林真理子氏の小説は、『白蓮れんれん』に次いで2作目です。
『白蓮れんれん』は「心の花」の歌人柳原白蓮のハランの人生を書いていたので興味深く読みました。
柳原白蓮については、菊池寛の『真珠夫人』も柳原白蓮をモデルにしたと言うことから、違った目線から書いているのを興味深く読みました。
創作作品は初めて読むことになり、著名な直木賞作家の小説を読んでみたいと思い古い本を購入しました。
『下流の宴』のあらすじと感想
初めて読む本だと思っていたのですが、読み始めてあらすじを知っていることに気が付きました。
2010年発行の本ですし、ドラマにもなっていたようですので、ドラマを見たのかもしれないと感じました。
特に覚えていたのは、沖縄の島出身の宮城珠緒が恋人の福原翔の母親の由美子から自分の父親は医者であり、医大に入るのは選ばれた人であり、珠緒のような育ちの悪い人とは一緒になれないのだと言われ玉緒は医者になることに決め、猛勉強をして医者になるという筋書きを、覚えていたのですが、その経緯は分かりませんでした。
『下流の宴』のあらすじ
福原翔は中学受験をして私立の高校2年の時に学校に行きたくないと言って行かなくなり、バイトをしています。
親の由美子としては大検を受けて大学に行ってほしいと思っていますが、息子の翔にはそんな気は全くなくバイト生活で満足しているようです。
そんな息子にイライラして、「家を出て行きなさい」と言ってしまったのですが、翔はは本当に出て行き帰ってこなくなってしまいます。
そんな折、由美子の母親から、翔の成人祝いにと10万円が送られて来ました。
由美子の母親の美津枝は勤務医の夫を由美子が10歳の時に亡くし、補整下着の販売で成績を上げ、大きな家を建て、2人の娘を大学まで入れた努力家です。
姉の加奈は高校までは公立に行ったのだが、大学はお嬢様大学に行きたいと譲らず、条件の良い男性と結婚することが目的だと言います。
母の由美子は、漫画喫茶でバイトをしているという息子の翔を訪ねていき、デパートのティールームでいろいろ聞くと玉緒という女の子と一緒に暮らしていて、結婚すると言います。
玉緒の弟が沖縄の島から出てきて、翔の好意で保険証を借りることになり、それで携帯電話を作り、翔の父親のところに問い合わせが行き、福原家に玉緒と弟が謝りに行きますが、その時翔の母から、私の父親は医者であり、あなたたちとは違うと言われたとき、玉緒は医者になって同じ人間だと、そして翔との結婚も認めてほしいと言ってしまいます。
それからいろいろなつてを頼って、2年間猛勉強をして国立の一番入りやすい宮崎大学の医学部に合格するのです。
結婚しようと思って夢中で頑張って医学部に合格した玉緒に、翔は頑張っている人のそばにいるのは辛いし、いつかは僕のことをいやになるだろうと分かれることを選んでいました。
加奈は外資のデーラーに勤めている高給取りで、高級マンションに住んでいる北沢とできちゃった婚で結婚することになりますが、北沢はうつ病になり解雇され実家に戻ったので、別居することにした加奈は孫の航一を連れて戻ってきています。
漫画喫茶は居酒屋となり、翔はそこでバイトをしているが、部屋代は出せないと、家に戻ってきています。
夫は翔について「奮起する」と言うことを一生知らずにこのまま行くだろうと言います。
由美子は上流だと思っていた自分たちは下流になってしまったと嘆くのです。
『下流の宴』の感想
世の中には本当に様々な人がいるようです。
誰もが自分を中止に考えているので、ほかの人をどうしてこのような考え方をするのだろうかと思いますが、それは多様性という生き方を認めないことになるのでしょうか。
福原家のような家庭は、バブル崩壊後の時代にわりと普通にあったように思います。
その中で、頑張れた子と頑張れなかった子供の差を大きくしたのかもしれません。親世代は恵まれていたために子供を一流大学に入れることに心血を注いだのでしょう。
そのような中で、無気力な翔のような子供、より良い相手を探し結婚に夢を抱く姉の加奈のような子供が出てくるのも不思議ではない気がします。
あまりにも期待されて育てられた結果なのでしょうか。
その点、本当に生きることを学んだ、沖縄の島出身の玉緒のような子供は自分で考えて行動するような育てられ方をしたのかもしれません。
医学部を受験しますが、医学部でなくとも、何か生きるすべを探すことのできるように考える力を幼い頃から身につけたのだろうと思います。
著者の書きたかったことは、生きる力を子供が持てるような子育てはどのようにすれば良いかと言うことではないかと思いながら読みました。