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『ツーカとゼイキン』明石順平著ー知りたくなかった日本の未来

明石順平氏は1984年生まれの弁護士です。主に労働問題、消費者被害事件を担当しているようです。

著書には『アベノミクスによろしく』や『国家の統計破壊』『データーが語る日本財政の未来』などがあるようですが私は著者の本は初めて読みました。

『ツーカとゼイキン』は、通貨を通貨の歴史からひもといていきます。

私は経済についてはずぶの素人なので、かなり読みやすく書いてあるのでしょうが、間違った受け止め方をしてしまうかもしれません。もしそのような書き方があったときは私の問題である事を断っておきたいと思います。

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『ツーカとゼイキン』のあらすじと感想

現在、税金についてはMMTを推奨している経済学者がかなり多く、著書も多く出版されています。

私も中野剛志著「奇跡の経済教室」を読みましたが、貨幣論についてはどちらの考えもほとんど変わりがないようですが、MMTについては、デフレ時には通貨をどんなに増やしても大丈夫であると考えるMMT経済学者の理論とは根本的に違っています。

第1章 通貨と交換

第2次世界大戦の捕虜収容所の出来事から、たばこが貨幣の代わりになり物々交換が始まったことを書いています。

たばこが多くなると少ないコーヒーや紅茶としか交換できないが、たばこが少なくなり、たばこをほしい人が増えると、1本のたばこでも多くのコーヒーや紅茶と交換できるようになりなす。

タバコに価値があるという信用の元に物々交換が成り立ち、タバコの量により換えることが出来るコーヒーの量が変わることで、デフレとインフレの説明をしています。

第2章 硬貨と紙幣の歴史

通貨が出来る以前の社会では、通貨の代わりとしてとして使用されたのは、布や米が多かったが、持ち運びが大変なことから銀貨、銅貨が使われるようになり、通貨として信用されるようになりました。

通貨も発行しすぎると価値が下がってしまい、新銭を発行するようになります。しかし増やした銭ほどには、世の中に存在するものやサービスが増えなかったので、物価がどんどん上がっていき、インフレになりました。

物価が上がれば、銭の価値が下がるから、銭を発行する。そうしないと朝廷が物資の代金や賃金が払えなくなるので増やすというようなことを繰り返すことになり、スパイラルが延々とつづくことになります。だからどこかの時点で、新たな銭を発行して価値を旧銭の10倍にして数を抑えようとすることが繰り返されました。

硬貨の数が増えると銅の含有量の少ない硬貨を発行したので、傷みが早かったこともあり、布や米が使われるようなったこともあったが、不便だったために、紙が通貨に近い形で使われるようになります。

これは切符系文書と呼ばれるもので、官庁や公家、寺社が米などを蓄えている機関に支払いを命じる文書だったが、これが、紙幣が使われるきっかけになったようです。

しかし昔からお金が足らなくなると、お金をすって増やすのでだんだん価値が下がるという現象を繰り返してきたのが、お金の歴史のようで、今に繋がっています。

通貨を増やすと物価が上がり、通貨が減ると通過の価値が高くなり物価が下がるということを繰り返しながら、通貨の価値が歴史的に認められるようになってきます。

明治政府は、1871年新貨条例を公布し、金貨が本位貨幣となりました。1876年に国立銀行条例を改正し、兌換の対象を政府紙幣にし、金化との兌換義務をなくしてしまったことにより国立銀行は1879年に認可が打ち切られるまでに153行にまでふえ、西南戦争の軍費を賄うため、政府紙幣も増刷され、銀行券も増刷されたので、急激なインフレになってしまいました。

そこで政府は増税などにより紙幣を回収し、歳出も減らし紙幣の流通量を減らして、一つの銀行に価値の安定した兌換紙幣を発行させることにして1982年に日本銀行を設立しました。

