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『認知症になった私が伝えたいこと』 佐藤雅彦著ー認知症患者が書いた真実

認知症になった私が伝えたいことは認知症患者本人が書いたものなので 認知症という病気についてかなり間違えられた情報が流れていると思った私は真の病状を知りたいと思って読みました。

初めて認知症という病気の現実を知ったのは40年も前に読んだ有吉佐和子著の恍惚の人 (新潮文庫)だったような気がします。

その後、新聞や様々なメディアで取り上げられたり、周囲の話を聞く機会が多くありましたが、実感として向き合うことになったのは母が、老人性うつ病になり認知症を併発したことによります。

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認知症になった私が伝えたいことを読んで認知症が少しわかったように思った

佐藤雅彦さんは認知症についての世間一般の考え方を覆しているように、私も母を看取りながらそれまで知っていた認知症との違いを感じていました。

そしてどのような病気にも個人差があるように認知症の症状も誰もが同じという事ではないようですが、認知症になった佐藤雅彦さんの症状を読むと87歳から老人性うつ病と診断された母との共通点が見いだせるのです。

母の病気はかなり早く気が付いて、大学病院に連れて行ったのですが、総合診療科に回されて、様々な検査をした後異常がないとの診断を受けました。

私は精神科か神経内科で見ていただきたかったのですが、後で分かったことによると、どちらも予約制で2カ月くらいの診察待ちになっていました。

それから1年くらいが過ぎたころかなり進行してしまったので電話予約をして2か月待ちの診察を受けた時には、MRI をとれるような状態ではなく、認知症の検査も受ける気力がなくなっていました。

それまでの症状を書いて持って行ったので、それを読んだ先生が老人性うつ病と診断したため、認知症のはっきりとした検査は受けなかったというのが現状です。

佐藤雅彦さんも認知症と診断される6年以上も前に自分の異変に気が付いて病院に行った時も病名が分からず、うつ病とか疲労症候群と医師も思っていたというのですから、医療のお粗末さを感じてしまいます。

87歳の母が、どこも悪いところはないと言われたのと一緒ですが、その時に母は頭がぼ~として何もする気がなく、精彩のない顔になりとても疲れているようでした。

私が母と同居していたらもっと早くに手を打ったのですが、実家で弟夫婦と気兼ねして暮らしている母に対していろいろ言える立場ではありませんでしたし、内科のお医者さんに連れて行ってどこも悪くないと言われているのにでしゃばるわけにはいかなかったことが、事態を悪化させてしまうことんいなりました。

それまで、巨人ファンで野球が好きで毎日見ていたり、相撲を見ていたりした母がテレビも一切見なくなりました。

6人家族の洗濯物を個人ごとにたたんであげていた母はそれもできなくなり、私に「何が何だかわからないので、丸めて置いておく」と言っていましたが、認知症はそのようなことができなくなるという事を佐藤雅彦さんの本を読んで知りました。

母ができなくなったことが、この本にはたくさん書いてあったので、老人性うつ病と診断された母は認知症も併発していた可能性がとても大きく思いました。

母が病気になった時に読んでおけばもう少し母の気持ちをわかってあげられたと思いましたが、母が亡くなった後に出版されたのですから仕方がありませんでした。

お医者さんはほかの方に比べたら少しは分かってくださいましたが、ケアマネージャーさんなど何もわかっていないという状態ですし、同居家族にとっては同じことばかり聞く、うるさい老人になってしまい、話しもしてもらえないと泣くことが多くなっていました。

認知症になった家族のためにどのようにしてあげたらよいかと迷われた方はこの本をぜひ読んでほしいと思いました。

また、お医者さん、看護師さん、介護士さんのほかにすべての方に読んでいただき、認知症という病気について知っていただきたいと思いました。

若年性認知症で自分を冷静に見つめることができる佐藤雅彦さんと比べようがありませんし、人それぞれに症状が異なると思いますが、90歳近い母の行動とも当てはまることが多いことから、認知症の家族であり介護者として得ることは多いと思います。

