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『それから』夏目漱石著|時間の経過とともに変化する心を描いた名作

数十年前の若いころに夏目漱石の小説を数冊読んでいて、かなり間を置いた近頃に『こころ』『門』『それから』と後から書いたものから読み始めています。

若かった時にはほとんどあらすじを読んでいたため、現在の読後感とは違っていたように思います。

しかし、今回読み始めた夏目漱石の小説にはかなり感動して次から次にと読みたくなってしまう不思議な魅力を感じています。

『三四郎』『それから』『門』を前期三部作と言われているようですが、私は『門』を先に読みその後に『それから」を読むことになりました。

前期三部作の最後から読み、最初に当たる『三四郎』は未読です。

1909年(明治42年)6月27日より10月4日まで、東京朝日新聞・大阪朝日新聞に連載されたようですので、明治後期の時代背景になっているのでしょう。

そのような時代背景を考えながら読み進むことになりましたが、現代にも通じる考え方は時代を超えて私の心を揺さぶりました。

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「高等遊民」である代助から学ぶ働き方と恋愛

東京帝国大学を卒業した長井代助は30歳になるが、職業も持たず婆さんと門野という書生を雇って親のお金で一軒家を構えて優雅な文化的な生活を送っています。

生活に困らないし、頭脳明晰で知識は豊富なうえに、精神的にはニル‐アドミラリ(何事にも驚かない)という域に達していました。

代助にとって何もしないでいることは職業のために汚されない内容の多い時間を持つことができるという思いであるが、最高の教育を受けながら社会に出て働かずに親のお金で暮らしているという現実は今一つ納得ができないことですが、その時代においてはどのような位置づけになていたのだろうと思いました。

言ってみれば裕福ゆえに出来得た生活ではないかとしか想像できませんが、当時の事情に疎いために理解できないのかもしれませんが、そのことを差し引いても代助の精神性には感動を覚えます。

代助の親友である平岡は大学を終えて銀行に勤め、1年後に結婚したがそれは代助が斡旋しての親友の菅沼の妹の三千代との結婚であり、間もなく支店勤務になり東京を離れたのだが職を止めて戻ってきました。

菅沼は代助に妹の三千代を引き合わせるために呼び寄せていたので、代助は三千代とはかなり親しくしていたのですが、三千代の母と兄は相次いでチフスで死んでしまいました。

菅沼のところには、平岡も出入りしていたので、平岡から三千代と結婚したいと打ち明けられた時に代助は自分の心を押しやって友情のために働いたのですが、そのことがいつまでも心の中から消えずにお見合いの話が出るたびにその気になれずに断り続けています。

そのような思いを持っている代助は、放蕩をして三千代に苦労を掛けている平岡を見ることになったのを耐えることができません。

代助が三千代に同情の心を持ち時々尋ねることから、代助に捨てられたと思っていた三千代との距離は自然に近づいていきます。

姦通罪があったその時代に親が進める縁談を断って三千代と結婚しようと代助の心は決まっていくのですが、それは職を持っていず、夫のいる三千代とのことですから、簡単なわけにはいきません。

縁談を断った段階で父からは今後の経済的な援助を打ち切ると言われましたが、平岡との談判の方が代助にとっては大変なことでした。

会って話すべく、手紙を書いたが返事が来ないので、書生の門野を使いに出すと三千代が病気であまり芳しくないとのことで、明日尋ねてくるという言伝をもらってきました。

そして、三千代との間のそれまでの経過をすべて話すと、平岡に今は病気だから渡せないが治ったら渡すという返事をもらい、その後は絶交を言い渡されます。

家にも訪ねてきてもいけないし、会わせることもこともできないと言われた代助は平岡の家の周りをうろつくのですがどんな情報も得ることができないまま数日が過ぎます。

そんなある日の朝、兄の誠太郎が平岡が父あてに書いた長い手紙を持ってきて、本当のことかと詰め寄ります。

代助が本当のことだというと、兄は父親は今後子だとも親だとも思わないと言っていたといい、兄からも絶縁を言い渡されます。

何もかも亡くした代助は三千代の病状も分からないまま、職探しにと出かけるのです。

この最後の下りは代助の灼けるような気持が鮮明に書かれていて、読者にその後の成り行きをゆだねて終わります。

若かった代助は三千代との恋愛よりも平岡との友情を優先したことを悔いることになるわけですが、そのような二苦い経験は代助をも成長させ、三千代のために世の中のすべての人を敵に回すことになるのです。

三部作と言われる『門』はこの物語の続きではありませんが、友達を裏切って結婚した夫婦の生活の様子が書いてあり、あたかも続きのような感じを読者に与えることになりますが、そのような思いで読むことも可能ではないかと思ったりします。

『それから』の最終章の展開は激しくドラマチックであり、読み応えのある物語です。

100年の歳月を経ても色あせることのない夏目漱石の作品にどっぷりつかって、生きることの意味を考えています。

私はこれらの作品を ipad mini にダウンロードした青空文庫の電子ブックで読んでいます。

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