第二次世界大戦がが終わる前年の1944年、アメリカとヨーロッパの主要国が主導して、ブレトンウッズ体制という通貨体制が発足し、アメリカのドルを基軸とした固定為替相場制を発足、円は1ドル=360円で固定されました。

戦後の世界のGDPの伸びが大きくなり、もはや金本位制では、この急激な経済成長に合わせることが出来なくなり、アメリカは1971年ドルと金の兌換を停止すると宣言しました。

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第3章 借金で通貨が増えていく

銀行が「1000万円大金を貸す」ということは「1000万円の預金記録を作る」ということだと「奇跡の経済教室」でも書かれたように「貸せば貸すほど預金が増える。こうした貸し付けによって預金が増えていく仕組みを信用創造といわれます。

借金というのは、現在の価値と将来の価値のとの交換ということになります。

江戸時代の両替え商と同じく民間がお金を生み出していることと同じことのようです。しかし、際限なく貸すというわけではなく、その人が返せる信用を基準にする。土地などを価格を基準に担保とすることもあります。

民間銀行は日銀に当座預金を預けておき、それを引き出すときに日銀はお金を発行します。銀行は日銀からお金を借りるか、何かを売らないと日銀からお金を得ることは出来ません。

簡単に言うと、民間が借金するか政府がするかしないと、基本的にお金は増えていかない。著者はグラフを用いてマネーストック(金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量)とマネタリーベース(日本銀行が世の中に直接的に供給するお金)を表わしているが、2013年位までは貸しすぎでお金が増えていた現象がよく分かります。

プラザ合意により円高になったため、不景気になることを恐れた日本は公定歩合を引き下げたことにより、市中金利を引き下げお金を借りやすくしたのが、バブルを生んだきっかけでした。

お金を借りやすくしたことで、土地転がしが始まり、株高が進行しました。あまりにも土地の価格が上がったために、1989年から日銀は公定歩合を上げ、1990年には6%までにし、不動産融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑える行政指導を行った。この結果土地の値段は急激に下がっていき、バブル景気は終わりを告げました。

その結果銀行は多くの不良債権を抱えて、次々に破綻することになりました。日本を代表する金融機関もそれ以外の金融機関も次々に破綻して金融危機に陥りました。

その後「ITバブル」と呼ばれるインターネット関連企業を中心とした実需投資や株式の高騰が起き景気が良くなった時期があったが、リーマンショックで、再び不景気に見舞われました。

リーマンショックも「貸しすぎ」が原因でした。

第4章 国債と通貨の関係

日本の政府の負債の8割を占めるのが国債です。2017年度末の資産合計は670兆5140億円、負債合計が1238兆8750億円になっていて、負債の方がはるかに多く、その8割を占めるのが公債残高になっています。

建設国債は公共事業に使うお金を調達する国債で、最も多く発行されているのが特例国債です。公共事業費以外の歳出に充てる資金を調達するために発行される国債で、赤字国債とも呼ばれ、年金、医療などの社会保障などに充てられます。

60年償還ルールが導入されたのは1967年が含まれる5年間は、日本の歴史上最も名目・実質GDP成長率が高かった時代で、名目GDP成長率は17.4%、実質GDP成長率は10.9%もありました。他方、2011年から15年度の平均成長率は1%にも届いていません。

下がる成長率と反比例するように、建設国債と特例国債のは発行額が増えています。60年償還ルールが適用されるのは建設国債のみだったが、その場しのぎで特例国債にも60年償還ルールが適用され続けています。

そして、国債発行総額は増え続けていて、その国債を日銀が買い支えているので、金利が上がらないが買い支えが出来なくなったとき(返済能力がなくなったとき)に、返済能力能力に対する信頼が下がって、金利が上がってしまうことになります。

つまり、金利上昇→借金拡大→日本財政の信頼低下→金利上昇→借金増大→日本財政の信頼低下→金利上昇・・・・という地獄のスパイラルが発生する可能性があるといいます。

そうなったときに日銀に国債を買ったもらってデフォルトは避けられたとしても、円の価値が下がってしまいます。中央銀行が政府の発行する国債を直接引き受けたら、通貨の発行量は増えすぎて通貨の価値が下がる。そしてそれが急激な物価上昇を引き起こします。