認知症になった佐藤雅彦さんは生きがいを模索

佐藤雅彦さんは認知症になってから、神谷美恵子さんの生きがいについて (神谷美恵子コレクション)を何度も読んだといいます。

人間の存在意義は、その利用価値や有用性にあるのではない。

野に咲く花のように、ただ「無性に」存在している人も、大きな立場から見たら存在理由があるにちがいない。

自分の眼に自分の存在が感じられないひと、他人の眼にも認められないようなひとでも、私たちと同じ生をうけた同胞なのである。

もし彼らの存在意義が問題になるなら、まず自分の、そして人類全体の存在意義が問われなければならない。

生きがいについて 佐藤雅彦の抜粋より。

この本を読んで認知症になった佐藤雅彦さんは、外見をはばかることがなくなったといいます。

認知症としてできないことはできないこととして受け入れて、他人の手を借りればいい。できることは、なるべくそれができるように努力すればよいと書いています。

あきらめだってひとつの「希望」になると思ったようです。

生きがい喪失の苦悩を経た人は、少なくても一度は皆の住む平和な現実の世界から外へはじき出されたひとであった。

虚無と死の世界から人生および自分を眺めたことがあった人である。いま、もしそのひとが新しい生きがいを発見することによって、新しい世界をみいだしたとするならば、そこにひとつの新しい視点がある。

それだけでも人生が、以前よりほりが深く見えてくることであろう。

生きがいについて 佐藤雅彦の抜粋より。

認知症になった佐藤雅彦さんができなくなったこと

この本を読んでできなくなったことがとても多いことに気づかされましたが、まさに老人性うつ病で認知症の母の場合ととても似ていることに気が付きました。

すべては書ききれませんので、私の独断でいくつか書いてみようと思います。

  • 食事の時間がわからない
  • 今日が何日かわからない
  • 明日の予定もわからない
  • お金の管理ができない
  • 言葉がすぐに出てこない(現在の私にも当てはまる)
  • 感情的になることが多くなった
  • 生活のトラブルがあっても自分で解決できない
  • 同時に複数のことができない

佐藤雅彦さんは認知症になってもパソコンも使えますし、携帯電話も使えるように努力して使いこなし、日にちや時間の管理はパソコンや携帯電話で解決していましたが、それを使いこなせない母は何もできない状態でした。

佐藤雅彦さんは上記のようなわからないことを携帯電話やパソコンで管理して、朝5時に起きて散歩に出かけ、毎日のスケジュールを自己管理して出かけるように工夫しています。

昨日のことがわからなくならないためにパソコンその日の出来事を記録します。

パソコン、携帯電話、ipad を使いこなしていたので、それらにはその日の日付と時間がわかるようになっているので、日にちや曜日、時間の管理はできたといいます。

それらを使いこなせない母のような世代にには通用しない生活でも工夫して一人暮らしをした佐藤雅彦さんの行動は誰にでもできることではありませんが、誰かが手助けをすれば参考にはなりそうです。

母は自分が何もできなくなったことは、わかってはいましたが、「デイサービスのように、自分が行くことまでを相談もなしに勝手に決められてしまうと私に訴えていました。

私もできないことが多くなっても感情までは失っていない母のために、ケアマネージャーや家の方にも、母の意見を聞いてほしいと思いましたし、遠慮がちに言いましたがすべて無視されてしまいました。

そのような認知症の患者は多いことと思いますが、どんなことも主役である本人の意思は尊重してほしいと思いました。

認知症になったら、何もできないのだから楽だというようなことを聞いたことがありますが、そんなことはなく、何もできなくなるほど疲れて幾日も起きられないこと、かなり疲れやすく、体調が良いときと悪いときの差が激しいという事も知っておいた方が良いと思いました。

佐藤雅彦さんが言う認知症の感覚とは、本棚が崩れたような感覚だといいます。「棚に入っていた本は確かにそこにある。でもバラバラで、雑然として、整理が付かない。」と

これを読んで、母が洗濯物をたたむことができなくなったことが理解できました。

佐藤雅彦さんは若年性アルツハイマーなので、高齢になった方の発病では一人暮らしで、このように自己管理ができる方は少ないと思いますが、私が90歳の母の症状にも同じような感情を見出したのですから、認知症患者の心の声を聴くという本当に基本的なことだけでも心がけることこそ大切なことだと思ったように、この本の中にはそのような知恵がいっぱい入っています。

佐藤雅彦さんは認知症当時者の気持ちを伝えようと、講演活動を行ったり、認知症当事者の会を発足させたりと様々な活動を行っていますが、容易はことではないと思います。

現在、認知症を患っている方、将来病むかもしれない方などが、認知症とはどのようなものかを初期段階から理解するにはどのような本を読むよりも本人が書いた本は有益だと思います。

母の認知症で数年間悩み続けた私が役立てなかった、この本を認知症の家族の方に是非読んでほしいと思いました。



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