしれません。

スポンサーリンク


本書のまとめ

最後のまとめには簡単にここまで書いたことのまとめが書いてあります。

  1. 平成の日本経済が日本経済が成長しなくなった最大の理由はデフレであるといい、「デフレとは物価が下がり続ける=貨幣の価値が下がり続ける状態である」といいます。貨幣の価値が下がり続ける状態では誰も支出をしたがらないので、経済は成長しなくなります。
  2. デフレとは「需要不足、供給過剰」が持続する招待です。デフレ対策は、「大きな政府」財政支出の拡大、減税、金融緩和、産業保護、労働者保護です。インフレとは、「需要過剰、供給不足」が持続する状態のことなので、「小さな政府」、財政支出の削減増税、金融引き締め、生産性の向上、競争力の強化(規制緩和、自由化、民営化、グローバル化)と言います。
  3. 新自由主義は、インフレ対策のイデオロギーだが、現在は新自由主義の時代です。デフレ対策のイデオロギーは、民主社会主義
  4. 平成日本は、デフレ下にあったのに、新自由主義のイデオロギーを信じ、インフレ対策をやり続けました。
  5. 貨幣とは、負債の特殊な形式です(信用貨幣理論)。
  6. 貨幣には、現金通貨と預金通貨があります。預金通貨を創造するのは銀行です。銀行は、銀行が貸し出しを行うと創造される(信用創造)のであって、銀行が預金を集めて貸し出すのではない。

    銀行の貸し出しは、銀行の保有する資金尾制約は受けないが、借り手の返済能力の制約は受けます。よって、借り手の資金需要が、銀行による貨幣(預金)の創造を可能にします。

  7. 「現代貨幣理論」の貨幣理解のポイントは、国家は国民に対して課税義務を課し、「通貨」を納税手段ととすることを決めます。国民は、国家に通貨を支払うことで、納税義務を履行できるようになります。
  8. 量的緩和では、貨幣供給量は増えない。貨幣供給量を増やすのは、借り手の資産需要である。デフレ下で貨幣供給量を増やすためには、政府が資金需要を拡大するしかない(財政出動)。
  9. 財政に関する正しい理解とは、民間企業は、国債発行の製薬とはならない。財政赤字は、それと同額の民間預金を生み出す。政府は、自国通貨発行権を有するので、自国通貨建て国債が返済不能になることはない。財政赤字の大きさ(対GDP比政府債務残高など)は財政危機とは無関係です。

    財政赤字の大小半田案するための基準は、インフレ律です。

    税は、財源確保の手段ではない。税は、物価調整や所得再分配など、経済全体を調整するための手段です。

  10. 財政赤字を拡大しても、それだけでは金利は上昇しない。デフレを脱却すれば金利は上昇するが、金利の上昇は日銀の国債購入によって容易に抑制できるます。
  11. 国内民間部門の収支+国内政府部門の収支+海外部門の収支=0国内政府部門の赤字は「国内民間部門+海外部門」の黒字を意味します。バブル期に政府債務が減ったのは、民間債務のかじょうの裏返しです。
  12. 税収=税率×国民所得。政府は税率を自在に上げられるが、国民所得は景気時代なので、税収は重い道理に出来ないし、歳出削減や増税は景気を悪化させます。歳出削減や増税は、やっても無駄であるし、デフレ下ではやってはならない。
  13. 財政政策の目的は、「財政の健全化」ではなく、デフレ脱却など「経済の健全化でなければならない。
  14. 自由貿易が経済成長をもたらすとは限らないし、保護貿易の下で貿易が拡大することもあります。
  15. 主流経済学者は過去30年間で、進歩するのではなく、退歩したと書いています。このことはこの本の中で書かれていることの主要部分です。

経済のことはよくわからないのですが、現在かなり問題になっている理論のようで、賛否両論があることから読んでみましたが、わからないまでも少しは経済の勉強になりました。

関連記事(一部広告を含む)

お越しいただきありがとうございます。不備な点、疑問点、間違いなどありましたらお手数でもお問合せよりお知らせ頂ければ嬉しく存じます。


スポンサーリンク

-本・読書感想・映画
-