立憲民衆党の党首枝代表がめざす社会の未来像を書いています。
政権交代を視野に入れながらも、何をしたいのか分からないとよく言われますが、ここに書いてあるのは政権交代後どのような社会を作っていくのかその覚悟を書いています。
2017年民主党が割れて、一人で立ち上げたのが立憲民主党です。私はもちろん応援しましたが多くの賛同者をえて、野党第一党になり、その後希望の党に行った民進党の仲間が、国民民主党となり、無所属から立候補した仲間と2020年9月に合流、150人の議員からなる新たな立憲民主党を結成、2021年の秋の衆議院の選挙でどの位自民党に食い込めるか支持層の人が期待を抱いている時期に出した文春新書です。
『枝野ビジョン』を読む
2014年頃から執筆したというので、7年の歳月をかけて世に出た本と言うことになるようです。
私のように枝野代表を支持し、様々な本や演説を聴いているものにとっては、書いてあることがすんなりと分かり、その冷静さ故に、言うことは大きくぶれないので安心して読みことができました。
ただ、世界中が、新自由主義に向かっていた時期にはその方向に向いていたようですが、社会が成熟をして少子高齢期を迎えた現在は、大きな政府を目指し、公助の社会を構築する方向に転換しているようです。
第1章 「リベラル」な日本を「保守」する
枝野代表はリベラルであり保守であることを一貫して主張してきています。
日本の長い歴史の中から良いものを守っていくこととの意味、多神教文明、水田稲作を軸とした農耕社会を基本として歴史を重ねてきたことが日本の重要な特徴だと説いています。
水田稲作は地域社会で水資源を確保しなければならないと書いていますが、田植え時期は上から順番に田んぼに水を入れるのを基本としているために抜け駆けなどできないシステムが、慣例として農村には引き継がれています。
棚田に水をためることにより、水害が防いできたという歴史もあります。
戦後、水をためることのできた広葉樹林を切り倒し、杉を大量に植えたために、山に水をためることができなくなり大きな水害が起きる一因になっていると私も思っています。
高度成長期が終わり、少子高齢化社会になった現在、今までと同じような政治を行っていたのでは、貧富の差は開くばかりで国民の幸せは得られないという考えに至ったようです。
第2章 立憲民主党に結成に至る道筋
枝野幸男氏は55年体制が崩壊した選挙と位置づけられる衆議院選で、日本新党の候補者公募に合格、二十九歳で当選、それが中選挙区での最期の選挙だったと言うことです。
自民党の分裂、連立政権として与党としての出発でありながら、自民党の層の厚さを感じさせられながら、多くの政治家を見てきたのだろうと思います。
それを経験した若き政治家として、政権交代をしたときは大きな力となるだろうと思いました。
2009年与党として鳩山内閣後の菅内閣では、官房長官として、東日本大震災に対応、野田内閣では経済産業大臣として活躍、大きな経験を積んでいます。
現在の立憲民主党の中にも、与党としての大臣経験者もかなりいるようですので、政権を取ってもその経験は生かせるのではないかと期待しています。
1人で立ち上げた立憲民主党も国民民主党や無所属の仲間と合流、新しい立憲民主党になって「支え合いの政治」という明確な旗印は「時代の要請」だと受け止めていると書いています。
第3章 新型コロナウィルス感染症が突きつけた日本の課題
「新自由主義的」な社会システムにより、目先の効率性に偏重した社会はコロナ禍の中で、いかに脆弱であったかが明らかになりました。
自分さえ良ければと言う意識が、医療従事者や宅配業者、その家族などに対する偏見が生まれたことも自己責任の社会が作り出した分断となって表れました。
保健所の統合、医療機関の統廃合により、医療崩壊と言うまでに追い込まれ、政府は機能せず多くの人たちを苦境に陥れたことにより、医療、介護、保育・学童保育、障害福祉などのケアーサービスなどを充実させるための政治を行う必要性を説いています。
過度な自己責任社会から「支え合い、分かち合う」社会をめざすべきだとの考えからです。
第4章 そもそも日本は今、どこにいるのか
