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『こころ』夏目漱石著|恋の三角関係と孤独

2016年3月29日

『こころ』は夏目漱石の小説の中でもかなり有名な小説で、教科書にも出てくることからほとんどの人が何らかの形で知っていると思われます。

今年(2016年は)は漱石の没後100年にあたることから漱石についての記事が目立つようになっていますが、『こころ』は1914年朝日新聞に連載された小説で、死の2年前に書かれたものです。

私はかなり前に読み、ほとんど忘れかけていた内容で、読み進むにつれて思い出すという感じで読んだのですが、以前に読んだ読後感とはなんとなく違った感じで読み進むことができました。

かなり読まれている作品なので、小説のあらすじは知っている方が多く、教科書にも載っていたので読みつくされた感じのある小説ですが、若い時に読んだのとは違った視点から読んだような気がします。

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『こころ』は、人間を信じることの難しさ、自我と孤独を見つめた小説

書き出しは、学生の私が海水浴に行った鎌倉で先生と呼ぶことになる人との出会いから始まります。

私は、そっけなく孤独で友達も多くないような先生にひかれ、東京に戻ってからも頻繁に先生の家に尋ねることになります。

隠遁生活を送っていて、世間との接触があまりない先生は孤独で寂しい感じの生活をしているが、美しい奥さんとは睦まじい生活をしていて、わけがありそうなその先生にひかれていくのは彼自身も孤独だったのかもしれません。

100年前の文学を読むときには、下女を雇って何もしないような隠遁生活が送れるような人がいることとその当時の学生生活というものの時代背景を理解することで読解度が上がると思います。

先生はかなり裕福な生まれですが、両親が相次いで亡くなり叔父にその財産の多くを取られてしまい残ったものを現金に換えて東京で学生時代を送っていたのですが、その根底には親族といえども信用できないという不信感を抱くことになっていました。

しかし、その財産で一度も仕事をしないで生活できるというほどの財産ですしし、現に先生は一度も職に就いていませんからかなりのものだったと想像できます。

何度か尋ねているうちに先生は、雑司ヶ谷にある墓地に月参りをしていることを知ることになり、のちにその墓は先生の奥さんとの恋敵であったKの墓であることが分かります。

真宗寺の次男に生まれたKは医者の家に養子に行ったのですが、医者にはなりたくないために欺いてほかの科に入って勉強していたことが知られ、養子先から縁組を解除されて、実家からは勘当されるというような境遇になっていました。

働きながら学問を続けていたKを先生が間借りしていた奥さんとお嬢さんのいる家に住まわせることにして二人に約束してくれるように頼みました。

先生はそこのお嬢さんを好んでいたのですが、ある種の人間不信のためもあり、Kがそのお嬢さんを好きになるなどということを考えることもなかったので安心していたところ、Kからその恋心を打ち上げられて驚くことになります。

先生はKに自分の気持ちを打ち明けることもできず、奥さんにお嬢さんをくださいと話し快諾をいただくことになりました。

すべてのことに抜きんでて強い精神の持ち主だったKがそのことを知った2日後に自殺をしてしまうのです。

これは最後の章の先生の手紙に詳しく書いてあるのですが、結婚はしたもののその後の先生は親友を裏切った自分を許すことができずに孤独な人生を歩むことになります。

何事にも強い精神で臨んでいたKにとっての、その恋は打ち明けられるものでもなく深く思い悩むことになったのは自分の境遇ということが大きかったように思われます。

しかし、嫉妬にかられた先生は自分のお嬢さんへの思いをKに話すことなく裏からことを運んでしまったのは、幾分理性を欠いた行動だったようで、それが先生をその後の人生を苦しめることになりました。

先生は恋人を得ることはできましたが、自分の心の平穏は失ったままに先にも進めずとても寂しい人生を送ることになりました。

そんな苦しい生活の中で、明治天皇が崩御され、乃木希典の殉死により、先生も死を覚悟して実家で父の看病をしている私のもとにそれまでの経過を書いた長い手紙を届けることにしたようでした。

その手紙には奥さんのその後の生活を案じながらも、先生とKの間に起こったことは言わないでほしいと結んでありました。

明治天皇の崩御は現在の私たちには理解できない程、その当時の民衆にとっても大きな出来事であったようで、それを理解したうえでこの小説も読まなければならないのでしょう。

しかし、文学というものを理解するうえでその時代背景を理解することはとても大切だとは思いますが、人間の心のうちに流れている、裏切りや寂しさは何時の時代でも変わることはありません。

先生は叔父に裏切られて人間不信に陥っていながら、友人を裏切ってしまったという寂しい心を終生持ち続け、癒えることが無いまま死んでいくことになるのです。

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