中央銀行に国債の直接引き受けをさせて財政支出を行うと確実にマネーストックが増えて物価が上昇します。

つまり、支出増やす→物価上がる→上がった物価に合わせて支出増やす→物価上がる→上がった物価に合わせて支出増やす→物価上がる・・・というループが発生します。それでどの国も中央銀行による国債の直接引き受けを禁止していると言うことです。

政府債務残高の名目GDPは太平洋戦争末期は200%を超えていたが、今もすでに200%を超えているようです。戦後も「通過の過剰供給」によるインフレだったようです。1949年2月から財政金融引き締めを行った結果物価の上昇は止まったが、景気が悪化し、失業が増えた。このように通貨供給を絞ってインフレを鎮圧した後に訪れる不況を「安定恐慌」と言うようです。

戦争以外でも極端なインフレは何度も発生しているようです。

第5章 アベノミックスが円を殺す

アベノミックスは「3本の矢」を掲げているが、事実上は大胆な金融政策につきると言ってよいという。大胆な金融政策というのは日銀が民間銀行から大量に国債を購入し、お金を大量供給することで「異次元の金融緩和」といわれています。

ピークの時は年80兆円のペースでマネタリーベースが増加するよう買い入れをしてきました。日銀は民間銀行の間で国債を売買することによりマネタリーベースを調整し、それを利用して金利を上げ下げしています。マネタリーベースが増えれば、お金の希少価値が下がり、金利も下がります。減ればお金の希少価値が上がり、金利も上がります。

金利が下がれば、借金しやすくなります。借金が増えると言うことは預金通貨が増えることで、みんなの持っているお金が増えることだから物価が上がりやすくなると言うことになり、逆に金利が上がれば、借金しにくくなり、預金通貨の増える速度が落ちると言うことになり、みんなの持っているお金が増えず物価は上がりにくくなります。

日本はバブル崩壊と、金融危機の影響を受けてずっと景気が悪い状態でした。そこで景気を良くしようとしてどんどん金利を下げていってゼロに近い状態になってしまい、それ以上下げられない状態になってしまいました。

安倍政権になって積極的な金融緩和をして物価を上げていけば景気が上がると提唱する人があらわれました。その人達は「リフレ派」と呼ばれていますが、そのもくろみは失敗に終わり、マネタリーベースだけが3倍に伸びてマネーストックは増えませんでした。結局「お金を借りたいという」需要がなかったのです。大失敗でした。

マネーストックによる物価上昇は起きなかったが、増税と円安による物価上昇は起き(原油安で幾分緩和されたが)、2018年までに6.6%も上がり、実質賃金は下がり国民の生活は苦しくなっています。

マネタリーベースが膨らみ続けている状態で、出口が見えない状態になっているようだが、今まで経験した事のない規模なので、先が見えないし、どのようになるかも分からない状態に陥っているようです。

第6章 税金が通貨の信用を支えている

税金はもともと現物で取っていたし、直接労務も提供させていました。穀物や布、地方の特産品などを納めさせていたが、すべて通貨で徴収するようになったのは明治維新の後からです。

税とは「価値を集めて、それを分配するもの」だと定義され、すでに発行した硬貨を税として回収し使い回すという点がポイントだと説きます。

国債の信用を支えているのは、税金です。税金で元本と利息を払ってもらえるという信頼の上に国債は成り立っています。その国の国民が、税やサービスなどの価値をこの世に生み出していくということが信頼の前提になります。

財政が安定して信頼の出来る国の国債なら人気があるから価格も安定し、国債と表裏の関係にある通価の価値が高まって安定します。日本の場合は、財政が安定しているというより、金は余っているけどめぼしい投資先がないし、みんな買っているから」という理由で国内金融機関が思考停止状態で国債を買い続けたから、値段が安定しただけで、今では日銀が国債を爆買いしているいるから、値段が安定しているようです。

