『門』夏目漱石著|親友を裏切りその妻との結婚生活を描く
数十年ぶりに夏目漱石の小説を読み始めたが「門」は「こころ」に次ぐ2作目で、読んだ記憶がないので初めて読んだことになるようです。 村上春樹が「ねじまき鳥クロニクル」を書くときに「漱石の門」が頭の中にあったと書いてあるのを読み、読んでみたいと思ったことがきっかけになっています。 本を読むということは一冊の本からその本に繋がる本を読んでみたいという思いに駆られて次々と読む本が決まってくるので、自然に読みたい本が出て読み続けていくというのが私の読み方になっています。 漱石の小説を再度読み始めて感じたことは、私が思 ...
『こころ』夏目漱石著|恋の三角関係と孤独
『こころ』は夏目漱石の小説の中でもかなり有名な小説で、教科書にも出てくることからほとんどの人が何らかの形で知っていると思われます。 今年(2016年は)は漱石の没後100年にあたることから漱石についての記事が目立つようになっていますが、『こころ』は1914年朝日新聞に連載された小説で、死の2年前に書かれたものです。 私はかなり前に読み、ほとんど忘れかけていた内容で、読み進むにつれて思い出すという感じで読んだのですが、以前に読んだ読後感とはなんとなく違った感じで読み進むことができました。 かなり読まれている ...
『心配ぐせをなおせばすべてが思いどおりにになる』斉藤茂太著|前向きに生きる
斉藤茂太は有名な歌人斉藤茂吉の長男であり、1916年3月21日 - 2006年11月20日を生きた精神科医であり随筆家です。 この本の前書きに2003年10月23日と書いてあるので、亡くなる3年前に書いたようで死ぬまで現役を通したようです。 精神科の医師としてたくさんの患者と出会ったことにより感じただろう、よく生きるためのヒントがたくさん書いてありますが、精神病について書いてあるわけではなく、ふつうに生きている方が前向きに生きるためにはどのように考えた方が良いかというヒントがたくさんあり、現在の私たちの生 ...
『子の無い人生』酒井順子著|親が死んだときのために子供は存在する
『子の無い人生』は『負け犬の遠吠え』で、独身女性を論じた著者が「未産女性」について書いています。 私は作者の親の世代より少し下で、一人娘が作者より数歳下で結婚はしているが子供がいないという「未産女性」なので、娘の側に沿った読み方をしました。 作者が母親から「結婚はしなくても子供は産んでおいた方が良い」と言われたと書いていますが、私もそう思った時もあります。 結婚して数年過ぎても子供が生まれなかった時には、産んだ方が良いというようなことを言いましたが、嫌がられたので後はなにも言いませんでしたが、仕事が忙しい ...
骨粗鬆症治療薬テリボン注射を止めて、リカルボン錠50㎎を6カ月飲み続けた結果骨密度が上昇
テリボン注射は副作用が強く続けることができなかったので、1カ月に1度飲むというリカルボン錠50㎎を飲むことにより骨粗鬆症の治療を続けることにしました。 テリボン注射ほど骨密度を上げる効果はないということでしたが、飲み続けることができるような状態の副作用でしたので仕方がありません。 毎日適度な運動と骨密度を上げるのに必要な栄養を取ることを心がけることにより、将来寝たきりになる可能性のある骨折を防ぐために根気よく治療をしなければということを整形外科の先生と話し合いました。 私の場合は若いころに子宮と卵巣を片方 ...
『孤独を生ききる』瀬戸内寂聴著|老いの孤独の厳しさ
『孤独を生ききる』は1998年10月20日の初版となっているので、20年近くも前に書かれたもののようですが、人間が生まれて死ぬまでの孤独というのは、いつの時代であっても変わりはないようです。 1973年に得度し瀬戸内晴美から瀬戸内寂聴と名前を変えて執筆活動のかたわら、名誉住職を務める天台寺(岩手県二戸市)、四国(徳島県鳴門市)、京都・寂庵(嵯峨野)などで定期的に法話を行なっていたようで、法話のある日はたくさん人が集まっていたのをニュースなどで見たことがあります。 『孤独を生ききる』は、寂庵を尋ねてきた方の ...
『火の山ー山猿記』 津島祐子著|戦中戦後を生きた有森家の生と死と愛の物語
『火の山ー山猿記』は富士山のふもとの甲府で、東京帝大を卒業して、山の草や木、富士山の研究に心を奪われていた父有森源一郎の8番目の子供として生まれ、アメリカにわたって物理学の研究をしている勇太郎が、3番目の姉笛子の次女である由紀子に頼まて書くことになった、有森家のメモワールが物語の中心になっています。 由紀子と牧子あてのとても長いメモワールのコピーをその源一郎の日本語ができない娘牧子に送られたものを、牧子の夫が死んだ後に見つけ、日本語を勉強している牧子の息子勇平が読むという複雑な設定になっています。 NHK ...
『夜の光に追われて』 津島 佑子著|「夜の寝覚め」の作者への手紙
『夜の光に追われて』は家庭を持っている男の子供を産むことになった孤独感と孤立感、その後9歳になった男の子の突然の死を嘆き悲しんでいる私が千年の昔に書かれた「夜の寝覚め」の作者に手紙を書くことから物語が始まります。 津島 佑子は太宰治の次女であり、様々な賞を受けた有名作家ですが 2016年2月18日に肺がんのため68歳で亡くなりました。 私はこの年齢の方の小説はほとんど読んでいなかったのは、この時期、詩や短歌に深くかかわって、私自身も下手な短歌などを書いていたことが多かったことと、分からないながらも哲学や心 ...