少子高齢化社会社会で、購買意欲が減少している時代に、GDPの成長は困難になっています。
もはや世界は、大量生産で量的な生産を向上させれば、人々の暮らしは良くできるという、時代ではなくなっています。
新型コロナウィルス感染症危機の下で明らかになった、日本の経済・社会・行政の脆弱さは、近代化の限界であることがあきらかになりました。
明治以来積み重ねてきた社会の前提のあり方が変わり、積み重ねてきた経験が通用しなくなっています。
第5章 新自由主義の限界
アベノミクスの財政出動・金融緩和・規制緩和の3本の矢は、本質的な効果には繋がりませんでした。
人口減少社会の中で、新自由主義を進めても経済政策の限界を露呈しだけでなく、格差を広げ、社会に分断と利己主義を広げてしまったようです。
第6章 近代化の先にある社会の理念
ある程度のものがいきわたった高齢者は、いつまで生きるか分からない老後の不安を、若者は非正規雇用などの不安な雇用形態や子育ての不安に苛まれています。
親世代の介護を子供がになうことになれば、自分たちの生活が脅かされかねません。子世代が安心して働き子育てができる社会を目指していくことを提案しています。
そのためにが「支え合い、分かち合う」社会に転換していくことを訴えていきたいと言います。
しかし、支え合いは弱者保護ではなく、大多数の国民はこれまでの豊かさを維持できないのではないかと、不安を抱いていることから普遍的な「支え合い」で「情けは人のためならず」であり、機能しなくなった家庭や地域の共同体に変わり社会全体の支え合いのシステムを政治と行政が担うことだと書いています。
第7章 「支え合い」の社会における経済
それを必要としている個々人を支え所得を押し上げることは、国内消費を拡大ささせることに繋がり、経済が活性化することに繋がります。
政府は民間企業の人件費を引き上げさせるための政策手段は持っていないことから、公的サービスに従事する比較的低賃金の看護師や保育士、介護職員、学校保育の指導員、非正規が多いハローワークの職員や消費相談員、児童相談所や労働基準監督署の職員などの賃金を底上げし、正規雇用を原則とするなど、公的な財政支出を最優先で振り向けていくことは社会保障の充実にも繋がるのではと思いました。
社会保障が充実すれば、いつまで生きるか分からない高齢者の不安も解消することにより、高齢者の消費拡大に繋がります。
教育政策でもサービス提供の量と質を拡大し教員の長時間労働を減らし、貧困で教育を受けられない児童生徒を減らし、給付型奨学金の拡充などにも時間をかけて取り組んでいきたいと書いています。
第8章 これからの成長の芽はどこにあるか?
資源や食料を輸入に依存している日本社会は、豊かな暮らしを維持するためには輸出により資金を、国際経済の中で確保する必要があります。
そのために、中小企業・小規模事業者においてし相対的に高い付加価値製品を持つ製品やサービスを生み出すことは有利であると言います。
日本経済の鍵を担ってきた、海外からの観光客を支える観光関連、運輸関連の産業は、多くが中小企業・小規模事業者でコロナ禍による海外からの入国規制で、観光バス事業、通訳やガイドまで経営危機に陥っています。
また、中小企業・小規模事業者にコスト削減や効率化を求めすぎて、全く余力のない状況に追い込みながら日本経済を回してき「ツケ」が回ってきたのではないかと。
こうした状況から脱却し、中小企業・小規模事業者の小ささ故に背負っている弱点を補いながら、有利さを引き出し、それらの企業に寄り添っていく覚悟だと書いています。
その他、自然エネルギー分野での政策を柱に原発に依存しない脱炭素社会を実県していくと言います。
第9章 「機能する政府」へのアプローチ
経済的な格差の是正を進めるためには「支え合い」のために生じるリスクとコストが特定の存在に著しく偏っている状況をどのように改善するかが大切です。
コロナ禍で特に大きなリスクを背負った人たちには、医療従事者、介護や保育などのケアーサービスに関わった方、物流、小売り、旅客運送に関わる方、警察など公務労働に関わる方は、どんなにリスクがあっても、無理をさせていると分かっていても、命がけで頑張ってくれなければ、社会は成り立ちません。