GDPはその国が生み出した価値を全部合わせたものだから、それが返済能力の目安にになります。

借金の大きさは政府総債務残高対GDP比が重視されます。そして日本の現在の政府総裁無残高対GDP比は273。1%で、先進国の中でダントツのようです。

現在の税収は所得税、消費税、法人税が基幹3税といわれ、税収対GDP比は日本は36カ国中26位の30.7%になっています。

また、社会保障費は36カ国中15位の21.9%で、税金の重さは下の方なのに社会保障費は真ん中より上にいるということになります。日本の数値が低いのは、景気対策のために減税をしすぎたことも影響しているようです。

景気が悪くなればただでさえ所得税収が減るのに景気を良くするために減税をしたが、肝心の景気は回復せずに税収が減っただけになったしまいました。そして所得税は非常に不平等な状態になっているようです。株を売ったお金には一般の税率が適用されず、所得税と住民税を合わせて一律20%の分離課税になっているため、株でもうけている人の税金は1億円を超えるとだんだん安くなっていくようです。

法人税もだん段引き下げられてきているが、これは世界的なことで、法人税が高いと企業が外国に出て行ってしまうことを憂慮したことのようです。法人税についても大企業が有利になっているようです。

所得税や法人税は景気に影響されやすいが、消費税は安定財源になり得るし、社会保障の充実している国は高くなっているようですが、食費のような必需品は低く抑えているところも多いようです

平均寿命が延び、少子化が進んだことで日本は世界一高齢化率が増え医療費、年金、介護費がたくさん必要になります。増大していく社会保障費を捻出するためには景気の波に左右されず、全世代から幅広く徴税できる消費税が大きな財源になります。

消費税抜きで増大していく社会保障費を捻出しようとすると現役世代の負担がおおきくなりすぎてしまいます。

日本の消費税はかなり低く抑えられているがデンマークは税率の負担は大きいが社会保障による生活の安心感と納税によって社会に貢献しているという意識の両面から自国に対する愛着心や愛国心が強いのかもしれません。

決して無視できない事実は「社会保障が充実している国で、消費税率が低い国は存在しない」ということです。

消費税を上げることに対する日本の問題は賃金が低いということですが、消費税の高い国は賃金の伸びているが日本はほとんど延びていないという問題があります。

著者は景気が悪いのは消費税問題でなく、賃金が上がっていないことだといいます。そして少子高齢化社会はで、社会保障費が膨れ上がり財政が逼迫していると様々な統計を使って説明しています。

この高齢化社会において、税金は取られるものでなく、支え合うものと認識を変えていく必要があり、社会保障は高齢者のためではなく、若者が社会保障を受けられない親の医療費や介護費用をまかなうことになるだけでなく、介護をしなければならなくなったら総倒れになってしまいます。

今後、経済の伸びが期待できないとしたら、法人税、所得税を見直してもそれほどの税収は期待できないと思われます。

生産年齢人口が減少するのに高齢者が増えるという現象は、どの国も通る道であるが、日本はその中でも最悪の状態になっています。今後人類が経験した事のない異常事態に直面することになります。

第7章 ここまでのまとめ

ここまで書いてきた通貨の税金の歴史をまとめているので、まとめだけを読んでもある程度理解できるかもしれません。

そして、現在の世界の基準通貨はドルなので、ドルの供給量が変わらないのに、円の供給量だけ極端に増やしてしまうと、交換比率が変わり、円がドルに対して安くなってしまいます。

それは輸入物価物価の上昇を通じて国内物質の上昇をもたらします。

バブル時代は国際的な協調のもと、ドル安に誘導されていたので、円がバブルで過剰供給されたにもかかわらず、価値が落ちず、ドルに対して上がっていったとのことです。このような例外的な現象が起きたことにより日本は好景気になったようです。

