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『ノルウェイの森』村上春樹著ー「生と死」を通して傷つきやすい若者の苦悩を描いた

『ノルウェイの森』は、村上春樹の長編5作目、前作は『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』で、私が村上作品として前回読んだ作品になります。

作者が100%の恋愛小説と言っているように、リアリズム作品で、村上氏の他の小説とはかなり違っていると思いながら読みました。

「生とと死」をテーマに書いた作品で、ベストセラーとなり、映画化もされましたが、ここには小説について書きました。

それについて。

小説が十万部売れているときには、僕はとても多くの人に愛され、好まれ、支持されているように感じていた。でも『ノルウェイの森』を百何万部も売ったことで、僕は自分がひどく孤独になったように感じた。そして自分がみんなに憎まれ嫌われているように感じた。

と言っていたようです。

『ノルウェイの森』のあらすじと感想

1969年頃に活発化した学生運動を背景に大学生の恋愛を書いた作品で、1987年に初版が発行されましたが、『村上春樹、河合隼雄に会いに行く』の中で、村上氏はノルウェイの森について「あの小説の中ではセックスと死のことしか書いていない」と言っています。

死とセックスを通し、繊細で傷付きやすい若者の苦悩を書いた本書は、多くの読者を持つ反面、反発もされているようです。

私は、そんな書評を読んで避けていましたが、読んでみると傷つきやすい若者の心を描いていて、とても感動しました。そして奥手の私は若いときに読んだとしたら、どのくらい理解できただろうかと思いました。

若くはない年頃になっても感動を与えてくれる本であり、ただの恋愛小説ではなく、とても繊細で大切ない生と死を書いていると思いました。

『ノルウェイの森』のあらすじ

37歳の僕は、ハンブルク空港に到着した飛行機のBGMでビートルズの「ノルウェイの森」を聴き、激しい混乱を覚え、直子といた草原の中にいるような思いになっていました。

それは、18年前の事で、直子と一緒に歩いていました。

高校時代の親友のキズキの恋人だった直子とは3人で一緒に逢い楽しい時間を過ごしていたのですが、キズキは高校3年の5月に自殺してしまいました。僕とビリヤードをした後車の中で死んでしまったのです。

その後、神戸の高校を卒業した僕は大学に入り、寮生活を送っていました。そんなある日の日曜日に偶然に電車の中で直子と出会い、デートをすることになりますが、直子は歩くのが速く、いつも僕が後について行くような感じでしたが、少しずつ距離が縮まってきたように感じた頃、直子の20歳の誕生日にケーキを持って直子の部屋に訪ねていきます。

直子はとても美しく、僕を捉えますが、捉えどころのないものを持っています。その夜は直子はよくしゃべり、泣き出してしまったために抱きしめて一緒に寝ることになりました。

その後、いつまでも連絡がなかったので訪ねていくと、部屋を引き払っていました。直子の実家に何度も手紙を書いたが、3ヶ月過ぎた7月に返事がやっとあり、今は療養中であり、京都の山の中の療養所に入ることになると書いてあり、まだ逢う準備が出来ていないが逢えるようになったら手紙を書きます、と書いてありました。

寮の中では、よく本を読む先輩の永沢さんと友達になりました。僕が『グレート・ギャツビー』を読んでいたことから、永沢さんから友達になれそうだと言われたことによります。

永沢さんは東大の法学部に通っていて、外交官僚になろうとしていました。家は大きな病院を経営していて、兄も東大の医学部で、彼も苦労しないで東大に入り、読書家で風采も良く、自然に人を引きつける力を備えています。

僕のようなものを友達に選んだ事に対して驚いたが、永沢さんが僕を選んだのは、僕が彼に対して敬服も関心もなかったからのようです。

しかし、永沢さんはいくつかの相反する特質を持った男で、恐ろしく優しかったり、意地が悪かったりしました。彼の最大の美徳は正直であったことから、彼に対して好意をもっていたようです。

彼は、素敵な恋人がいたが、夜の街でよく遊んだ。僕も誘われて何度か行ったが、そのような行為は好きではありませんでした。

後に、永沢さんが外務省の試験に受かったお祝いを彼の恋人のハツエさんとすることになったからと誘われました。ハツミさんはとっても素敵な女性で、永沢さんがいろいろな女性と付き合っているのを知っていても黙っていますが、その時は喧嘩になってしまいました。

それで、僕がハツミさんと飲んで、ビリヤードをして、永沢さんと別れた方が良いのではないかと言いましたが、永沢さんから仲直りをしたという話を聞きました。ハツミさんはそれでも永沢さんを好きだったのです。

ハツミさんは、永沢さんがドイツに行ってしまった2年後に他の男と結婚し、その2年後にカミソリで手首を切って死んでしまいました。ハツエさんの震えるような気持ちが分かったのはその10数年後の事だと僕は振り返ります。