そればかりではなくコロナ禍は、多くの産業に関わっている方に影響を与えました。
コロナ禍だけではなく、今の社会は特定の人がより大きなリスクを負っている。そのコストを社会全体で分かち合わなければなりません。
リスクとコストを平準化し、再分配することが政治の最大の役割だと打いいます。
公的介護や保育の提供料と信頼できる質の確保をすべての国民が安心できる状況まで拡大するには、現場を魅力ある雇用の場に変えて、人手不足を解消する必要があります。
そのようにするためには財源が必要になり、大きな財政は拡大せざるを得ません。
そのためには大型公共事業から支え合いのための公共事業に財源を振り向け、既存のインフラを補修・回収していくニューズの高まりで、雇用を生み出し、地方の活性化に繋げて行くことにより、地方の活性化を図ることを考えています。
すべての国民は必要なサービスを受けて安心して暮らせるような、ベーシックサービスを充実させ、より所得の多い人からは税金として負担してもらうような社会をめざす考えのようです。
そのためには機能する政府をめざすことが大切だと説いています。
第10章 支え合いくつかの視点いくつかの視点
支え合う社会をめざすためには財源はどうするかとの問いかけがなされてきましたが、特に消費税の負担増には抵抗が大きいようです。
長い間、非効率な行政で、納めた税がきちんと使われていないという不信感があり、私物化と思えるような使われ方をしてきていたので難しいと言います。
そのようなことから、まずは支出増を先行させ、確かにサービスは実行されているという実感をしてもらうことにしま将来に将来ににツケを残すことになる財政赤字の拡大はできるだけ早期に止める必要があります。
税制改正で所得税や法人税が減少したことから、直間比率の逆見直しなども視野に入れ、コロナ禍の現在は、低所得者や所得のない人への対応として「給付付き減額控除制度」も考えているようです。
疲弊する地方をどう支えるかも問題であり、地方分権を進めることも視野に入れています。
また、食料の確保は政治の最大の役割であることから、第一次産業を支援する方向に、政策の転換を図って、「戸別所得保障制度」を復活させ拡大していき森林管理をして災害を防ぐ方向に持って行きたいという嬉しい政策が書かれています。
私は農村地帯には住んでいませんが、大雨で山崩れが起きている場所をドライブなどで見るにつけ、そのような政策を望んでいたからです。
第11章 地に足の付いた外交・安全保障
外交や安全保障は、独立したほかの主権国家との関係に寄ることから、他国の動向に大きく左右されるし、財政を始めあらゆる内政事項も、他国との関係を否定できないことから、他の政策分野とは根本的に異なると書きます。
それには国家として揺るぎない基本方針を踏まえつつ、我が国が「何を目指すのか」と同様に、「何ができるのか」を強く意識しなければならないと言います。
立憲民主党の綱領も「健全な日米同盟を軸に」との基本方針だが、米国に対し地位協定の改定を粘り強く働きかけていき、普天間基地の危険除去に向けた新たな協議を米国に対して丁寧に求めていくと書いています。
民主党政権下の防衛力構想を基本姿勢に「イザ」というときに真に国土と国民を守ることのできる地に足の付いた安全保障政策を推進するとまとめています。
まとめ
安倍政権、管政権と独裁とも思われる政治を見てきて、今度こそはまともな政治をしてくれるような政権交代を望んでいますが、自民党は地方に根付いているために政権交代にまでいけるかは期待できないかもしれませんが、
せめて野党が少しでも議員を増やすことができれば、今までとは少し違った政策を望めるのではないかと期待しています。
貧富の差が大きくなっていますが、多くの国民は自己責任という言葉にならされ、政治に頼ろうとしなくなっています。
せめて、自分らしく豊かに生きられる社会の到来を私たちは待ち望んでいます。
コロナ禍の中で、まともに食べられない人もいるようです。
そのような人が減り、すべての人が豊かに生きられることを、枝野ビジョンを読んで感じることになりました。