兌換紙幣の時代にも、貸し出しによる預金通貨が増える「信用創造」の仕組みはあったのですが、硬貨の引き換え需要に応じる必要があるので、制約を受けていたいました。

しかし、不換紙幣はこの世に存在する価値のある物と交換は約束はされていませんが「価値がある」思い込んでいるから成り立っているだけです。

資材の制約から解放され、通貨は無限に発行することが可能になったのです。ハイパーインフレと言われる現象は、不換紙幣でしか起きていません。ハイパーインフレはアメリカの経済学者フィリップ・ケーガンによる「インフレ率が50%を越えること」という定義を採用する人が多いと言うことです。

アベノミクス物価は6.6%上昇しただけで、戦後最悪の消費停滞が起きました。実質民間最終消費支出が3年連続で起きたのは戦後初です。

今、日銀が行っている異次元の金融緩和も、実質金利を下げて借金しやすくしやすくして、預金通貨を増やし、景気を良くしようとしましたが「他にめぼしい投資先がない」と言う理由で国債が買われ続け、金利が押さえ込まれました。

だから利払費も低くて済み、極端な増税や緊縮もしなくて良かったのですが、債務は膨らみ続けました。

今は、日銀が国債を爆買いしているので、金利が低く抑えこまれています。

日本の財政は投資家が出したお金で投資家にお金を返済しているのですから、ポンジ・スキームに他なりません。ポンジ・スキームとは、「何かを運用していた利益を分配すると謳ってお金を集めるが、実際は運用などしておらず、単に出資者から集めたお金を配り直すだけ」という詐欺手法です。」

投資家たちが「危ないんじゃないか」と思って手を引けばあっという間に国債が暴落します。今は日銀が大部分を肩代わりしています。日銀が手を引いたら暴落するのは目に見えています。

国債の9割は国内で消化されているから大丈夫という人がいますが、残りの1割は海外の投資家が保有しているので、その1割の投資家が売りに走れば確実に暴落します。市場に恐怖が走り、日本人も国債を手放すからです。

何かのきっかけで円が暴落していけば、その時は日本は大変なことになりかねないというのが著者の考え方です。

今、ネットを賑わせている、MMTについても書いていますが、自国立ての国債はデフォルトにならないので、インフレにならない限り、財政赤字は問題にならないという主張です。

これに対して、「真新しいことを言っていません。」と書く。形式的にデフォルトを避けるためなら、最後は自国の中央銀行に直接引き受けさせれば自国通貨建ての国債がデフォルトしないのはその通りです。

日本のMMT論者は「今は需要に対して供給が過剰になっているからデフレなんだ。だからお金を増やしても簡単にインフレにならない」と言います。しかしアベノミクス前の2012年と比べると2018年は6.6%も物価が上昇しています。食料価格だけを抜き出すと11%も上昇しているようです。ですからデフレではありません。

日銀の「前年度比2%」という目標が達成されていないことだけを切り取って、物価は上昇していないと勘違いしていますが、物価は上昇しています。

MMT論者は何故か国内の需要と供給のみで物価が決まると思い込んでいますが、為替相場と原油価格、賃金の動向に影響します。

もし、日本が極端な財政支出をした場合、円がドルと比較して過剰供給され、確実にマネーストックが増え、円の価値が下がることを意味します。真っ先に為替市場が反応し、円売りが起き、円安を通じて物価があっという間に上昇します。

MMT論者は「簡単にインフレは起きない」という都合の良い思い込みがあるから財政支出を主張できるのです。さらに異次元の金融緩和の副作用も無視しています。異次元の金融緩和の副作用は、インフレ抑制手段の「売りオペ」が、出来ないため、インフレを制圧出来ないのではないかという点だと書いています。