『職業としての小説家』村上春樹著|一貫した村上春樹の小説家としての生き方
『職業としての小説家』は35年あまり小説を書き続けている村上春樹の自伝的エッセイで、2015年9月に発売されているので最新のエッセイと思っても良いのでしょうが、以前に書かれた内容も入っているので、私は初めて読んだような気がしませんでした。 1995年11月に行われた「村上春樹、河合隼雄に会いに行く」と2007年10月に、文藝春秋より刊行された「走ることについて語るときに僕の語ること」を読んでいるので、村上春樹の考え方や哲学はある程度私の中に根付いていました。 そのうえでこのエッセイを読むことになったので、 ...
『ねじまき鳥クロニクル』 村上春樹著|夫婦の深層とその周りの長大な物語
村上春樹がかなり人気のある作家であることは知っていましたが、なぜか最近まで読んだことがなかったことが不自然であることから読んでみようと思い立ち、今毎日のように読んでいます。 そして村上春樹の作品を読んでみようと思い、どのような作品があるのだろうと調べてみたら、「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」という対談集があり、河合隼雄のファンである私は迷いなくそれを購入して読むことにしました。 その対談の中で語られるのは、「ねじまき鳥クロニクル」であり、夫婦の問題だったのでこの小説は読まなければならないだろうと思ってい ...
『国境の南、太陽の西』 村上春樹著|太陽の西の島本さん
なぜか毎日のように村上春樹の本を読んでいますが、私は好きな作家に出会うと高校生のころからこのような読み方をしてきたのだと思い出しています。 同じ作家の本ばかりを読んでいると、一冊を読んだのとは違ったその人の考え方や生い立ちまで分かるために言わんとしていることも、内容もより理解できるように思うからです。 ハジメは1951年1月生まれで、村上春樹は1949年1月生まれ、この小説が出版されたのが、1992年ですからこの小説は、村上自身が生きてきた時代を書いていることになり、時代背景がリアリティをもっていることに ...
『神の子供たちはみな踊る』村上春樹著 地震の後で6編の短編
初出に地震の後でとあり、「新潮」1995年に連載した5つの短編と書き下ろし1編が収められています。 地震とは1995年1月に発生した阪神大震災のことであり、同年3月にオウム真理教が引き起こした地下鉄サリン事件にも触れられています。 それまで、平穏に生きてきた人たちがその巻き添えになった時に、多くの死者を出し、崩壊した建物を映像で見て、あの惨事に見舞われて私たちはいつ何が起きるかわからないという気持ちを抱きました。 これらの6編の短編には地震が直接かかわっているわけではないもののそれが何かしらの形で出てきま ...
『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』のレビューの渦の中で
『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』をアマゾンで購入するためにレビューを読み、アンチ村上と村上ファンが入り混じっていることを知り、酷評がかなりあったのですが、初めて村上春樹の小説を読む私にはあまり関係がないことなので、無視して読むことにしました。 村上春樹の小説を読むことになったきっかけは二つあり、故河合隼雄の書いた本を数十年前から読んでおり、河合隼雄のファンだったので、『村上春樹、河合隼雄に会いに行く』を読み、村上春樹の考え方に共感したことによります。 この対談集は20年も前に行われていましたが、 ...
『雨天炎天』ギリシャ・トルコ辺境紀行 村上春樹著
この本は平成2年に8月に新潮社より刊行されたというから25年以上も前の紀行文になります。 私が読んだ本は平成23年12月15日 31刷と書いてある新潮文庫なのでかなり多くの方に読まれた本のようです。 誰かがどこかでこの本が面白いと書いてあったので、今頃村上春樹の本を読み始めた私が手にして読んでみようと思ったわけです。 25年も前ですから私も若かったのですが、村上春樹も若い時期でありかなり冒険に満ちた体験記になっています。 ギリシャ編-神様のリアル・ワールド アトス半島はギリシャ正教の聖地であり、ギリシャの ...
『グレート・ギャツビー』村上春樹訳|心に残った名作
遅ればせながら村上春樹の書いたものを読んでいます。 前回読んだ「走ることについて語るときに僕の語ること」の中に翻訳中の「グレート・ギャツビー」の小説について、29歳でどうしてこのような深い内容の小説が書けるのだろうか。 天才というに以外に言いようがないというようなことが書いてあったこが、『グレート・ギャツビー』を読むことになった直接のきっかけでした。 『グレート・ギャツビー』はスコット・フィッツジェラルドが1924年に書いたものであり、舞台は1922年に設定されています。 古典の部類に入る長編小説としては ...
『うちの子になりなよ』ある漫画家の里親入門|不妊治療のどん底で見つけた希望の光
『うちの子になりなよ』ある漫画家の里親入門 古泉智浩著 この本は6年間の不妊治療で600万円を支払い、ずたずたになった心の中で「どしても子供を育てたい」という思いで里親という選択をして、授かった赤ちゃんの日々の成長の喜びと悩みをマンガ家である古泉智浩さんが漫画を交えて淡々と書いています。 子育てをしたことがある方ならだれもが通るような日々の出来事を描いていますが、子育てはとっても楽しい反面、とっても大変なものです。 ずっと昔、子育てをしたことがある私には、ここに書いてある情景はすべて蘇ってくるようなことば ...
『走ることについて語るときに僕の語ること』村上春樹著|走ることと書くこと
村上春樹が小説家になって間もなく世界中の路上で走り始め、その数年後からフル・マラソンに毎年のように参加するようになったことを日々思いを交えて書いています。 40代後半からレースのタイムが伸びなくなったのをきっかけに、トライアスロンもするようになり、冬はマラソン、夏にはトライアスロンに挑戦するという生き方の中から、それを力に変えて小説を着実に書き上げているといいます。 村上春樹にとって走ることと小説を書くことは並行して行うことであり、それが生き方を深めることになり、哲学になっているようです。 村上春樹の生き ...