直子の事を思いながらも、大学で演劇史Ⅱが一緒の緑と親しくなり、彼女の家に行き料理をごちそうになったり、デートをしたりするが、彼は直子の事が忘れられないし、ミドリは恋人がいると言います。

4ヶ月が過ぎた頃、施設には行っている直子から手紙をもらい、自然な環境の中で野菜を作ったり、運動をしたりして暮らしていると書いてあり、僕に訪ねてきてほしいと地図が書いたありました。

僕は京都の山奥の療養所に訪ねていくとレイコさんが出迎えてくらました。直子と38歳のレイコさんはルームメートであり、何事も隠さず話し合っているっと言うことで、寝室の隣のソファーで2晩泊めてもらうことになります。

この療養所は治療するところではなく、療養するところでありレイコさんは7年ここにいてかなり良くなり、いつでても良い状態なのだが、外に出たくないこと、直子も一時期に比べてかなり良くなっていると言うことでした。

滞在している間に、2人のこれまで経過などかなり詳しく聞き、生活を共にして直子との事を真剣に考え、冬にまた来るようにと言われて帰ってきました。

直子とレイコさんに噴飯に手紙を書き、ミドリとも幾度か合い、ミドリの父親が入院している病院に行き、1日看病をするミドリに付き合い、ミドリに散歩を勧めてその間、緑の父親を面倒を見る事になりましたが、緑の父親に親近感のようなものを覚えます。

その数日後に緑の父は亡くなり、落ち着いたら電話をくれるというので待つことになったが、かなりすぎてから電話があったときに、ミドリは旅をしていたと言い、恋人とも別れたと言います。

僕の誕生日に直子からプレゼントの手編みのセーターが届きました。半分はレイコさんが編んだと言います。

冬になり、僕は冬の療養所に直子を訪ね、2番泊めてもらいスキーをしたりして過ごしましたが、直子はあまり話さず、元気がないようでした。

ミドリとの出来事を、直子とレイコさんに手紙を書き、直子から短い返事が来ましたが、その後、レイコさんからミドリが入院することになったという手紙をもらいます。

僕はだんだん緑に惹かれていくものを感じ、レイコさんに手紙を書きますが、レイコさんからは直子に遠慮することはないという返事が来て、直子には言わないでおくことにしましょうと書いてありました。

直子は少し良くなったようなので、療養所に戻る事になりましたが、戻ったその夜森の中で命を絶ってしまいました。ずっと考えていたようで、「洋服はすべてレイコさんにあげてください。」という書き置きがあっただけのようでした。

8月の末直子の葬儀が終わって、東京に帰ってきた僕はどこに行くともなく、電車に乗り、お金がなくなるとアルバイトをし、1ヶ月旅をして帰ってくるとレイコさんからの手紙がたくさん来ていました。

レイコさんが僕の家に訪ねてくると言うことですき焼きを食べ、直子のお葬式をしました。50曲目に「ノルウェイの森」を弾き、その後バッハのフーガを弾いて、レイコさんと一緒に寝ました。

レイコさんは、「私と直子のことはずっと忘れないでね。」と言って電車に乗って函館に言ってしまいました。

僕は緑に電話をかけ、君とどうしても話がしたいんだ。話すことがいっぱいある。話さなくちゃいけないことがいっぱいある。世界中に君以外に求めるものは何もない。君と会って話したい。何もかも君と二人で最初から始めたい、と言った。

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『ノルウェイの森』の感想

あとがきに

『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』が、自伝的だというのと同じ意味あいで、F・スコット・フィッツジェラルドの『夜はやさし』と『グレート・ギャツビー』が僕にとって個人的な小説であるのというのと同じ意味合いで個人的な小説である。
たぶんそれはある種のセンティメント問題であろう。僕という人間が好まれたり好まれなかったりするように、この小説も好まれたり好まれなかったりするだろうと思う。僕としてはこの作品が僕という人間の質を凌駕して存続する事を希望するだけである。

この後書きはすごいと思いました。このあとがきのようにこの小説は人を選ぶ小説であり、酷評をされたり、愛読され、30年を過ぎても読まれ続けています。

誰の小説であっても好みはあると思うが、村上春樹の作品においてはかなり酷評されながらも、売れ続け、読まれ続けているのは、文章が平易で読みやすいと言うことが大きいのではないかと思います。

しかし、文章の平易さと裏腹に内容は深く、読む人を選ぶのではないかと思うことがあります。

いろいろな罠があり、読者に問題点を投げかけ、解釈を委ねるという手法は読む人によって、解釈が異なることがあるし、謎が溶けないまま考えさせられる事が多いのが特徴です。

この小説もそうだろうと思いますが、読む年齢、その時の心の状態などによって読後感が異なるのかもしれない言う思いもあります。

恋愛小説と言っても、年齢がたかくなっても感動できる小説だと思うし、それぞれの登場人物の心をより理解できるような気がしました。


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