MMT論者は「税は財源でない」と主張しますが、今の日本でも一般会計歳出財源の約6割は税金です。現実に税金を財源にしているのです。

MMT論者は「通貨は債務」という点を強調しますが、債務なのですから返済しなければなりませんがそれを無視しています。

マネタリーベースを増やす方法としては買いオペがありますが、この点を捉えて「国家が借金をしないと通貨が生まれない」とMMT論者は主張するようですが、中央銀行が単に民間銀行にお金を貸せばマネタリーベースは増えます。仮に国債がなかったとしても、中央銀行民間銀行などにお金を貸せば、それだけでもマネタリーベースは増えます。

国債以外の資産を民間銀行から買い入れてもマネタリーベースは増えます。日銀は大量にETF(上場投資信託)を買いいてていますが、その分日銀当座預金にETFの購入預金を入れているので、マネタリーベースは増えています。

税金で財政支出を賄う場合、すでに存在する通貨を税として徴収し、それを歳出で配り直しています。「通貨を使い回している」ということです。税金で歳出をすべて賄う限り、財政支出の拡大によるマネーストックの急拡大は起きず、通貨価値が崩れる心配はありません。

国家が無借金でも中央銀行が民間銀行などに貸し出しを行ったら何か資産を買い上げたりすればマネタリーベースは増えるし、民間銀行などが企業や個人に対して貸し出しを行えばマネーストックは増えていきます。

国に借金があればその借金に足を引っ張られるので、「現在の」国民に対して使えるお金は減ってしまいます。「高負担・高福祉の」の北欧諸国の場合、借金に足を引っ張られる部分が日本よりはるかに少ないですし、沢山税金を取っているので「現在の」国民に沢山お金を使うことが出来るのです。

MMT論者は国はもっと借金をしてお金を使え、そうすれば経済成長が出来る、と言う。それが本当なら、すでに対GDP費で見て世界一借金をしている日本の経済は、順調に成長していなければおかしいという。しかし、成長どころか世界一停滞しています。

MMT論者は市場を無視していますが、国債が市場で買われるのは、投資家が「税金でお金を返してくれる」と信頼するからです。現に一般会計の約4分の1が国債の元利金の支払いに回されています。

さらに借換債に至っては、それだけで一般会計の規模を越える100兆円以上が毎年発行されています。新しい借金で古い借金を返済しているだけですが、「返済」に変わりはありません。

返済スケジュールが守られているから何事もないかのように通貨の安定が保たれていますが、これが崩れれば、通貨が崩壊します。MMT論者は「返済」という要素を無視しているのです。消費税廃止を主張する人がいますがその人達は国際市場への影響に言及しません。

国債の信用は、その国の徴税能力に依存しています。2019年の予算では国税に占める消費税の割合は29.2%になります。国税の中で大きな割合を占め、景気に左右されずに安定している消費税を廃止すると宣言することは、国債市場に「デフォルトします」というのと同じです。国債は大暴落し、円も運命をともにするでしょう。

デフォルトを避けるために、円を発行し放題になることであり、円の価値がさらに下がると市場は予想するので円売りは止まりません。国民は地獄のような苦しみを味わうことになります。

社会保障を充実させている国々の中で、消費税の負担の軽い国は一つもないのです。そしてこれらの国々においては労働者は手厚く保護されていて、日本のように長時間労働などないし、賃金もずっとあがり続けているのです。

消費税を廃止したマレーシアは人口比も異なるし、GDPも伸び続いています。日本における高度経済成長期のような状態ですが、消費税を廃止しましたが、売上げ・サーブス税が再導入されました。高齢化も進んでおらず、経済が成長し続けているマレーシアでさえ消費に対する課税をゼロには出来なかったようです。

経済は、いろいろなことが絡み合っているため、先が見えないと言うことはあるのかもしれないと思いながらも、日本の未来がとても心配になります。

そして、現在は世界中がコロナ騒動の中にいます。コロナ後のしゃかいについてもいろいろという人がいますが、私は貧富の差がこれ以上広がらないことを願って止みません。


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